第13話 神の子
あの声明から数日経った。この日本と言う国にはスサノオ、ヒノカグツチの名が轟きこの2名は何者なのかと議論が交わされている。一方のギルドはスサノオ…この僕がどこに居るのかと躍起になって探しているようだ。こちらとしてはどうでもいいことだ。ヒノカグツチの居場所は解ってる。ので、手下をけしかけてみたのだが…。
「ウィンディーネもこの様かぁ…。」
まさかこうも早く見抜かれるとは思わなかったが…まあ代わりに面白そうなものは手に入ったので良しとしよう。
昼下がり。ヒノカグツチのいる町から少しはなれた海岸。僕はその場所にいた。今の僕が挑んでも、結末は変わらないだろう。何せ、今の一撃でさえ詠唱なしの純粋な炎なのだから。
もっと…もっと強い奴で遊んであげないと底力は見せてくれない。
「流石は神産みで誕生しただけのことはあるね。君は知ってるかい?神産みって。」
恨めしそうに彼女は僕を見つめる。西山 桃華…彼の心を揺すぶるには…十分だろう。
「…私をどうする気…?」
「おやおや、質問に答えてくれよ…とは言うけど、無理もないか。君の質問に答えてあげよう。簡単な話。彼への見せしめだよ。君は上質な魔力を持っているわけだからね。」
怯えた表情。だと言うのに、瞳の奥には闘志がある。いい。すごくいい。まだ食えないのが惜しいくらいだ。
まあ、いいさ。どっちにしたって完全体に成った僕には敵わない。もっと…もっと魔力を食わなきゃならん。
『相も変わらず趣味悪いわね。まあ、嫌いじゃないけど。』
そう語りかけるのは東京湾のダンジョン…最奥に潜む彼女のものだった。
「非道な神様ですね。」
『それは違うわよ?神の進む道こそが正道なの。』
傲慢な神なことだ。特段彼女はわがままだ。この戦いだって彼女が地上に出るためのものに過ぎない。まあ、それに順応な俺も俺だがな。
『と、言うか君だって神の力を持ってるんだからおんなじでしょ?とっとと、あのヒノカグツチ?倒しちゃいなよ!!』
「無茶言わないでくださいよ。今のあれに単独で勝てる存在なんて地上には居ませんよ。」
そう、地上にはいない。だがダンジョンの最奥に居るような奴ら…特段神と呼ばれるような奴らなら別だ。奴に勝つ位、出来てもらわないと困る。
『君でも無理なの?私、いろんな奴を見てきたけど君以上の水魔法の使い手は居なかったわよ?』
「なら、あなたは太陽に素手で触れた人間がどうなるかきちんと理解した方がいいですね。」
基本、触れる前に塵も残らず消える。今の僕だってそうだ。例外じゃない。まあ、勝つ方法はある。同じ土俵に立てばいい。それだけだ。
『君にそこまで言わせるなら私が直接!』
「馬鹿なんですか?あなたが出れないからこう言うことをしてるんでしょう?」
この人は本当に…ああ、神か。
『師匠に馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!!馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!!』
「はいはい、解りましたよ。じゃ、馬鹿でいいんでもう少しおとなしく待っていてくださいね。」
ともかくは…彼のことを遊んであげないと。退屈だろうからね。
「そろそろ…あれが生まれる頃合いですね。君も待っているといいよ。彼が助けに来るのを。」
そう宙吊りにされた彼女に呼び掛けた。
――――――――――
いやぁ、久方振りの配信。ヒノカグツチ…もとい勇太くんの一件でバズって以降チャンネル登録者も馬鹿みたいに増えた。現在は700万を突破。依然増え続けている。
ここ最近はカプリコーンやらスサノオやらでバタバタしていたが、ようやく自分の時間を作ることが出来たので束の間の配信だ。
「いやぁ、もう中層辺りか。」
随分と進むペースが早くなったもんだ。
【流石は最強配信者】
【これがAクラス序列4位の実力】
【逆にこれの上にいる三人やばすぎね?】
【そもそもAクラスが規格外定期】
などとコメントが流れてる。
「まあ、俺より上は本当にバグってるぞ。カプリコーンを物理でぶったぎった奴がいる。」
【マジで!?】
【バケモンじゃん】
【草】
そうそう…これが新鮮な反応だよ。上の奴らはさも当たり前みたいになってるがそんなはずはねぇんだよな。
【もしかして炎の魔神にも勝てたり…?】
【ワンチャン炎の魔神いける説?】
なんてコメントもちらつく。
「炎の魔神ねぇ…あれに関して上のAクラスに話してもみたんだが…無理って言われた。」
【無理かぁ…】
【Aクラス4位があれだったもんな】
【まあしゃあない】
レベル6指定の魔獣…とはなっているが。あれ人間なんだよな。しかも17歳。多分あれ人類最強なんだよな…。
「まあ、俺もまだまだってことだよ。」
【そんなことはないと思うぞ?】
【おい日本4位】
【Aクラス序列4位とは】
【お前がまだまだなら俺らなんなんだよ】
【向上心の塊】
まあ、日本4位とはいえ…あれら見てたらこっちだってもっと強くなれるって思っちまうじゃねぇか。向上心に火をつけてくれたことには感謝してるさ。
「さて、もう少し潜るか―――――。」
そこまで話した時だった。
ふと覚えた違和感。その正体が地響きだと言うことに気づくのに数秒を要した。
【どうした?】
【ん?】
【なんか画面揺れてる?】
「―――――揺れている…。」
本能が言っている…やばいのが出てきた。中層に似つかわしくない禍々しい雰囲気。これはちょっと…配信どころじゃなくなってきたな…。
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