第12話 スサノオ
この前のカプリコーン騒動の起きたダンジョンから計5つ。そして佐々木の回収したのが1つ。合計6つの指輪。青く澄んだ魔石が嵌め込まれている。
「それで…佐々木、何を見た?」
「変な男でしたよ…多分人じゃなくて魔獣の類いですね。」
「そうか…お前から見てどのくらいだ?」
「レベル6相当。俺1人でもどうにか出来るかわかんないっすね。真島さんはどう見ますか?」
「そうだな…まあ、怪しいと見るのは東京湾のダンジョンだ。」
「あそこの調査って人類には不可能じゃないっすか?」
「そう。だから困っとるわけだ。」
水深400メートル地点。海底谷に存在するダンジョンな訳だ、そう簡単に調査は出来ない。ましてや、そこから現れたとおぼしき人形の魔獣。危険すぎる。
「まあ、今はこいつの調査が先じゃないっすか?」
佐々木…こいつは本当に優秀だ。逃げる最中、写真を撮ってくれていた。この男…何者なのだろうか?ともかく、上層部の連中には連絡しておかないとまずいな。
「あとは…勇太にも警戒するようにしてもらわないとっすね。」
「ああ、最悪の事態を招きかねんからな…。」
――――――――――
学校にて、机に突っ伏す。友達と言える友達もここにいない俺にとって休憩時間と言うのは退屈なものであった。
そんな中、携帯に届いた着信を確認する。発信元は真島さん。内容を粗方さらうと、不審者に注意との事であった。
レベル6…ないし最悪は7クラスか…いやだぁ。俺がそのレベルの奴と戦うとそのダンジョンが使い物にならなくなるときがある。俺はそれで2つ潰した。
しかしまあ、勝てる前提と言うのもおかしな話だ。相手はカプリコーンを産み出すような揺動を仕掛けてきている。それも随分と前から練られた計画のようであった。
まあ、俺はそこまで考えるのは得意でもないので指示は真島さんに任せる。
「だるいなぁ…。」
恐らくだが…本格的になにかが動き出している。カプリコーン…多分それってのは魔獣じゃないんだろうな。
なんて考えていたときだった。サイレンの音が鳴った。これは…どう言うことだ?
全員が動揺している。
ダンジョンから魔獣が逃げ出したとき、このサイレンは鳴るようになっている。ギルドからの連絡はなにもない。おかしな話だ。何かあったときは例えこう言うときであれ俺に連絡は来る。
『あー、聞こえてるかな?ヒノカグツチ…。』
「…。」
それは町内放送から聞こえてきた声であった。聞き覚えのない声。そして奴は確かに俺の存在を口にした。
『君がこの町にいるってとこまでは見当がついてるんだ。僕の願いは1つだよ。君と戦ってみたい。』
随分とイカれた野郎のようだ。
『だけど…まだ万全じゃなくてねもう少し待ってもらうことになるだろうけど、いいかな?大丈夫、その間も君がきちんと遊べるようにしてあげるから。なんて、君の声は僕には聞こえないんだけど…。』
純粋ないたずら…とは言いきれない。ギルド職員さえ上層部しか知らない俺の名前を口にした。その上、居場所まで当てられている。不可解な点はあるが…これは思ってたよりヤバめの不審者なこった。
『奇遇なことに、僕にも名前があってね。スサノオって言うんだ。君と巡り会う日を楽しみにしているよ?ヒノカグツチ…。』
プツリと、放送はそこで途切れた。これはなかなか…不味いことになったな。スサノオ…聞いたこともない名前だ。が…嵐を司る…或いは水を司ると聞いたことのある神の名だ。奇遇ってことは奴もまさか…いやいや…そんなことあるのか…?
その町にこだました放送はネットの波に乗り、瞬く間に広がった。数日後には日本のトレンド上位にヒノカグツチとスサノオが入るほどだった。
趣味が悪い。町の役場の職員は全員額をなにかによって撃ち抜かれて死んでいたと聞く。
ギルドがこの事態を確認したのは俺が連絡をいれてからだったと聞く。はっきり言ってこれは危機以外の何でもない。何より…奴は、スサノオはこの状況を楽しんでいると見てとれる。これは放っておけば…いや、放っておかなくともマズイ…レベル7相当の事態である。
なにより…先輩と連絡がつかない。
「いやぁ、やべぇな。」
なんて、気だるげに学校の屋上で呟いた。狙いは俺1人。そんで俺のことを遊んでやると言っていた。さてさて…いったい何をして来るのやら。
「日野くん、こんなところにいたの?」
そんな声が聞こえたので振り返ってみればそこにあったのは先輩の姿だった。
「今の今までどこ行ってたんです?」
「ごめんね…ちょっと色々あってパニックで…。」
「そうですか…それで、どうしてこんなところに?」
「いやあ、日野くんのこと探してて…ここ最近色々あったから…ちょっと不安で。」
「不安?」
「日野くんは不安じゃないの?」
「まあ、不安と言えば不安ですけど…俺ならどうにか出来るから。」
そう言うと、指先に炎をともす。
「…え?」
「んで聞きたいんだけど、先輩はどこにやったんだ?」
「な、なに言ってるの?」
「先輩はなぁ、圧倒的強者にさえワクワクするような人なんだよ。この期に及んで不安とか言うような奴じゃない。」
「そ、そんなこと言ったって…。」
「それに、お前からは魔獣の気配がする。端的に…お前ウィンディーネだろ?」
「…な、なぜわかる…?」
「お前は…俺を舐めすぎだ。」
本格的に動き出してきやがった…スサノオが…おそらくこいつもその手下。ウィンディーネ。水の精霊であり、その姿を変えることができる。
「そうか?これでも私は水の精霊だぞ?炎だけのお前ごときが―――――。」
炎をまとった手でそいつの顔をつかむ。さすが、この程度じゃ蒸発しないか。
「その格好でしゃべるな…。」
炎の温度を急激にあげる。白く輝くほどにまで…一瞬で…すると流石に堪えたらしく、断末魔を上げ蒸気となり、消えていった。
「…しまったな…目をつけられたらしい。」
どうにも、明らかに俺本人を既に特定しているようである。最悪の事態と言えるだろう。
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