第8話 緊急会議

 先日発生したカプリコーンの大量発生。類を見ない状況だ。かく言う俺も、駆り出され討伐任務に参加した。なお、この討伐任務は秘密裏に行われた。それもこれも俺があんな動画を世界中に発信してしまったせい…ギルドとしてもこれ以上不安を煽るようなことをしたくないのだろう。


 そして、今日はその事についての会議が行われることになっている。参加人数はなんと7人。そして現在俺は…


「よぉ、最強の配信者。」


 俺はそいつにだる絡みされていた。Aクラス序列3位、俺の1つ上…加茂 美咲。年齢は23歳なのに全然俺より強い若手筆頭のエースだ。この間も2体のカプリコーンを真っ向から屠ったと聞く。はっきり言って序列3位まではバケモンだ。


「なんです?」


「うわっ、なんかげっそりしてんなぁ…。」


 タメ口なのは…まあ仕方の無いことだ。1度真っ向からやりあって負けたときにそう言われた。


「そりゃ、こっちもカプリコーン倒したんでそうなりますよ…。」


「魔法使えたのか?」


「まあ、多少は。」


「へぇ...強いんだな。」


 少なくとも俺は配信者のなかでは最強…を自負している。と、言うか俺より上の3人がバグってるだけだ。


「まあ、多少なりは。」


「まあ、いい。今回の会議に参加に当たって聞いていると思うが…他言無用だからな。」


「加茂さんは知ってたんです?」


「私と言うより、今回の会議に参加する奴は全員知ってるさ。きちんと、お前も責任は取れよ。」


「…はい。」


 ヒノカグツチ…勇太とは一体何者なのだろうか?


 そう言うわけで、先日呼び出されたあの会議室へと向かう。そこには既に4人の姿…あれ?1人足りない?


「来たか。」


Aクラス序列2位、鮫島 煌太

Aクラス序列3位、加茂 美咲

ギルド本部ダンジョン総括、安藤 一樹かずき(34)

ギルド本部探索者総括、井上いのうえ まこと(29)

ギルド会長、真島 柳之助(55)


 メンツ強すぎるんだが?俺本当にここに居て良いのか?


佐々木ささきの奴が来ないのは解っておる…とりあえず、これで全員だ。」


 序列1位…佐々木 龍馬りゅうま(18)。俺もまだその姿を見たことはない。


「これより、今回のカプリコーン騒動についての緊急会議を行う。まず安藤くん。頼んだ。」


「はい、今回のカプリコーン騒動。実は発生直前、それぞれのダンジョンで不可解な魔力の波動を察知しました。」


「不可解な波動と言うと?」


「カプリコーンが現れる時、必ず一定の魔力の波が周辺に起るのですが今回観測されたのはこれに加え、今までのどのデータにも当てはまらない未知の魔力波が観測されたのです。」


 未知の魔力波だって?


「ふむ、安藤くん個人としてはどう思う?」


「そうですね、馬鹿げた妄想と思われるかもしれませんが、魔獣達がカプリコーンを兵器として運用している…と。確証はありませんがもっとも近い可能性を考えるのであればこれかと。」


 そ、そんなこと無いだろう?いや、あってほしくない。


「そうか…続けて井上くん。探索者からの目撃情報は?」


「そうですね…カプリコーン自体に関するものは寄せられておりませんが…該当ダンジョンで気になるものが。」


「気になるもの?」


「水辺にゴブリンが群がっているとの目撃が数件寄せられております。」


 なにそのあからさまな情報…関連性が無いと見る方が難しいだろ。


「絶対に何かあるわよね…。」


「だろうな。」


「…さて、知っての通りだが現在色々と訳あってヒノカグツチが今までのように使えない。そこで今後はAクラスの諸君らに指示を仰ぐこととなる。」


「ったく誰のせいかなぁ。」


「まぁ、そのくらいにしといてやりなよ。」


「…本当に申し訳ありませんでした…。」


「おそらく…俺の読みが正しければ今後数ヶ月、ダンジョン内での異常が爆発的に増えるだろう。今回のカプリコーン騒動…事の始まりに過ぎないと思ってくれ。」


 カプリコーン騒動が事の始まりに過ぎない…それって…。


「それって…確実に糸を引いている何者かがいると考えていると言う解釈でよろしいでしょうか…?」


「…確証は無い。が、やつらが動くなら今だろう。」


 真島さん…この人は一体何を見据えているのだろうか?


「最悪の場合は…本人の意向を押しきってでもヒノカグツチに出てもらう。それこそ…今回の騒動がレベル6や7に繋がろうものならそれはもう彼しか居ない…。」


 レベル6が文明の再建が不可能なレベル。7ともなれば、それは地球最期の時を表す。


「いくらなんでも…それを1人の少年に託すのは酷なのでは…?」


 ふと、呟いてしまった。


「そうか、川田くんは知らないのだね。彼は今までに4度、レベル6以上と対峙したことがある。」


 その返しに言葉を失った。それはもう…人のできる所業ではない。つまり彼は…何度か世界を救ったと…そう言うことか?

 はは…馬鹿げてる。


「地球上で彼を止めることのできる存在など、現状存在しないのだよ。」


「な、なるほどです。」


「さてと…俺は俺で海外の民間ギルドを説得せねばな。彼の意向は私が必ず守り抜かなければいけない…。」


「あ、あの…無知が続いて申し訳ないのですが彼の意向とは?」


「決して、世間にその名を、存在をバラさないようにすることだ。」


 とりあえず…無言で土下座をしておく。


「まあまあ、大丈夫だ。今回の件、人間としてみられてないからセーフ。本当にもう金輪際こんなことを起こさなければ、塵一つ残さず消し飛ばされるなんて事はないよ。たぶん。」


「たぶんなんですか!?」


「まあ、あの子は優しい子だからね。」

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