第14話 真犯人とは……?
「ま、魔王だと!?」
「まさか、こんなところで会えるとは思ってなかったよ。仲間から怪しいヤツらが来てるって聞いてはいたけど、勇者がいたとはね。」
まさかの魔王! この一連の事件に魔王が関わっていたとは。とはいえ、こんな些細な事件に関係あるのかというと疑問に思えてもくる。さっきの冠り物集団の正体やそいつらと敵対しているのはどういう事なのか。わからないことだらけだ。
「なんでオレみたいなのがこんなところに、なんて思ってるんじゃない? もし、もう一人、魔王が関わっていると知ったら、アンタは何を思うだろうな?」
「何!?」
黒犬改め犬の魔王はとんでもない事を言い出した。ただでさえ、些細な事件に魔王が現れるという異常事態なのに、もう一人関わっているなんて! 一体、なんのためにこんなところへ現れたのか?
「そこで肉片になってる連中の正体ってなんだと思う?」
「何って、コイツらが真犯人ってことなのか?」
「違う、違う。むしろ、コイツらが事件の被害者、その者。正確にはそのなれの果てってワケ。オレの言ってること、わかる?」
事件の被害者? これが? 牛と羊、その部分ぐらいしか共通する要素はない。でも待てよ? 連中の着ている物、鎧やローブを着た姿……。コイツらはただの町の人とかじゃなく、冒険者みたいな格好をしている。頭部以外は!
「気付いた? コイツらは事件の捜査を依頼された連中のなれの果て。そして頭部は攫われた動物の頭部。……悪趣味だろ? でも、コレがプロの魔王のやることなんだよ。」
吐き気がした。行方不明になり、捜索対象になっていた人や動物がすでに手遅れの状態になっていた……。しかも、おぞましい形での最後を向かえていたのだ。これが魔王のやることなのか? 一体、何のために? こんな事をして何になるというのだろう?
「多分、アイツは何も考えてない。面白がってるだけさ。人間がこれを見ておかしくなる様を見て楽しんでいるんだ。いずれ処刑隊の浄化対象になるまで、人々の精神を侵していくんだ。人が人を殺す様を見るとこまでがアイツの遊びの一部始終なんだ。」
虎や牛の魔王とはタイプの違う恐ろしさだった。アイツらはただ、残虐で乱暴なだけだった。エルの実家で出くわした蛇の魔王……アレと系統は似ているのかも? 厳密に言えば違うんだろうけど、より質の悪いタイプなのは間違いないだろう。
「アンタはどうなんだ? なんで魔王が他の魔王の邪魔をしているんだ?」
「さあ、なんでだろうね? オレら魔王はとやかく一括りにされがちだけど、色んな奴がいるのさ。それぞれの思惑で好き勝手に動いている。それがオレ達魔王の実体さ。」
「なんなんだ、一体……?」
魔王達の思惑はわからない。しかし、この場で戦わないといけない状況に陥っている。事件とは直接関係のない理由で。だったら、もう戦う理由はないんじゃないか?
「俺としては、真実を知った以上は戦う理由はないんだが?」
「事件のこと? まあ、これは終わりと思っても問題ないだろうね。でも、違うんだよ。」
「何が?」
「事件を解決する切っ掛けをアンタに与えてやったんだ。問題はそのお代。要はオレの遊びに付き合ってくれって事!」
奴は再び襲いかかってきた。相手に有無を言わさず、強制的に戦わされることになった! しかし、どうする? あの黒塊を凌ぐのは至難の業だ。倍以上の体格があった、あのタルカスよりも強い。
「相殺しきれなくても、威力を弱める事は出来るはず!」
「真正面から受け止めるつもりか! 面白い! こういうのが良いんだよ!」
(バァァァァァン!!!!)
黒塊と剣が正面衝突する! 案の定、相手の攻撃の威力は相殺しきれず、剣が弾き飛ばされた。しかし、半分相殺が成功しているので、体勢を崩される程度に抑えることが出来た。そして、俺はこの状況を逆に利用してやることにしたのだ!
(弾かれた勢いを利用して、次の攻撃につなげるんだ!)
片足を軸にして弾かれた勢いの遠心力を利用して体を反転させつつ、相手の死角から攻撃を加える!
「コレならどうだぁ!」
(ガギャァァァァン!!!!)
受け止められた! これで防御が間に合うなんて、信じられない反応速度だ! でも、問題は無い。
(バァン!!!)
ワンテンポ遅れて、今度は犬の魔王が吹き飛ばされる結果となった。最初に受けた威力の半分を時間差で跳ね返してやったのだ!
「やるじゃん! 楽しくなってきた! その調子で来い!」
犬の魔王は吹き飛ばされてもアッサリと復帰してきた。さっきの攻撃を気に入られてしまったようだ。無我夢中で繰り出したアドリブ的な技だったんだけどなぁ。極端派の新技として取り入れるとしよう。
「……!? こんな時に邪魔が入ったみたいだ。あのクソ羊め、ちょっかいを出してきやがった!」
戦う俺達以外に牧場に新たな人影が現れた。その数は四人。それぞれ、違う傾向の装備で武装した謎の戦士達。しかし、どこかで見たことのある顔つきだった……。しかも四人ともだった。
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