第13話 ああああ!!!!


「ワキャアアアッ!? う、牛君がミンチに変形したでヤンスぅ! とらんす・ふぉーまぶるぅ!?」



 突然の出来事にただでさえ混乱していたタニシが更に恐慌をきたしている! 状況が正しく見えておらず、牛頭が別形態に移行したと勘違いしてしまった。トランスフォームからトランス状態に移行! 最早、ワケわかめな状態になってきた!



「ちょっとみっともなさ過ぎるよ、偽物さん。オレの完コピするんなら、もっとクールでいてくんなきゃ、オレに風評被害が出てしまうよ。」


「わひーっ!? ゴメンナサイ! もうしません! 死んでお詫びを致しますぅ! あああああああああ!!!!!!」


(ブリュ、ブリュブリュリュリュリュッ!!!!!!)



 タニシの必死の謝罪と共に尻が決壊した! ついに限界を向かえてしまったようだ。異常事態が多発して精神が限界を迎え、強制放出おもらしとなってしまったのだ。



「大丈夫? アンタ、なんか漏れ出てるよ?」


「むしろ、この状態で無事なところなんてどこにもないでヤンしゅ! もう死んでもいい。我が生涯に一片の悔いありまくり。キュウ……。」


「タニシーーーっ!?」



 タニシの意識はお亡くなりになった。とうとう、ストレスが限界を向かえてしまったのだろう。肉体改造、ゴッツンによる精神強化が体に負担をかけてしまったのだ。……今は安らかに眠ってくれ。



「めぇぇぇっ!?」


「さあ、かかってきな。その偽物はオレの仲間じゃないから、人質の意味ないよ?」


「ぐるるっ!?」



 冠り物集団は戸惑いを見せていたが、ターゲットをタニシから黒犬に切り替え、襲いかかっていく。タニシはそのままゴミの様に放置される結果となった……。



(バン!! ボン!! メシャッ!!)



 冠り物集団は順番に襲いかかっていくが、一撃で黒犬の前から姿を消すか、その場でミンチと化した。黒い塊のような武器に一瞬のうちに蹴散らされる結果となった。



「やっぱ、戦闘力自体は大したことないな……。あのイカレ羊もつまんないことするなぁ。」



 黒犬は黒塊にこびりついた血や肉片を振り回したり、地面の草になすりつけたりして、落とそうとしていた。それにしても巨大だ。黒犬本人の背丈以上もある真っ黒な鈍器グレート・クラブを片手で易々と振り回している。



「まあ、いいや、そんなこと。それよりも楽しそうなゲストがやってきたんだし……。」



 しかも、持っていると言うより、掴んでいるといった表現が正しいかもしれない。太さもかなりあるので、持ち手部分の半分くらいまでしか指が届いていないのだ。握力も相当あるように見える。



「お前は何者だ?」


「誰だと思う?」


「わからないから、聞いているんだが?」


「じゃあ、ちょっと遊んでみたら、わかるんじゃない?」


(……ゴッ!!)



 突如目の前には黒い塊が出現した! まだ血糊が付いているのがハッキリわかる距離だ! 後ろへ飛び退き回避する。今度は右から横になぎ払ってきた。これは真上に飛んで回避した。



「……峨龍滅睛!!」



 飛んだついでに反撃を浴びせた。そのまま脳天をかち割ってやる! しかし、黒犬は突拍子もない方法で迎撃してきた! 黒塊を真上に振り上げてきたのだ!



(ガゴッ!!)


「どぅわっ!?」



 振り下ろした剣ごと吹き飛ばされる結果となった。宙に浮いていたため、盛大に吹き飛ばされる結果となった。しかし、運良く積んである牧草の上に落下し衝撃は弱まり、最小限のダメージで助かった。



「くそっ!? 峨龍滅睛ごと吹き飛ばすなんて、どんな馬鹿力してるんだ!」



 信じられない力で吹き飛ばされた。しかも峨龍滅睛は剣覇の技の中で最も重い一撃のはずだ。全体重を乗せて落下と共に剣を振り下ろす。回避と共に奇襲し、手痛い一撃を与える技だというのに、逆に弾かれてしまった。



「凄く吹っ飛んだ。以外と軽いんだね。もっと鍛えた方がいいんじゃない?」


「元々、俺は小さい方だから、大して筋肉付かないんだよ。それよりもその桁外れの力……一体、何者なんだ?」


「まだわかんないの? 他に異常な力の奴とは何回か戦ってるって聞いたけど、ガセ情報?」


「なんで俺のことを知ってるんだ?」



 何故か俺の事を知っているらしい。俺はコイツの事は知らないのに。異常な奴と何回も戦っているとは、何のことを言っているのか? 



「でも、オレの攻撃食らって生きてたから、合格ね。少なくとも、オレと遊べる資格を持ってるのは良くわかった。」


「遊ぶ資格? 冗談言わないでくれよ。下手したら、俺、死んでたぞ!」


「え? でも、死にそうなくらいのスリルがなきゃ、楽しくなくない? アンタ、勇者なんだろ? もう少し楽しんで戦ってくれよ?」



 勇者であることも知っている? しかも、俺が本領を発揮していないのにも気付いている?ただのコボルトではない。黒犬から漂うオーラは何かどこかで感じた物と似ている……。



「この気配は……魔王……!?」


「正解。やっと気付いたね。オレは犬の魔王だよ!」



 それっぽくない雰囲気を漂わせていたから気付くのが遅れた。アイツら特有のどす黒さが感じられなかったからだ。なにか、こう、無邪気さを感じさせるから、そうじゃないと思ったんだ。そういえば、猿の魔王も似た雰囲気を感じたよな……。

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