【第三章:この宇宙で、最も重要な結論②】

 次の日の朝。



「もしもし、おはよう」



 彼女のモーニングコールがかかってきた。



 生憎、昨日はよく眠れなかった。電話がかかってくる頃には既に目が覚めてしまっていた。



「おや、その様子だと昨日は眠れなかったか」



「そう聞こえる?」



「うん」



 手早く、外出の準備を進める。僕は居ても立っても居られなかった。



 早く動かなければ。もっともっと早く。でも、どこへ動くんだ? 何のために動く?



 目的地はただ一つだった。僕は向かわなければいけない。



 でも、それより先にするべきことがあるように思えた。



 今、それをするべきときなのかもしれない。



 でも、きっと言い出せない。



「何か言い出せないんだ」



「うん。から は、もう知ってるの?」



「いいや。私は、何も知らない」



 これを言ってしまえば、僕と彼女は世界から堕とされてしまう。



 どうして。僕があの日、あの星に名前をつけたからか?



 できるだけさりげなく、告げた。



「これから家に向かうよ」



「どうして?」



「どうしてって、本を読みにいくんだよ。から も急いでるんでしょ?」



「そうではあるけど……君から来ると言い出すなんて意外だ」



「とにかくだ」



 僕はテレビのリモコンを手に取った。



 だけど、電源を消すのには時間がかかった。その間、から との電話は繋いだまま。ただ、一言も話さず、画面を注視する。



「どうした? 急に黙って」



「から」



 僕はテレビを消した。電話は繋いだまま家を出る。



「どうした?」



 彼女はきっと今も笑っている。



 この声を、僕はきっと聞いていたいんだと思う。だけど、切る。



「から」



 もう一度呼びかける。



「警察が来る」

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