【第一章:ノブレス・オブリージュ⑬】

 科学への執着は、きっと恋に似ている。そこに、より大きな安寧を求めているからだ。



 科学は私たちを安心させてくれる。世界が正しいことが示されることは、私たちが正しいことが示されることでもある。こういう相関を勝手に思ってしまうのは、私たちははっきりと、世界の一部だと認識できているからだ。



 だけど、世界の正しさと私たちの正しさは異なるかもしれない。既に人間は、世界の枠組みから外れてしまった。私たち人間の正しさを定義できるのは、世界ではなく人間なのだ。



 自分の正しさは自分で証明する他ない。そのことのなんと不完全で、孤独なことか。



 私たちは他に何に寄りかかるでもなく、自分を立たせる必要がある。どこまでも孤独な、人という種族。私たちは永遠に、誰かに寄り添うことなんて出来ないのだ。



 そういう意味でも、科学は恋に似ている。



 そして私の恋は、■■に似ている。


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