Autumn share with you.
マイペース七瀬
第1話
2024年8月の夏は、大変だった。
本当は、もう、新型肺炎コロナウイルス感染症が、収束しているはずなのに、まだ、「流行している」なんて報道ではあった。
そして、街行く人々を見たら、そんなにマスク着用をしている人は、いなかった。
40代後半になっているキヨシは、遅い夏休みを取った。
今日は、彼女と一緒に、関西に来ている。
声優の内田真礼に似ているミユキと、東京から関西に来ている。
2024年9月3日は、晴れている。
快晴。
ツクツクボウシも鳴いていた。
キヨシは、東京の自宅を出るとき、こう詠んだ。
ー夏終わりツクツクボウシ鳴いているこの暑さ続く今の世でも
(意味)夏が終わりツクツクボウシ鳴いていたこの酷い暑さが続く現代でも
台風は、まだ、迷走しているようだが、新幹線で、東京駅から新大阪まで来た。
いつしか、キヨシは、ミユキと、関西に旅行に来ていたが、今度は「奈良へ行こう」となっていた。
キヨシは、歌人である。
いや、プライベートの活動は、短歌を詠むことだが、それでも、短歌を詠むだけでは、生活はできないので、会社員をしながら、短歌を詠んでいる。
さっき、新大阪駅から、大阪メトロ御堂筋線で、天王寺駅まで来た。
本当は、東京よりは、規模は小さい都会だが、それでも、関西弁特有のオラオラオラァには、叶わないなぁとキヨシは、いつも思っている。
今日は、晴れている。
キヨシは、一度、奈良の法隆寺へ行きたいと思っていた。
奈良の東大寺ならば、高校時代の修学旅行で行った。
しかし、キヨシは、高校時代、自分の用意されていた弁当を、奈良公園の鹿に食べられ、楽しい思い出がなかった。
そして、今、大阪メトロ御堂筋線(つまりは、地下鉄)の天王寺駅から、JR大和路線のホームへ向かった。
「キヨシ」
「何?」
「今、スマホで、ググってみたら、大和路快速で、ここの天王寺から法隆寺って、すぐらしいよ」
「へえ、そうなんだ」
「私、法隆寺と東大寺の区別なんてつかない」
そうだ。
ミユキは、東京の方は、詳しいけど、関西地方なんて、そんなに知らないのだから。
キヨシは、松尾芭蕉が、俳句で詠んだ「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の意味が知りたいとか、聖徳太子がいた、は、分かるが、正直、ミユキは、そんな歴史に不案内なのが、正直なところだった。
緑色のラインが入った大和路快速が、プラットフォームに入ってきた。
そして、二人は、乗車した。
そもそも、キヨシだって、東京の人間だが、正直、大阪とか奈良のようなローカルなんてあまり、詳しくない。知識はあっても、経験がないと思った。
大和路快速奈良方面加茂行きに乗った。
少し前の座席には、ビジターが、英語でしゃべっている。
大和路快速に乗れば、天王寺駅から、奈良の法隆寺駅まですぐだとスマホのGoogleには、出ている。
間違いがないと思った。
大和路快速は、天王寺駅を、出発して、郊外へ走っている。
大阪市内の都会から、住宅街が見え、緑豊かな自然の多い山とかきれいな川を窓から、キヨシは、ぼんやり眺めていた。ミユキは、興味なさそうに、スマホの画面で、ファッション雑誌を観ている。
王寺駅を過ぎ、大和小泉とか過ぎて行くと、奈良県に、大和路快速は、通っているのだが、後。数分で、もうすぐ、法隆寺駅に着くと思った。
その時、キヨシは、味気のない大和路快速だと思った。
内心、悪態をつつきそうになった。
昔の松尾芭蕉とか、聖徳太子は、どんな気持ちで、法隆寺にいたのかと思った。
その時だった。
電車は、急に、ストップした。
ー只今、法隆寺駅で、急病人が出たため、電車を数分、待機します
ーお急ぎのところ申し訳ございません
ーしばらくお待ちください。
とあった。
もうすぐで、法隆寺駅ではないのか、と思った。
その時だった。
窓から、ぼっと、風景を観ていたら、溝に亀が数匹歩いていた。
…ああ、この電車は、亀より遅いのか
と思った。
いや、キヨシは、そう感じた時、はっとした。
いや、違う。
その時、キヨシは、短歌を詠んでみた。
ー亀を見て我が身思うこの旅をゆっくり行こう法隆寺
(意味)亀を見て僕は、反省した。今回の旅は、ゆっくり行こう法隆寺まで
数分、臨時停車してから、その短歌を詠んでから、電車は、発車したらしい。
横に座っていたミユキは、いびきをかいて寝ていたらしい。(完)
Autumn share with you. マイペース七瀬 @simichi0505
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