第3話 金髪碧眼の少女
目が覚めるとシェアハウスは、静けさに包まれていた。俺、和泉悠紀は慣れないベッドのせいか目覚ましよりも早く起きてしまった。
「まだ五時か……」
水を飲みにリビングに向かおうとすると、金子先輩のドアが少し開いていた。しかし、紳士として女性の部屋を覗くなど言語道断。俺は気になる気持ちを抑え、静かに階段を下りた。
リビングに着くと、母さんが朝食の支度をしていた。俺の存在に気づいた母さんが、笑顔で話しかけてきた。
「あら悠くん、早起きね。あまり寝れなかったの?」
「まあちょっとね」
そう言って俺はコップに水を入れながら、母さんに尋ねた。
「なんでこんなに早くから準備してるの?」
母さんは卵焼きを慣れた手つきで巻きながら答えた。
「今日はね、新しい人が二人もくるの。同い年の子たちで、とっても可愛いの!」
母さんがさらっと言ったその言葉に、俺は思わず目を見開いた。
「えっ、二人も?」
思わず声が漏れる。胸がざわつき、自然と緊張が走る。
「可愛いって、それって女子ってことでしょ。余計に緊張するし肩身が狭いんだけど……」
俺の言葉に、母さんは楽しそうに笑った。
「まあまあ、そんなこと言わないの、女の子が多ければきっとすぐに成長できるわ!」
母さんはそう言いながら、手際よく料理を続けていた。
俺は、その言葉に戸惑いながらも、今から何を話そうかと頭を働かせた。とりあえず、もう少し休んでおこうと自分の部屋に戻ることにした
***
朝食を終えた俺は自室に戻り、散らかった荷物を整理することにした。昨日の引っ越しで、まだ片付いていない段ボールが部屋の隅に積み上がっている。
「早く片付けないとな……」
そう思いながら作業に没頭していると、玄関からチャイムの音が響いた。時計を見ると、午前九時を少し過ぎたところだ。
まさか……と思い、胸の鼓動が少し早くなるのを感じながら、階段を降りると、母さんと金子先輩が誰かと楽しそうに話している声が聞こえた。
「あ、来たわね。この子が新しい住人の一人、ミア・ベッカーさんよ」
母さんの声に促されて視線を向けると、そこには腰まで伸びた金色に輝く髪と碧い瞳が印象的な少女が立っていた。明るいが顔がとても眩しく、思わず見とれてしまう。
「ハロー!今日からお世話になります、ミア・ベッカーです。よろしくお願いします!」
流暢な日本語で元気よく挨拶するミアに、俺は少し戸惑いながらも慌てて頭を下げた。
「は、はじめまして!和泉悠紀です。こちらこそ、よろしくお願いします!」
ミアは満面の笑みで頷くと、手に持った大きなスーツケースを軽々と引きながら家の中へと足を踏み入れた。
「ミアさんのお部屋は二階よ。案内するからついてきてね」
「私が案内しますよ、春子さん朝から働いてばかりですから」
金子先輩の提案に、母さんは少し考える素振りを見せたが、軽く頷くと、
「じゃあ侑香ちゃんにお願いするわね。ミアさん、後でゆっくりお話ししましょ」
母さんはそう言って寝室に戻ると、金子先輩とミアさんは、階段を上がっていってしまった。
「どうしたもんかな……」
一人取り残された俺は、片付けには飽きてきていたため、朝食の際に買い出しを頼まれていたことを思い出し、出かけることにした。
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