第6話 変人
「もともと、翼の変わり者の伯父の店なんだ」
「変わり者って?」
麗華が食いつく。
何せ、自分が一族の変わり者と言われてるのだ。
「翼の家は、弁護士の家系なんだ。もちろん、翼の父親も弁護士だ。だけど長男であるはずの、親父殿だけが独身でこんなところに引き込もって、趣味のなボトルシップ作りに没頭していた。ついでに弟が弁護した事件の親無しの子供を引き取ってな」
「それ、航さん? のこと?」
麗華の質問に、航はまた麗華の頭をクシャクシャにする。
麗華は、怒って手をどけようとするが航の方が素早かった。
「だったら良いもん!! あたし、あんたのこと航って呼ぶ!!」
「なに言ってるんだ? ガキ! 小学生だろうが!」
航は、かなり真面目に言ったつもりだったが、足を思いきり踏まれてしまった。
「だっ!!」
「誰が小学生よ。13だもん!! 中学生だもん!!」
「それでも、三月までランドセルを背負っていたんだろが!!」
「べーー!!」
麗華は、航に向かって舌を出した。
「あんた、なんとか言えよ。妹だろ?」
航は、絵里香に抗議した。でも、絵里香は、クスクスと笑っているだけだった。
「この子も一族の変わり者だから……航さんと気が合うのではないかしら?」
絵里香の、クスクス笑いに嫌みは感じられなかった。
「さぁ、ジュースを飲んだら帰れよ!! こちとら朝の七時から営業してるんだ。六時には閉めるぜ」
「うそぉ~~ そんなに早くからコーヒーを飲みに来る人がいるの~」
「翼は、もともと隣県の愛知の出身なんだ。そこはモーニングの有名どころなんだよ」
「モーニング?」
翼が、カウンターの中から答えた。
「モーニングコーヒーに、トーストとゆで卵と簡単なサラダを付けたものをコーヒーの価格で出しているんだよ。これでも常連さんはいるからね」
「絵里香ねえ、明日は朝に来よう!!」
「そうね」
楽しみの増えた、麗華はその日は満足して、ジュースを飲みほすと、大きなゲップをして、
「また、明日くる~~!!」
と言って、店を後にした。
絵里香は、お金を払って静かに二人に会釈していった。
「対照的な姉妹だな!!」
呆れるように航が言うと、
「嬉しかっただろ? 航」
「何が!!」
「あんなに、この店のことを気に入ってくれた子がいるなんてな」
「変わり者だろ」
と言いつつ、航も嫌な気はしていなかった。
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