この結婚、喜ぶべきか、阻止するべきか

 一瞬見えた俺の中の悪魔が囁いた。


【本当にこのままでいいのか?】

【このまま、武人が他の女と結婚してもいいのか】




それから俺は少しづつ準備をしていた。


サージカルペアリングの裏に毒を盛るか、通常の何倍もの金属を

盛るかで迷っていた。彼女が金属アレルギーだということは

俺にとっても好都合だった。

俺の頭の中に最初に浮かんだのは彼女がこの指輪をつけた瞬間に

アナフィラキシショックを起こした事故死。

やはり、ステンレスの中に金属を盛り込むか。

毒薬を手に入れるのは結構リスクがかかる。だけど、彼女がどこまで

金属に対してアレルギーを持っているのかわからなかった。

俺のシナリオはこうだ。彼女がこの指輪をはめたその瞬間、彼女が死ぬことだ。

彼女さえいなければ、武人はもう二度と結婚したいなんて言わないだろう…。


そうすれば、武人と俺は今までと何も変わらないで親友として、たまに一緒に

ご飯を食べたり、旅行だって行ける。今まで通りの生活ができる。

セックスはできなくても俺が武人を満たせてあげれる。


人間は愛ゆえに嫉妬深い生き物だ。


俺の頭の中にある葛藤が俺を震え立たせていた。


だけど、この指輪を彼女がはめた瞬間、彼女が死ねば真っ先に疑われるのは

この指輪を作った俺か、それを依頼した武人のどちらかだろう……。


武人が俺のものになるどころか、警察に捕まれば破滅しかない。


世間に顔がさらけ出され、仕事は失われ、せっかく前の店長が俺を推薦してくれて

やっと店長にまで昇格したというのに水の泡だ。

それどころか、どんどん俺から武人が離れていってしまう。


それだけは何としてでも避けたいところだ。


考えれば考える程、俺は悪い方向へと考えてしまう。


何度も頭の中でシュミレーション繰り返すが、俺には最悪な結果しか

待ってはいなかった。


―――そんな時、天使の声が聞こえた気がした。


【そうよ。こんなことをしても貴方が大好きな彼は喜ばないわよ】


俺はギリギリの所で思いとどまった―――――ーーー。

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