俺と武人の距離感

『仕上がりまで、どれくらいかかる?』

『そうだな、早くて1カ月くらいかな。でも、今、結構忙しいから

3ヵ月くらいはかかるかも…』

『オッケイ』

『出来上がったら、また連絡するよ』

『ああ。よろしく頼むわ』


武人と汐里は寄り添うように店内を出て行った。

俺は少しの間、二人の背中を見ていた。

『二人、お似合いでしたね』

志乃舞が雅也の隣で囁いた。

『ああ』

『店長も寂しくなりますね』

『な、なんで俺が? 別に…。武人もこれで幸せになれるんだから、

よかったんじゃねー』

思わず、志乃舞に心を読まれているのかと思い、俺は真逆の言葉を

口にした。

『ほら、結婚したら今みたいに簡単に飲みに誘われなくなりますよ、

どうします? 店長』

『別に、どうもしねーよ。それは、それで俺ものんびりできるし』


そうだよな。今までのようにはいかなくなるんだよな。


そうやって、俺と武人の距離がどんどん離れていくんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る