二人のペアリング

『さあ、こちらへどうぞ』

俺はカタログを手にすると、二人をオシャレな丸テーブルに案内した。

二人は丸椅子に腰をかけると、互いの顔を見合わせ微笑みを交わしていた。

『こちらの商品になります』

俺は二人の顔色を伺いながら、カタログ開けて進めていった。

『デザインはどうしますか?』

『武人さんに任せます』

『じゃ、これで』

さすが武人だ。センスがある。俺もこのデザイン、一番気に入っている。

『このデザイン、一番人気なんだよ』

『へぇ、そうなんだ』

『結構、お値段張るけど大丈夫?』

武人がカタログに視線を向けると、一番安いのでもペアで60万円はする。

『武人さん、ウエディングリングだけでいいよ』

『え、でもさ。院長の目もあるし』

『だから、父のこととは関係ないから。それに、私、普段アクセサリーとか

しないしさ。指輪なんて一つあれば十分だから』

汐里さんって…なんか、いい子だ。

『じゃ、これで』

『了解、お買い上げありがとうございました。じゃ、俺からの結婚祝いとして、

ペアで半額の30万円でいいよ』

俺は何を言ってんだろ…。恋敵なのに……。

これじゃまるで祝福しているみたいじゃねーか。

だけど、武人には幸せになってもらいたい。

『サンキュ、雅也。やっぱ持つべきものは友達だよな』

そう言って、武人は優しい笑みを浮べて笑っていた。

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