汐里は金属アレルギーだった

俺は平静なフリをしながら店内へと入って行った。


『よっ、武人』

『おお』

『今日はどうしたんだよ。2人そろって』

『お前にエンゲージリングとウエディングリングを頼もうと思ってさ』

『へぇ、じゃ結婚するのか』

『ああ…』

心がズキズキ痛い。だけど、俺じゃ武人を幸せにすることはできない。

『指輪って色々あるのな』

『まあね。それで、どんなデザインがいいの?』

『実はな雅也』

『うん』

『汐里は金属アレルギーなんだよ』

『え』

『実はそうなの。18金以外の金属も全然ダメで』

それでか、ネックレスもピアスもイヤリングもしていなかったのは…。

それでいて、落ち着いた感じがしたのはアクセサリーがなかったからなんだ。

『なんか、そういうのに対応した物とかないかなあって思ってさ』

『じゃ、サージカルステンレスペアリングとか どうかな?』

『え』

『結構、よく出てんだぜ。金属に負けるっていうカップルにはお勧めにの

商品なんだ』

『カタログとかある?』

『ああ。ちょっと、待って』

『ああ』

俺はカウンター奥の棚からサンプリングデザインが入ったカタログを

取り出してきた。

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