静寂な夜にーーー

 立ち飲み屋を出た武人と汐里はそのまま武人のマンションへと

入って行った。遊びの女ならいつもラブホテルで済ませる武人

だったが、女を部屋に入れるのは初めてだった。

いや…、雅也以外の人を部屋に入れたのは初めての事だった。


浴室からシャワーの音がする。


汐里の白い肌から身体を伝い水が線を書くように細い脚にまで

流れていく。汐里の身体は武人好みの身体ではなかった。細身で

胸もそれ程あるわけでもない。


それでも決死の覚悟で決めた汐里の身体は武人を満たせるのだろうか……。


汐里の手がシャワーの取って口に伸びた―――。


シャワーを浴び終わった汐里は武人が待つ寝室へと入って行った。


ベットでスマホを見ていた武人の手が止まり、真剣な眼差しで

汐里を見つめる。


武人がベット台にさりげなくスマホを置くと、汐里は静かに

ベットへと入っていった。


汐里の髪に漂うシャンプーの香りに酔いしれ、これから結ばれようとした夜に

そっと2人は身を寄せていく。まるでそこだけ時間が止まっているみたいに

2人は見つめ合っていた。


静寂な夜が2人を包み込むように、武人は汐里の手を取った。


汐里の上に武人が真剣な顔で跨る。


『本当に俺でいいのか?』

『いいよ。なんで、私に聞くの? 私は大丈夫だから』


汐里を優しい目で見つめる武人の顔は次第にその距離を詰めていく。


そして、武人は優しく汐里の唇にキスをする――――ーーー。

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