2人の距離感……

『ねぇ、武人さんは汐里のどこを好きになったんですか?』

『え』

奈穂子はテーブルに肘をついて胸の谷間を強調しながら上目遣いで

武人を見ながら言った。普通の男ならイチコロに落ちる女のテクニックの

一つで奈穂子は武人を落としかけてきた。ここで奈穂子の色目に引っかかる

ようなら武人も世の中の男と同じだ。

でも、武人の反応は……なんだろ……少し……違う。

気のせいだろうか…。

奈穂子の露出した豊満な胸に反応が薄い。

武人はやっぱり汐里さんのことは特別に想っているんだね。

『汐里ってつまらなくないですか?』

なんだか、俺は武人が侮辱されているみたいで嫌だった。

なんで、武人は何も言わないの? 彼女が侮辱されているのに…。


『つまらなくないよ』

『え』

『あんた、彼女の友達でしょ? なんでそんなこと言うんだ』

俺は気づいたら口走っていた。

(雅也…)

『武人が選んだ人だ。汐里さんの良さは武人にしかわからないよ。

武人、ごめん。俺、先帰る』

せっかくの武人と2人だけの食事が台無しだ。

『雅也…』(サンキュ…)

俺は飲み代をテーブルに置いて店を出た。

『さてと、私もそろそろ帰ろうかな』

奈穂子が立ち上がる。

『奈穂子…』

『汐里、さっきはごめん。汐里の彼氏があんまりカッコよかったもん

だからさ。ついいじわるしたくなったの』

奈穂子は雅也の後を追うように立ち飲み屋を出て行った。

『雅也さんが言った言葉、武人さんの口から聞きたかったよ』

『え』

(汐里さん…) 

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