その左薬指に結婚指輪をはめたなら………

結婚と恋愛は違う

『なあ、雅也、なんでだと思う？』

なんで、俺に聞くんだよ。

俺だって今、心、めちゃくちゃ折れてんのに。

『武人はさ、彼女のこと、好きなの？』

『まあ、好きか嫌いかって聞かれたら好きなのかな』

『うん』

『俺もさ、もう35歳じゃん。そろそろ結婚しても

いいかなって』

『武人ってさ、よく言ってたよね。胸は手の平に

入るくらいのサイズがいいって…』

『ぷーっ』

武人は思わず吹き出した。

『Ｃカップくらいがちょうどいいってさ』

『お前、いつの話してんだよ。そりゃ、身体の相性はいるけどさ。

やっぱ、結婚と恋愛は違うだろ』

『そんなもんかなあ。俺はいつまでも恋していたいけど』

『お前、好きな子でもできたのかよ』

俺はずっと、武人に恋してるよ。

『ナイショ』

『そういや、俺、親友なのにお前の好きな子のこと、全然、

聞いたことなかったな』

『え、そうだっけ？』

『ああ、そうだよ』

『だってさ、俺が好きになる子は全部、武人の事が好きになるんだもん。

そんなの勝ち目ないでしょ』

嘘だよ。そうでも言わなきゃ、身がもたない。

オーバーコートで隠している俺の突っ立った下半身は正直だ。

今もこうして武人が隣にいるだけでドキドキしている。

『っだよ。言ってくれれば一人くらい、雅也に譲ってあげても

よかったのに』

『いらないよ。そんなお下がり（笑）』

『どうせ、みんなセフレなんだからよ』

『お前だけだろ、そう思ってたのはさ』

『え？』

『みんな、お前の事、本気で好きだったよ』

『なんでお前にそんなことがわかるんだよ』

『見てればわかるって』

『え』

『みんな、お前に抱かれたくて女磨いてんだよ、きっと』

俺だってできることなら、お前に抱かれたいって、いつも

思ってんだけどな。

『……』

『武人は色男ナンバーワンでいいね』

『それ、褒めてるのか、バカにしてるのか』

『別に…。素直にそう思っただけだ』

彼女もきっと武人のこと、本気で好きなんだろうね。