親友の彼女
俺は【BRIDE】というジュエリーショップの店長をしている。
スタッフは俺を含めて全部で4人。俺以外は女の子ばかりだ。
その中でも一番キャリアが長いのは
俺より5歳年下だが一番信頼できるスタッフだ。俺の仕事の大半はいつも
志乃舞がカバーしてくれている。他には
ベテランスタッフだ。いつも休憩時間にスタッフ達が話す恋バナに聞き耳を
立てながら俺は共感していた事もあった。いつだって女の子は恋をして綺麗に
なっていく。うちのスタッフ達も今年のクリスマスは彼氏と過ごすらしい。
羨ましい限りである。
店の前に突っ立ったもみの木に飾りが付けられ、キラキラと輝くネオンを
見ると、今年もクリスマスがきたなあと実感する。毎年、このシーズンに
なると結婚ラッシュが続き、エンゲージメントリングやウエディングリングの
注文が殺到し、俺の店も忙しくバタバタしていた。
俺の店の向かいにある高梨病院の敷地内の調剤薬局で武人は働いている。
定時刻の6時を過ぎると俺はいつもソワソワしていた。交差点を渡り、武人が
帰宅する時にいつも俺の店を通るからだ。武人はショーウィンドーから顔を
覗き込み、『今日、一杯行くか?』と、身振り手振りで俺に合図を送った。
【一杯行くか?】=【ご飯食べに行くか】と同じことである。
『ああ、もうすぐで終わるから、ちょっと待ってて』
『ああ…』
暫くして、俺はスタッフ達を早めにあがらせ、店仕舞いをして出て行く。
『武人、お待たせ』
『いいのか。まだ仕事あったんじゃねー?』
『いいの、いいの。スタッフ達には帰ってもらったから』
『店長はお気楽だな』
『まあな。ねぇ、今日どこ行く?』
俺は武人の腕にすーっと自分の腕を絡ませていった。恋人同士じゃないけど、
これが俺のスキンシップみたいなものだ。俺がベタベタするのも、たまに
ボディタッチするのも、武人は決して拒んだりしない。
当然のようにサラッと流している。
『立ち飲み屋行くか』
『いいね』
俺達は行きつけの立ち飲み屋へ行った。
気軽に行ける立ち飲み屋は仕事帰りの若者から年配客に人気が
あるだけに混んでいた。
『いらっしゃい』
『店長、あいてる?』
『カウンターならあいてるよ』
『カウンターでいいじゃん』
『雅也がいいなら、俺もそれで…』
『カウンター2名様 はいります』
『はい 』
威勢のいい声のスタッフ達は相変わらず元気がいい。
みんな、精一杯働いている。ここにいるお客さん達も
疲れた体を癒すために充電しているんだ。美味しいものを
いっぱい食べて、お酒を飲んで、ストレス発散しているんだ。
明日からまた元気に仕事をするために―――――ーーー。
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