第十二話 物資を漁る
その後、僕たちは死体が無い部屋を見つけると、そこで今晩は寝泊りする事にした。
襲撃されたとは言え、ここが核シェルターであることに変わりはない。故に、外で簡易拠点を立てて寝泊りするよりは、ずっと安全なんだ。
入り口も、一応瓦礫で塞いでおいたから、一晩ぐらいは全然大丈夫だと思う。
「ふぅ~……今日も1日お疲れさんだな。あー身体に染みるわ」
そう言って、ふかし芋を美味しそうに食らう翔。
「しっかり身体を休めねばな。……流石に夕食は食うか、奏太」
「うん。一気にお腹が空いてきたからね」
僕と斗真も、同様に各自で持ってきた食事を食べる。
核シェルターに残る電気のお陰で、明るく照らされている部屋の中で、僕たちはそんな感じで寛いでいた。
心も身体も、比較的安全なここでゆっくりと休ませないと。いかに鍛えてる僕たちでも、そこは気遣わなきゃ長くは持たないよ。
そう思いながら、僕は持ってきた煎り豆を口に流し込む。
「……はぁ。じゃあ、寝る」
缶を利用したトラップのお陰で、寄生獣や人間が入ってきたら音が鳴るようになっている。その為、寝ている間に襲われるなんて事はまず無い。
それじゃあ、これ以上起きてる意味も無いし、身体を休める為にも寝るか……
「はー子供なんだから、こういう所ぐらいは笑顔見せろって。子供の時からそれじゃあ、先が思いやられるってやつだ」
そしたら、翔にそんな事を言われた。
「……笑顔、か。見せたら苦しくなるから嫌だ」
だけど、僕はそれを反射的に正面から拒絶する。
「あー? 苦しくなるってどーゆー意味なんだ?」
「……翔。あまり追及してやるな。何となく、分かる気がする」
「ほーん……ま、いいや。俺も疲れたし寝るか」
「そうか……なら、俺も寝よう」
そして、僕は直ぐに意識を手放した。
次の日の朝。
起床した僕はササッと朝食を軽く食べると、直ぐに身支度を行う。
「……うん。銃もナイフも大丈夫だね」
武器の確認は念入りに。
外出中に武器が壊れるのは、かなり致命的だからね。
翔の蹴りみたいに、素の肉体でもある程度やれるならともかく、僕は武器が無ければ全くと言っていいレベルで戦えないんだ。
「あーそうだ。あと、出発前に物資漁るぞ。虎型との戦いでだいぶ壊れたり消費したりしたっぽいけど、それでもまだまだ使えるものは沢山ある」
「そうだな。ありがたく使わせてもらおう」
「うん、そうだね。そうしよう」
その後、準備を終えた僕たちは、出発前にここでいくらか使えそうな物資を回収する事になった。
「さてと。何を持っていこうかなぁ……」
運べる量には限りがあり、欲張って持ち過ぎると移動の邪魔になってしまう。
それが原因で死んだら元の子も無い。引き際は、絶対に見極めないと。
そんな思いを胸に、僕はコミュニティ内を歩き回る。
「……安易には回れないからなぁ。ここ」
そう言って僕が見るのは、虎型寄生獣の死骸付近。
あそこを起点に、このコミュニティ内には寄生虫”アンノウン”が広がっている筈だ。
皮膚はちゃんと隠しているし、”アンノウン”は肉眼で見えるし、出来るだけ焼いて処理はした……ただそれでも、触れればほぼ確定で終わりだから、ちょっと怖いね。
「んー……あ、これ良さそう」
そうして探していると、やがて僕はあるものを見つけた。
それは、銃弾に加工する前と思わしき火薬が入った革袋だった。
「火薬は貴重だからなぁ……全部持てるかな?」
そう言いながら、僕は火薬が入った革袋をリュックサックの中に詰めてゆく。
銃弾が貴重なのは、火薬の入手が随分と困難になったから。そのせいで火薬の無駄遣いが出来なくなり、手榴弾や地雷といった寄生獣を纏めて簡単に殺せるような武器が作られなくなった……って、おじいちゃんが言ってた。
「ん……っしょっと。よし。これぐらいなら、持てるね」
元より、リュックサックの中には必要最低限の物しか入っていなかった。そのお陰もあってか、ここに残っていた全部……約1キログラムの火薬を手に入れる事が出来た。
これだけあれば、銃弾1500発分ぐらいになるかな?
ただ、加工できるのは慎太郎さんみたいな人に限られるから、その人たちにいくらかの謝礼を出しつつ依頼してみるとしよう。
あと、これだけの量の火薬を持っていようものなら、奪おうと企む人が絶対に出て来る……バレないように、気を付けないと。
「……もう、いいかな」
一応リュックサックにはまだスペースが残ってはいるが、これからの移動を考えれば、これぐらいで止めておいた方がいいだろう。
そう思った僕は、リュックサックの口を締めると、早急に2人と合流する事にした。
「斗真、翔。必要な物資は回収した?」
「ああ。使える拳銃と銃弾をいくらか……な」
「俺はマチェットとサバイバルナイフ。使ってみたいな~とは思ってたけど、これを手に入れる余裕が無かったからな。ここはありがたく使ってみて、使用感を見てみたい」
合流し話を聞いてみると、斗真は無難に拳銃と銃弾。翔は絡みつく植物を切り払う為のマチェットと、多機能なサバイバルナイフを選んだようだ。
2人共、無難に良いものを選んだなぁ。
欲張らず、適切に取捨選択を取る。熟練者らしい考えだ。
「では、行こう。今日中に、必ず旧新宿駅コミュニティに入るぞ」
「だね~。早く行って、休みたいぜ」
「うん……行こう」
そうして準備を整えた僕たちは、直ぐに五反田の核シェルターコミュニティ
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