第54話 統一と、皇帝の即位

「ファースティナ王国も、結局食い物を配るだけで終わったな」

 大陸の中央部、山脈の麓に新たな城を建てる。


 実質、三カ国は簡単に陥落をして統治下に入った。

 問題は、国民性。

 国の成り立ちで、力を持った者達が既得権益を握り、好き勝手をしてきた。

 そのため、賄賂など小ずるい物の考えが蔓延中で、国民までがそれを普通だと考えている。

 自分さえ良ければ、何をしても良いと……


「子どもを集め、道徳教育。親などからつまらんことを吹き込まれるから、悪さをする奴は徹底的に取り締まれ、国民全体がズルいことをするのは、損だと思うまでな」

 町中到る処に間者を忍ばせて、密告をさせる。


 罰金は、利益額に応じて十倍を徴収。

 それを繰り返すことで、馬鹿馬鹿しいと思わせる。

「それじゃあ、真面目に働いた方が得じゃないか」

 居酒屋や、むふふなお店にも、広告塔になる者を忍ばせた。

 まあ悪事で稼げば、そう言うところでぽろっと漏らす。

 すると密告。

 罰金を払って愚痴れば、真面目に…… と話をして諭す。


 仕事を与え、国民の所得が上がればズルい者が馬鹿を見る。

 賄賂を持ってくれば、取引停止を徹底させる。


 その間に、法整備と組織の組み立て。

 

 知識不足のマルタとゲルデが困らないように……

 ただまあ、二人共が毎日感謝をして泣いてくれる。

 貧乏農村の娘と、町のスラム出身。


 クラスの女の子達は、お気楽に暮らしているが、三十歳を越えだした頃から泣き始める。

 俺と八重が年を取らないからだ。

 いや二十歳くらいまではきちんと年を取った。

 でも、その後はもう良いかと止めた。


 おかげで、ぼつぼつと帰ると言い始めた。

 俺としては、子どもが二十歳まではと思ったが、許してもらえない様だ。


「まあ俺達はいつでも来られるから、十五歳で良いか」

「そうねえ、ちょくちょく来ましょ」

 八重とそんなことを話していると、皆がごねる。

「なら私たちも子どもを……」

 そう言って詰め寄って来る。


「だからそれをしても、お前達はこっちに来られないから」

「なに? 悠人君こっちの神より力が無いのぉ……」

 皆が考えついたようだ。

 人のプライドをくすぐって、理を変えさせようと……


 にまにま顔が並び、さらに……

「できないのぉ、最強の死に神でしょうぉ」


「…………」

「仕方が無いわね、悠人には無理でも私ができるわ」

 八重が折れた。


「それに、向こうで地上にいるわけにはいかないからね。私がこっちで見ておくから。皆安心をして」

「理を曲げていいのか?」

「元々理を曲げたのは、こちらの神よ。知ったこっちゃないわ。たとえ罰を受けて消滅をしてもね。その場合私がこの世界を見るわ」


 八重はそう言ってふんぞり返る。

「じゃあ、陣を創るか」


 じじい神が創ったより完璧な物を創る。

 向こうから来た者は、この世界にいる間、年を取らない。

 帰ると向こうでは時が進んでいない。

 検疫と浄化。


「できるじゃない」

「そりゃできるさ、上の方が怒ったら、お前がなんとかしろよ」

「あーうん。相手に寄るけれど」

 なんか中途半端な返事。


 子どもを創り、誕生させる。

 その子達が五歳の時、レギン達が成人。

 皇帝とさせて、グレートエンパイアを発足。

 まあ偉大なる帝国と、少し若さがほとばしった名前だが、それで行く。


 多少魔導具を充実させて、生活と衛生を進めた。

「それじゃあ後は、お前達と八重に任せた」

 そう言って、帰ろうとして、ふと気が付く。


「俺が切るから、すぐに死体は隠せ」

 そう言うと、八重は理解をした様だ。


 瞬速で皆の魂を切る。

 俺は狭間の空間へ転移。

 八重は皆の死体を隠す。


 これで見送りが成功。

 俺達は、高校生に戻った。


 俺を除く、皆の魂が狭間の空間にやって来ると、結界が溶ける。

 学校の教室。

 元の昼休み。

 弁当の食いかけや、はしゃいでいる奴、様々。


 戻ってきたが、教室はシーンとしている。

 委員長達は俺を見つけて走ってくる。

 

 にらみ合いをする奴ら、周りを確認をして泣き出す奴ら、色々だ。

 各自死んだ瞬間に、戻ってきた感じだしな。

 

 混乱をするだろ。

 幾人かは、教室から飛び出し、本当に戻ってきたのかを確認をする。


 まあ混乱は、先生がきても続く。

 ひたすら、ざわざわざわと……


「どうした、お前達。まあいい昨日の続きからだな。山田からだな読め」

「えっ昨日? 読め? えっえっ?」

「どうした、昨日のことだぞ」

「今日何日でしょうか?」

 与野が先生に聞く。


 皆がそんな感じで、先生もおかしいと思い始める。

「ちょっと、みんな待っていろ」

 先生は職員室へ帰り、午前中の様子を他の先生に聞きに行った様だ。


 ドヤドヤと幾人か先生がやって来る。

「昼に何があった?」

「異世界に連れて行かれていました。殺されたんです盗賊に、マルタも……」

 安心しろ、松井。マルタは立派なお母さんとなっている。


 俺が思ったことが聞こえたわけではないだろうが、沙織達がこっちを見てにまにましやがる。


「昼に寝ていたのか?」

「「「「「違います。皆一緒に行っていました」」」」」

 でまあ、その日は騒ぎになり、なんだろうスクールカウンセラーさんから連絡が行き、医者が走ってくる。集団ストレスがどうとか?


 精神的な鑑定と、記憶の齟齬がどうとか?

 だけど、クラスのみんなで記憶の一致が有り、何かが起こったのは確かだと騒ぎになる。

 そして、見事に学力が落ちていた……


 大人になってから、思い出したように高校のテストを受けてみろよ解けないから。

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