第53話 大陸の統一へ

「それでは、此度の条例違反により、セコンディーナ王国を取り潰す」

「なっ」


「俺達は、強かった。そしてその強さを危惧した前王が、俺達を好きにさせるから王国をたのむと言われていたんだ。分かるか? 俺達は生活を好きにするため王国から土地を貰った。そのかわり手伝いをした。便宜的に貴族位を貰っていたが、そんなものに意味はなかった…… いや金を与える理由つけかな」


 それを聞いて、現王。王太子は愕然とする。

 思い返せば、園遊会でも王や宰相に対してため口で、舐めた態度を取っていた。

 周囲の者もとがめることもなく……


「まあ一方的に、約束は破られた。それに、王もいなくなったし、この国は貰う。おい、王は国外追放だ」

「はっ」


「さてと見たことのある顔ばかりだが、忠誠を誓うなら、此のレギンを王とする。異存はないか?」

「「「「「ありません」」」」」

「よし、それでは、プワーナ王国とインペリティア王国を滅ぼす。準備をしろ」

「「「「「はっ」」」」」


 そうして準備をして、収穫を終えた晩秋、プワーナ王国へと足を踏み込む。

 雪の降る冬には基本行軍は行われない。

 だが俺達は、クローラー付きの運搬車を作った。

 魔人国から帰る時、雪が深く。戻ってからスノーモービルが欲しくて作った。


 相手は、そんな物は持っていない。

 それに、よく分からないが、台風が襲ったらしく大変らしい。


「攻めるなら今だ」

「「「「「おう」」」」」


 ざっと物事が片付いたら、休むことなく行軍。

 ついでに、ファースティナ王国の様子も見に行って貰う。


 ファースティナ王国は例の水利のあと、ひどく弱体化をしていた。

 奴隷同様に使っていた国が反抗。

 それによって失った富は大きく、それを一から自国でまかなうのは不可能。

 人は楽なことを覚えると、なかなか勤勉には戻れないようだ。


 国益に、安く大量に入ってきていた食料、それが無くなると、物がなく、必然的に物価は上がる。

 それに、両国から取っていた水の使用料がなくなり、国庫は空。


 兵達の給与もまかなえず、放逐。


 あの頃の勢いは、全くなくなっていた。


 そして今回両国に台風がやって来て、川が氾濫し被害が出たとのこと。

 頭を抱えるしかない。



「そんな状況のようです。すぐ落とせますよ。別働隊をだしましょうか?」

「まあ、あわてなくていい。順に行こう」

 そう、どうせこちらも、台風でけちょんけちょん。

 すぐに、終わる。


 指導階級は、どいつもこいつも使えない。

 平定したら、一から道徳教育を行わなくてはいけない。

 そのままだと、子ども達に害悪だ。


「いくぞ、すりつぶせ」



「どうして、何がどうなっておる」

 向こうの王が、出兵をすると聞き、セコンディーナ王国へと兵を派遣をした。

 一領主の討伐のために。

 だが、なぜか……


「あの旗はなんだ?」

 おどろおどろしい旗。


「あれは、リッチでしょうか?」

「そんな物を掲げて、何者だ?」

「例の領主だそうです。今連絡が来ました。セコンディーナ王国は王が倒されたようですね」

「冷静に言っておる場合か、対応しろ、軍をだせ……」

 そういったものの、王は固まる。


「そうです。どこに兵がいます? 被害地域に残った穀物とかの回収にいかせたでしょう。残りは、セコンディーナでやられたようですし。手がありません。素直に降伏を……」

「ぐっ、がっ。がああああぁ」

 自分の頭をかきむしり、叫びながら王は廊下を疾走し始めた。


 どうも限界が、来らしい。


「おい降伏を知らせろ。王も捕まえろ」

「はっ」


 まず一国。

「これにより、プワーナ王国を廃し、セコンディーナ王国の領として存続するものなり。良いな」

「そんな」

 宰相達が、流石に焦った様だ。


「今からでも、物理的に更地に返しても良いぞ」

「ぐっ、判りました」


 王城自体も解体をして無くする。

 プワーナの名前もなくするつもりだが、とりあえず、王城を壊して積み直し、領主の館を造る。


「さて行くぞ」

 二ヶ月が経ち、まだ雪解け前にインペリティア王国へと向かう。

 こちらは、冬を越えたためさらにひどくなっていた。

 途中の農村では、餓死者があふれていた。


 適当に施しをしながら、王城へ向かう。


 この国も、もうほとんど機能していない。

 未曾有の災害と、兵の派遣。


 食糧不足のまま、冬の到来。


「何者だぁ、貴様ら」

 大軍が来たのに、門番が対応。

 戦闘準備もされていない。


「セコンディーナ王国だ。王に伝えろ、降伏か戦闘か。一時待ってやる」

「ああっ? ふざけて……」

 喋りながら、門から出て俺の後ろに続く大軍を見る…… そして門番は腰を抜かす。


「聞いてまいります」


 その間に腹ごしらえをしていると、町の人間達が出てきて懇願をする。


「食料があるなら分けて下さい」

「赤ん坊が…… 熱が出だして。何かを少しでも」


 ガリガリに痩せた子ども。

 熱が出たなら、もう持たないかもしれない。

 相手がおれじゃなければな。


「穀物を潰し、汁にして吸わせる。それと、乳は出ないのか?」

「はい…… 」

「これを食って、栄養を付けろ。子どもは、今晩が山だが大丈夫だ。いま少しだけ治癒を掛けた」

 そう言ってやると、母親は食い物を持って家へと走っていこうとする。


「ちょっと待て、誰か送っていけ。どうも雰囲気危険だ」

「はっ」


「それと、余裕はあるはずだ、食い物を配れ。町の人間は並べ。それと炊き出しをしてやる。安心をしろ」


 並んでいると、王がやって来た。


 門前で、降伏が告げられる。

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