第27話 悪魔の囁き
「プワーナ王国への伝手?」
「ええ、そうです。できればインペリティア王国へも」
「何をするのだ?」
辺境伯と、
「塩の重要性を知らないから、国全体が借金漬けのようなので。助けてあげようかと」
「どうするつもりだ?」
「まあ価格のつり上げと、川が氾濫して災害時の弁済。その辺りで話をまとめれば……」
こしょこしょと話しながら、説明をしていく。
「うーん。あくどいな。君らが敵でなくって良かった」
そんな事を言う辺境伯だが、悟はたいした事など言っていない。
二国で、話をしながら、どんどん価格を上げていく。
そして、うだうだ言ってきたら、大雨の時に水が多く被害を被っている、それの弁済をしろと。
塩と水で、価格のバランスを取っているのだから、必要以上に流すなと無茶振りをする。まあ力業で来れば、今の疲弊をしたファースティナ王国なら三国同盟で潰そうという計画。とっても簡単。
実際水は、湧水があり、生活だけなら困らないだろう。
あの馬鹿みたいな、綿花栽培さえなければな。
流すなと言われれば、どうするのだろうか?
そして、セコンディーナ王国を含め、周りの四つの国、いや魔人国は分からんから三国。同時に戦争を吹っかけられたら、どうするのだろうか?
そんな事を、与野は考えていたようだ。
そして企画は、両国でプレゼンをされる。
パワポと液晶プロジェクターはないので、OHP。
魔法で光を発し、樹脂板に書かれた文字を壁に投影。
これだけで、両国共に驚いてくれた。
そして、人にとって塩がどれだけ大切なのかを教える。
無論、セコンディーナ王国も海に面しているので、製塩がされている。
俺達により、焼き塩が教えられて、日持ちの良さで絶賛される。
そう普通の塩は、吸水をすると溶けるんだよ。
後日、ファースティナ王国から、塩のキャラバンが買い付けに来た。
「なに? 金額が変わる?」
「ええ特殊な製法で
「それはそうだな」
うんうんと頷いているが、苦汁も塩化マグネシウムも、当然聞いたことのない言葉。
そう、これも与野の入れ知恵。
『馬鹿な奴ほど知ったかぶりで話に乗ってくる』
その言葉通り、うむうむと頷くばかり。
「これを抜いていないと、腎臓といって体の中の中にある毒素を排出するところが壊れますからのう」
「そうじゃ、壊れると大変だ」
そうして、予算が同金額のため、いつもの半分だけを積んで帰ることになる。
そして怒られる。
「しかし苦汁が体に悪く……」
「今まで皆使って、生きておる。ええい、インペリティア王国で仕入れてこい」
帰ってきたばかりで、また出て行くことになった。
だが……
「薪が高騰をしまして、塩は、そうですな三倍ほどになっております」
「三倍だと。ええい話にならん」
せっかく来たのに、手ぶらで帰ってしまった。
「ええいお前では話にならん。わしが行く」
とうとう、伯爵が出てくる。
「新型の大結晶タイプの塩になります。お値段は、五倍ほどに……」
「ううぬ。譲れん。話にならん。昔ながらのものを同じ価格で売れ」
「もう作っておりません。新たにとなると、一月はかかるかと……」
無論策だ。
「くっ、ふざけおって、我が国からの水の恩恵を受けておきながら、何を言う」
「水…… そうですな。実は去年の嵐の折、水があふれましてな…… その時に大変な被害が出まして、ほれこのような感じで」
畑水没による被害。
「何が言いたい?」
「ファースティナ王国が自国の水と仰り、我が国から金を取る以上、水の起こした責任を取っていただきたい。いやあ、我が国も貧乏でしてな」
「水の行く末など責任を取れるかぁ」
伯爵は声を荒げる。
「これは異な事を。貴国は我が国のために水を流してやっていると、常ずね仰り、金を持って行っております。嵐の時には少なくしてくだされば、年間通して売ってくださる水の量も減る。そう、必要な分だけでよろしいのですよ」
そう言ってじっと伯爵を見つめる。
だがその心の内は、大笑い状態。
「くっ、減らず口を。覚えておけ」
「川に堰を造り年間の流れる量を調整。それができればたいしたものだが、はてさて」
売ってもらえない。
そのおかげで、塩の値段が上がっていく。
繰り返した戦争、取り上げた兵糧。
噂が蔓延して、民が消えていく。
ファースティナ王国はここへ来て、壊滅の危機へと陥っていた。
王は召喚ができないとかなり壊れた感じで、原因を探している。
そうここへ来て、もう戦争などやる体力は無かった。
そこへ、塩担当のゴーツク=バリアン伯爵が報告にやって来る。
「塩が仕入れられませんでした」
「仕入れられぬ? なぜじゃ」
宰相は、厳しい目を向ける。
「はっ、新製法だったり、薪の値上がりとか、それに去年の嵐、その折氾濫したらしくその被害を補填せよと」
「補填? 奴らに一体何が?」
「何でも良い。懲罰じゃ。逆らうならば潰してしまえ」
王はもうだめだった。
深く考えず、命令を下す。
それは滅びへの第一歩となる。
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