第28話 三国同盟

「魔人国からはスキにしろとのことです」

「まあ良い。じゃまをしなければな」


 報告をして、兵は下がる。

 すでにプワーナ王国へ向けて兵が出た事は連絡を受けた。


 そこへ向けて、インペリティア王国軍とセコンディーナ王国軍が集合をする。


 ファースティナ王国が国境で叫く。

「今回の塩の一件、国王がお怒りだ、懲罰を持って貴国に常識を知らしめてやろう」

「意味が分からんぞ、塩の値段はこちらが決め販売するのが筋、懲罰とか言って軍を出してくるとは、我が国は属国ではない」

「やかましい、貴様らは、ただうんうんと、頷いていれば良かったのだ、覚悟しろ」

「「「「おおおおっ」」」」

 鬨の声。


 そして、盾持ちが壁を造り、射程距離まで近寄ってくる。


 そこに、軽い、何かがはじけるような音が聞こえる。

 それこそ幾度も幾度も。


「なんだ、あの音は?」

 王命でゴーツク=バリアン伯爵が、今回懲罰のために出てきたが、基本戦は素人。

 ただキョロキョロするだけ。


 その内、味方の盾部隊が消えていき、弓矢部隊が消え、槍部隊が消えてきて、初めて理解する。


「あれは一体、どうなっている?」

 相変わらず鳴り響く軽やかな音。

 まだ弓の射程には届かない。

 それなのに、人が倒れる。


 前線は、それどころではなかった。

「痛え」

 到る所で、痛みを訴え当たり所によって即死。


 適当に、敵を舐めて集めてきただけの兵達。

 伝令すらまともに機能しない。


 ただ最初の号令通り、前に進むだけ。


 そう全滅まであっという間。

 ある程度兵が減った所で、出てきた軍勢。


 予想の三倍。

 兵法の基本通り。


「さあて、戦争は始まった。連絡をしろ」

 伝令が二方へと走っていく。


 そう、 インペリティア王国軍とセコンディーナ王国軍が自国からも出発をする。

 三方から、ファースティナ王国の王都へと進軍をする。


 途中の村や町は、長引いた兵役により疲れ切り、相手になどならなかった。

 とりあえず、反抗をした貴族は吊っておく。


 どんどんと進み、わずか一月でファースティナ王国の王都ヴァレンティーニは囲まれる。

 国王フロッガー=セレスティーノと、宰相レイナルド=ウルティアはあわてることになる。


 何しても許される。そう思っていたようだ。

 そして、城門が吹き飛ぶ。


 破城槌ではない。

 敵が何かを投げた、それだけで丈夫な門が開いてしまった。

 太さ十センチほどの閂にかけた角材が、一発で折れた。


 そして聞こえ始める、パンパンという音。


 兵達は、訳も分からず顔を出して撃ち抜かれる。


「引くな、いけぇ」

「隊長無理です。あのパンパンというもの、木の盾も突き抜けます」

 回転をする砲弾型の鉛粒。

 一発目が潰れ、衝撃を盾に置いてくる。

 そして、二発目で盾は破壊される。


 三発当たれば確実に撃ち抜ける。


 そして、殺傷性の高いスラグ弾。

 今回から、テスト導入。

 狙いは付かないが近距離なら強い。

 弾ができれば、構造が簡単だったので採用。


 王都だけあって、抵抗は強いが時間と共に着実に進んでいく。


「どう考えても、兵が多すぎたな」

「王都は、住人を入れて一万行くか行かないか」

「こっちは、兵隊だけで一万近い」

 おかげで、暇な奴らが出る様で、略奪や強姦が発生。


 俺達の権限で、馬鹿な奴らを撃っていく。

「なんだ、俺達は味方だ」

「盗賊は兵じゃない。命令違反をした奴は死刑だ」

 そう言って問答無用で撃っていると、インペリティア王国軍の小部隊隊長らしき奴が出てきた。


「勝ち戦で鹵獲などは認められている」

「オタクはどうか知らんが、今回は連合国での作戦。略奪は死刑だ、殺されたくなければ全部が終わるまで待て」

 そう言い合っていると、後ろからこそっと俺の額を矢が狙っていた。

 当然掴み、目の前に居る隊長さんに突き刺す。

「がっ」

「この野郎」


 結局仲間割れ、インペリティア王国軍の奴らはどうも上から目線だし、常識が無いし下品だし、それなのに我が国最高って叫ぶんだよな。

 責任を取れと言ったら、周りが悪いと言い切って逃げるし、ろくなもんじゃない。


 結局そこにいた、狼藉部隊全員死刑だ。


 だがそれを見て、住人達が俺達を助けてくれはじめた。

 生活路から、王城の後ろへ繋がる道を教えて貰い、一足早く、入城をする。


「この先どうだ?」

「表へみんな行ったみたいだな」

「バカじゃないか?」


 武神や竜司達が呆れる。

 俺も呆れたけれど。


 とりあえず、小さな門を蹴り飛ばしたらあっさり壊れて、中へ入る。


 井戸とか、行水場? なんか小さな風呂っぽいのがある。

 後で聞いたら、洗濯場らしい。


 さて、城の勝手口から乱入をして、どんどんと制圧をしていく。


 俺達は、悪目立ちをするから、頭まですっぽり布をかぶっているから暑い。


 だけど本当に、黒髪はいないの、グレーとか赤なんだよな。

 この世界、アジア人が居ないのかもしれない。


 そして、さあ近衛達を一瞬で吹っ飛ばす。


「お前達、何者だぁ」

「さあなんでしょ? なんだと思う?」

「今回は、塩の元締めで良いんじゃ無いか?」

「ああ、そうだな」

 こしょこしょと話をする。


「財団法人塩事業センターです。お見知りおきを」

 話によると、塩の専売は一九九七年に終わり、財団法人塩事業センターが事業を引き継いだらしい。

 俺はずっと、伯方屋さんが塩問屋かと思っていたよ。


「なんだそれは?」

 睨まれた……

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