第12話 反撃…… するのか?

 でもまあ、中学校とか勉強ができれば、ある程度評価を受ける。

 そこそこの付き合い、そう上辺だけの女の子同士の付き合い。

 男子からの羨望のまなざしは、私の承認欲求を大きく刺激をして満たしてくれた。


 だけど世界が大きく狂い始めた。

 そう、流行をした病気。


 体調を崩し、定期試験で点数を落とし、なんだか予後の悪かった私は学校のランクを下げた。

 だけど学校のランク下げたおかげで、少し勉強すればいい点が取れた。

 少しだけ学校が楽しかった。


 そして同じ様な苦労をしている、川瀬 陽子かわせ ようこちゃんと仲良くなった。

 いつも二人でお母さんの悪口。

 共通項目が多くて笑っちゃった。


 そしてこの世界へ。

 私たちは、最下層へ落ちてしまった。

 勉強はできても、運動はできない。

 なんだか補正が効いて、すぐに現地の兵隊さんよりは強くなったけれど、みんなには追いつけない。


 この特典は基礎値に対して、倍率があるのかもしれない。


 だけど、兵隊さんとみんなの連絡係のようなことをしながら少しだけ、こっちの人達と仲良くなった。

 亜麻色の髪でグレーアイとか、芸能人のような人がいっぱい居るの。

 黒髪で黒目の私たちは、エキゾチックな感じがするんだと言ってくれた。

「その存在だけで、僕たちを魅了するのさ」

 そんな事を言われ、挨拶の抱擁。

 美形な、ドニ-=クーベル。陽子はカルヴィン=ファーナムと付き合い始めた。

 優しくてスマートな二人。


 胸毛はちょっと苦手だったけれど、鍛え上げた体はすごかった。


 だけど今…… 彼らがいたところは、地面ごと真っ赤に燃えていた。


 所々にある黒いモノが燃え残りだろう。



「さあてと、戦闘に戻るのか?」

 古川 竜司が、なぜかオレに聞いてきた。

「何で俺に聞く?」

「お前が一番強え。それに、なんか知っているだろ。俺達が知らないことを」

「ああ兵達が、女の子を口説いて、秘密を探ろうと必死だったことくらいだな」

 ぼーっと、焼けた大地を見ながら、しゃがみ込んで泣いている二人を見る。


「ああ、そうそう、しつこかったよね」

 女子には覚えがあるらしい。


 点呼を取ると、居なかったのは井上 信夫いのうえ のぶお松井 伸一まつい しんいち高島 太郎たかしま たろう

 女の子は山田 亜美 やまだ あみ田中 忍たなか しのぶ


 意外とみんな、速やかに行動ができたようだ。


「あんたら、委員長と仲がよかっただろ。教えてやれよ」

 柴田 美咲が委員長たちを、振り返りもせずに握りこぶしに親指を立て背中方向を指し示す。


「私たちなんども言ったけどねぇ。ドニ-はそんな人じゃないのぉ。みんな焼き餅なのぉって、そんな感じだもの。ほっとけばぁ」

 俺はそれを聞いて、委員長達は横へ置くことにする。


「じゃあ、そっちはいいとして、今後どうするか決めるか、戦争する奴。手を上げろ」

 みんな、いやいやと首を振る。


「帰る方法を探して旅をする奴」

 パラパラと手が上がる。


 八重が口を挟む。

「異世界ツアー、予定を組まずに満喫」

 パラパラと手が上がる。


「他の奴どうすんだよ。ああそうか。王国に戦争をふっかける奴」

 顔が横に振られる。

 嫌らしい。


 キャイキャイ言っていると、兵達が口を挟んでくる。

「お前達何を言っている。お前達は王国の道具、勝手など許されぬ」

 それを聞いて、竜司が詰め寄る。


「ほう道具だぁ? 俺達は見ての通り生きているんだ。好きにさせて貰う」

「何を?」

 そう言って兵は剣を抜く。


 逃げてと言うか、俺達に逃げるなと言いに来て助かったのはここに居る三人程度。

 他は、俺達と回りに居て付いてきた農民達。


 剣を抜いたことで、急に雰囲気が変わる。

「おまえら勝手に付いてきて、たまたま助かった命、それを無為に捨てるつもりか?」

 武神くんが、一歩前に出て張り切り始める。

  それを見て、仲の良い永礼 理一ながれ りいち、業力 ごうりき きわむ、遠見 貫司とおみ かんじ、与野 よさの さとる達が前に出る。


 兵達は俺達の強さを知っている。


 前に出れば下がり、また前に一歩。

「お前達覚えておけ」

 そう言って逃げ始めるのだが、向かう先は灼熱の大地。

 行き場がなく、うろうろし始める。


 そして馬鹿なことに、委員長達を捕まえる。

「お前達、言うことを聞かないと、仲間が死ぬことになるぞ」


 剣が委員長達の首に押し当てられる。

 だが、この世界の剣。特に兵士の持つ物は完全に鋳物の安物。

 研いではいてもあまり鋭くはない。


 悲しみに暮れていた委員長達は、一瞬驚いていたが、そんなに馬鹿でもなかったらしく、状況を判断する。

「何あなたたち?」


「やかましい、おとなしくしやがれ」

 泣き顔を晒すように、委員長達の片腕を背中側で拘束はしている様だが、片手には剣を持つ。


 そして、委員長達はみんなに見られていることに気がつき、川瀬 陽子と顔を見合わせた時、顔が泣き濡れ、ぐしゃぐしゃなことに気が付く。


「いやぁ、皆見ないでぇ」

 そう叫ぶと、流れるような動きで、肘で兵の胸を打ち、下がった顔に上半身を回転させながらパンチを打ち込む。


 そう委員長達は、恥ずかしさに焦り、力加減をしなかった……


 二人を拘束していた、兵達の頭は爆散をした。


「いやああぁ」

 自分たちでしておきながら、頭を抱えてしゃがみ込み、頭から噴き出した兵の血を浴びることになる。


 そして、また叫ぶ。

「いやあぁぁ」


 そんな混沌な所で、もう一人の兵は呆然と立ち尽くす。

 だが額にぽつっと点ができて燃え上がる。

「これで目撃者はいなくなったわね」

 八重が嬉しそうに言う。


「さあ、これで王国と縁が切れるわ。みんなこれからどうする?」

 笑顔でみんなに聞き始める。


 突然の惨劇で、みんなドン引きなんだが……

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