第11話 攻撃開始

 五〇メートルくらいで、攻撃が始まった。


 矢が放たれ、空を埋め尽くす。

 あれ何本か作らされたが、結構面倒だったのに。

 空を飛んでいき、木の葉でガサガサと失速をして落ちている。


 そう、結構な数が無駄打ち。


 そして、相手からは強力な魔法が花火のように飛んでくる。

 音はない。

 無音だが、ヒューン。パアァンという感じ。


 火球が飛んできて、兵の中で破裂する。

 大きな櫓の間を見事に打ち抜く。

 おかげで、櫓の後ろへみんなが集まっていく。

 そのままじりじりと前へ進む。

 だがその先には、木が茂り、櫓は進めなくなる。



「なんだか、イメージをしていた戦争と違うな」

 そうファランクスを組み、わーという感じで長槍を持っていくかと思ったのだが、最初から銃器の代わりとなる魔法がある所為か、独自の作戦をとっているようだ。



「ええい。誰かなんとかしろ」

 叫ぶ声が聞こえる。

 後ろから……


 いつの間にか、辺境伯達は後ろへと下がったようだ。


 その間に、いやな予感がする。


「八重。逃げるぞ」

「そうね」

 言わなくとも分かっていたようだ。


 前方の森にやばいほど魔力が集まってきている。

 なんで周りの奴らが、あれに気が付いてないのか判らない。


 ジャマな奴らを、手でかき分けて走る。

「きゃあ。霧霞くん。久枝灘さんも、どこへ行くの?」

「前方の森、やばい。絶対でかい魔法が来る」

 言ってしまってから、やばいと思ったが、もう仕方が無い。


 周囲に居た奴で、俺のことを信じた奴らまで逃げ始めた。


「あいつら、逃げるのか? おれらも逃げよう」


 最初に、胸を鎧の上から揉んだのは委員長、稲葉 沙織。

 その後俺達の様子を見て、古川 竜司も気が付き逃げ始める。

 無論目ざとい奴らは、それに続く。


「なんだあいつら、腰抜けめぇ。前が空いた、行くぜ」

 こんな馬鹿もいる。



 そして、人の塊を抜け出して、脇に生えた林の比較的大きな木の陰に身を潜める。

 気が付けば、クラスの連中が結構来てやがった。


 そして、人数が増えたためか、兵が追いかけて来ていて文句を言われる。

「馬鹿者。持ち場に戻れ。敵前逃亡は死罪だ」

 剣を抜いてきやがる。


「馬鹿野郎はお前だ、気が付かないのか? 避難させないと敵からでかいのが来る。全員死ぬぞ」

「何を言う、逃れたいがために、そんな張ったりを」

「バカ。あれを見ろよ」

「ぬわにっっっ」

 何を? とでも言いたかったのだろうが言葉が止まる。

 森から、炎の核が隊の上まで来た後、赤を通り越して、白く輝く火球へと変化をする。


 そして、それは一瞬だった。

 出来上がった火球は、密集をした隊の人達の上にドスンと落ちた。


「まずっ」

 俺と八重が、とっさに張ったシールド。

 その中へ、クラスの連中が断りもなく走り込む。


「バカやろう、自分で張れ」

「霧霞の方が強い」

「霧霞くん。お願い私も入れてぇ」

 畜生、訓練のときの所為か。

 妙な信用を貰ってしまった。


 そして…… 戦場にいた数千人くらいが、一瞬で消えた。


 さっき偉そうに言っていた兵も、ちゃっかりオレの後ろにいた。


「さっきのは…… あれは何だ?」

「だから、向こうの魔法だよ」


 暴風が落ち着いた後。

「いやあぁあ、ドニ-」

 叫びながら、委員長の稲葉 沙織が走っていく。

 それを見て、川瀬 陽子。あのプルルンレベルランク五あの子も走っていく。

 隊長達が居たあたりに向かっているが。


 まだ煙が立ち、地表は赤く燃えている。

 この環境で、まあ普通は生きていられない。



 ―― うちのクラスで無敵の強さを持つ、霧霞君が何かを感じて逃げた。

 私は考える。

 きっと彼は、私には判らない何かを感じたのだと、私は、クラスのみんなに声をかけながら逃げた。

 そして、それは起こった。


 ものすごく大きな炎の球。

 空にいきなりそんなモノができあがり、王国兵の上に落ちた。


 私たちが隠れていた、木など簡単に抜け、折れ、燃えた。

 霧霞君と久枝灘さんが張ったシールド? その後ろへ隠れる。

 一瞬で大きなガラスの壁のようなモノが展開されて、周りに居た人はその後ろへ隠れるのと爆風が来るのは同時だった。


 周囲で、世界が吹き飛ばされていく。

 動画サイトで見た、大きな台風のような光景。

 一瞬で木が抜け、飛んで行き、折れて飛び、耐えたモノは燃え始める。


 それは一瞬だったと思うけれど、すごく長く感じた。

 みんなしゃがんで、耳を塞いでいる。

 急激に変わった、気圧のせいで耳が痛い。

 

 それが終わったとき、思い出す。

 一瞬のことで、自分のことしか考えられなかった。

 そう彼のこと。


 彼は不安でいっぱいだった私を、慰め癒やしてくれた。


 そう、私はクラス委員などしているけれど、稲葉 沙織いなば さおりはみんなが思うほど優秀ではない。

 

 子どもの頃から、要領が悪い子だった。

 お母さんはそれを見て、心配をしたのか、私に家庭教師をつけた。


「良い。これからの時代、女は自立をするのよ。男なんかに依存しないで生きるの」

 そんなことを言い続けられた。


 でもそんな事を言うお母さんは、専業主婦。

 結婚前にちょろっと働いていたけれど。

 その後私たちができて、家にいた。

 子どもの頃にもめていたときは、働きに出るとか出ないとかでもめていた。


 お母さんのランチとかが意外と出費として大きく、家計が大変だったとか?


 その後、家庭教師さんが来て、ついでに弟も勉強を習い、私は、友達と遊ぶこともできず友達は居なくなった。


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