第4話 はじめての

「ああやっぱり、肉体があるのは別格。まあ初めては痛みがあるけれど、それはそれでおつなモノね」

 そう言って、彼女の中に俺が吐き出したモノを嬉しそうにじっと見ている。


 そして手を振り浄化する。


 そう、俺は食われた。ぱっくりと。

 そして彼女は、水晶板を白く光らせたとおり、聖女候補。

 浄化など簡単。


 白く光った者は、聖魔法に特性が高いらしい。

 だが、俺も使える。


「明日から、特性ごとに訓練とか言っていたな」

「そうなのよね。場所が違うなら、どうやってでも、そっちを見に行くから安心して」

 そう言って彼女は棍棒を取り出す。


「一体どこから?」

「うん? 女の子には秘密のポケットがあるの」

 そう言って笑う。


 棍棒。

 持ち手部は、三センチくらいの直径。

 だが、先端部は十センチちょっとある。

 そう、長さも六十センチくらいあり、子どもが使うプラスチックのバットのような感じ。

 そんなモノが、一体どこに?


「もう…… えっち。いいわよ」

 じろじろと見ていたら、勘違いされたようだ。

 そして再び絡み合う。それは男としての本能。あらがえない。

 若い肉体と精神が。男としての本能がぁぁ。


「おーはよ」

 んちゅ。


 朝から、モーニングキス。

 俺はのたのたと起き上がり窓辺に立つ。

 重たい木の窓をパターンと開く。


 向こうに見える山脈では、ワイバーンだろうか数匹がじゃれ合い、ギャヲーンと鳴いている。

 あれってやばくないのか? こっちに来ないのか?

 そっと、窓を閉める。


「なんだか、朝ご飯、パンとエールですって。はい」

「おう、ありがとう」

 いつの間にか、彼女は食堂に取りに行っていたようだ。


 そして、エールというのが何か判らなかったが、苦くてぬるくて炭酸。

「エールって、ビールだから酔うわよ、私にも頂戴」

 そう言って、彼女は唇を突き出してくる。


 木のコップを、口に持っていくと、文句を言われる。

「違う。口移し」

 そして、朝からディープなキスをする羽目に。


 配給された装備。

 ごつい服と、鎖帷子。

 金属では無く、革の防具。

 二人で、着せ合う。


 そして、腰のベルトに木剣を装備。

 これも全員一緒。


 だが、装備をすると、女の子は胸の先端が痛いらしい。

 その晩、こすれて赤くなったのを見せられた。



「それでは訓練を行う。せいれーつ。私は、貴様達の訓練を行う、王国兵団。教育部隊隊長ギリー=ヨイヒトーだ。爵位は男爵。だが訓練中は爵位は気にするな。先ずは、走れ」

 筋肉がびしっとした感じ。ボデイビルのような感じでは無い。

 ただ無駄な脂肪が見えないから、訓練はキツいのかな? など思っていたら、兵がやってきて、少し、騒動になる。


「昨日の今日で、逃げ出した者達がおるようだ。みか。めぐみ。しずか。ゆき。まほ。こいつらを見なかったか?」

 クラス委員の鈴木が手を上げる。


「すみません。苗字。家名は誰でしょうか?」

「うん? ひょっとして増田 が家名か?」

「そうです」

「変わっているなあ。では、増田。大谷。阿部。高橋。木村だ」


 それを聞いて、ザワザワとみんなが言う。

 だが目撃者はいないようだ。


「まあいい。王都の外には、モンスターや獣たちがいる。ひ弱な者達では生きていけない。安易に外へ出ないことだ。では、走れ」


 手の空いた兵達も探したようだが、彼女達の行方は不明だった。


 そして、俺達はグランド。練兵場と言うらしいが、ひたすら走る。


 体力の無い奴らから脱落をしていく。

 そして、男女平等。


 のこりが十人くらいになって、ようやく声がかかる。

「よし、やめぇ。こっちへ集合」


 休憩かと思ったら、素振り。

 基本的な型を、順に繰り返す。


 振り上げて上段から、振り下ろし。

 木剣だが結構重い。

 疲れたところで、横への払いへと変更。

 次は下からの切り上げ。


 いい怪訝しんどい。

「よしやめ、次は組み討ち。ペアを作って、今の型を織り交ぜ戦え」

 えー一切休憩が無いんですが。

 一口でいいから水を……


 そう思ったら、八重が教えてくれた、手で口を隠すように魔法で水を創り飲めと。

 ゼスチャーだが、きっとそうだろう。

 そうで無ければ、指で輪っかを作り、口に持っていく仕草は危険だと思う。

 つい昨夜の事を思いだし、少し歩きにくくなる。


 適当に、近くにいる奴を捕まえる。

 大体、無意識なのか同性同士でペアが出来るが、一人余る?

 なんでだ。

 今まで学校の行事で、余った奴なんかいなかったはずだ。


 かわいそうなのは、山田 亜美やまだ あみ

 彼女は、身長が百六十センチあるかないかで低め。

 だがアンバランスな胸をお持ち。そのためか運動全般が不得意。

 そして、かなりおっとり型。


 ぽつんと立っていると、隊長が向かい合う。

「何をぼーっとしている。はじめんかぁ」

「「「うーす」」」


 コンコン、カンカンと撃ち合いが始まる。


「さて行くぞ」

「おっおう」

 俺のお相手は、武神 光明ぶしん みつあきというクラスでも有名人。

 勇者の申し子のような奴だが、サッカー部。

 ボールはお友達なんだ。などと言って教室でもワックスをつけ、磨きながらうっとりしている変わり者。

 そのため、身長も百八十センチ近くあり、顔も悪くないのに、周りに女子がいないやつ。


 ガキの頃から、武術を習っている俺の敵では無い。

「ふん」

 いきなりだが、剣をおろした状態から、振り上げつつそのまま突きへ。


 普通なら首へいくが、危ないから変更。胸の真ん中へズドンと。

「かはっ」

 とか言って、ぶっ倒れてしまった。


 胸骨とかは折れない程度だけど、胸を押さえてカハカハ言っている。


 最悪なことに、隊長に見られていたようだ。

「おいそこの奴、こっちへ来い。お前は、倒れている奴が復活したら、相手をしろ」


 選手交代。

 武神は山田と組むようだ。


 そして、怪しい目付きで俺を見る隊長。

「お前何かやっているな、その安定した体軸はなんだ?」

「そっ…… そっすかぁ? は初めてなんすけど」

 おどけてもごまかせなかった…… 目が怖えよ。

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