第6話
白野花さんが見学に来てくれた部活は、張り切った部長が空回りしていたたまれなかった。
女性部員が欲しいって、ずっといってたもんな。
部長は
部活が終わり、白野花さんは一旦部室外へ。
ちなみに今日も、部活に出てきた部員は僕と部長だけだった。
「来栖。あの子、どう思う」
「どう思うとは? クラスでは一番の美人さんですけど、かわいいと思っています」
「いや、それはそうだろうけど。あんたも男の子だな。確かにめっちゃかわいかったけど、入部してくれるかどうかだ」
「あぁ……無理っスね。興味なさそうでした」
本人、もともとそういってたし。
「だ、だよね……なんで見学に来たと思う?」
「僕が誘ったんスよ。放課後待ち時間あるっていってたので、暇なら見学に来ますかって。ダメ元でしたが、よっぽど暇だったんでしょう、OKしてくれまして」
「そう、か。暇潰しか……って、それ、信じると思うのかッ!」
「信じるもなにも、それが真実ですけど」
「あんたさー、
「なにいってるんスか。わけわかんないっスよ。お腹空いてます?」
部長はお腹が空くと、ちょっとおかしくなる。酢こんぶを舐めさせると元に戻るけど、今は持ってない。
「はぁー……あの子さー、ずっと私に敵意ビンビンだったよ? その意味、ひとつしかないんだけどー」
「先輩、白野花さんになんかしたんスか? 後輩いじめ、かっこ悪い」
「原因はあんただ。鈍感男子、かっこ悪い」
先輩は片付けをしながら、
「まぁいいや。早く行ってやんな、待ってるよ」
先輩の視線を追うと、廊下から部室をこっそりうかがっている、白野花さんの姿が。なにやってるんだろう。
「じゃあ、お先に失礼します」
「おう! また来週な」
「はい。また来週」
僕が部室を出ると、
「終わった?」
すぐに白野花さんが駆け寄ってきた。
「はい、終わりました。それで……」
なんの用ですか? といいそうになったけど、きっと昨日のアレに関係したことだろうから、
「話せる場所に移動しましょう。教室なら、今は誰もいないかもしれません、教室に行ってみましょうか」
「そうだね。うん、わかった」
僕たちは自分たちのクラスの教室に移動した。予想通り、そこには誰の姿もなかった。完全下校時刻までまだ30分以上はあるから、話はできるだろう。
僕が自分の席に座ると、彼女も隣の自分の席に腰を下ろす。
「ちゃんとお礼をいわないとと思って。昨日はありがとうございました」
丁寧だな。すごくいい人だ。
「どういたしまして」
僕はそう返し、続く言葉を待ったけど、数秒しても彼女からの言葉はなかった。
「それだけ?」
「ち、違うけど。でも、あのね? 連絡先の交換をお願いしようと思ったんだけど、もうしてもらっちゃったし……」
彼女は再び数秒の沈黙。そして、
「昨日はいやな気分にさせて、ごめんなさいでした!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます