第3話 だいすき
「古の魔王であるというのは事実ですか?」
「伝承上での魔王ルドラ様は男性であるとして語られていましたが、女性の姿にしか見えませんが……一体どういうことなのですか?」
「ドラゴンは特別強力な個体であればあの大魔王よりも強大と言われておりますが、勝てる見込みは!?」
マスコミ、と言ったか。
カメラとマイクとかいう技術の結晶を向けて来るこやつらの相手は実に面倒くさい。
どうやら、私は英雄として戦うことになるらしい。
性分ではないのだがな。
とりあえず、一つ一つ答えてやろうか。
「魔王であるのは事実だ。私こそが魔王ルドラ。かつて世界を統べんとし戦いを挑んだ者である。それで、性別に関してか。たしかにかつては男であった。しかし、私を蘇らせたかつての配下が少しばかり儀式を失敗し、このような姿になってしまった。嘆かわしいことよ。ドラゴンが大魔王より強力?そんな個体が何体もいる?だからどうした。私は魔王ルドラだ。異星人ごとき容易く支配してやる」
その後も淡々と質問に答え続け、やがて深夜となった。
「……面倒くさかったな。さあ、寝るか」
なれない行為に対して精神的な疲労を感じつつ、多少の充実感があったのも事実。
このまま眠れば実にスヤスヤと眠れることだろうが……。
「だめだよー。約束破るつもり?まずはお風呂入ろー」
「……もう眠りたいのだがな。それに、風呂はいらんだろう。魔法で容易く清潔にできるのだし」
「そりゃ、魔法あるからいらないかもしれないけどさー……今の自分のカラダ、興味ないのー?」
「確かに素晴らしく美しい容姿をしているとは思う。これが他人ならば一切文句が出なかったのだがな。あくまでもこれは私の体だ。鏡を見て欲情する趣味はない」
「とか言ってるけど、じつは興味あるんじゃないのー?」
……。
「ないとは言わん。が、必要のないことをする意味はない」
「ふふふー、生で見てショックを受けるのが怖いんじゃ?」
「あまり調子に乗るなと言っただろう。それに、今はあまり贅沢もできんのだろう?今は人類とは味方なのだ。味方を困らせるようなことはできんな」
「まおーさまが活躍すればだんだんマシになるだろうから必要経費だと思うんだけどなー。まあいいや。物資を消費したくないなら、それ以外の方法で……うん、お部屋行こ?」
魂胆が読めてきた。
どうせ手を出してこないヘタレ扱いをしているのだろう。
だから、思考を読んで先回りしているのだろうな。
この質問にたどり着いたのは詰めの部分か。
私はこやつに対して甘いが、手を出したことがなかったからな。
そう思うのも無理はないが……かつて手を出さなかった理由はヘタレだからとかそういう理由ではないのだ。
ビビリと言われたら否定はできないがな。
しかし、今の己の裸を見る羽目になるのか。
……精神的になかなか辛いな。
いやだが、それ以前にこやつの裸も見ることになるのか。それだけではなく、行為まで……。
手間のかかる優秀な弟子と思って可愛がってきたから、正直気が進まない。
蘇ってすぐに了承してしまったが、早まったか。
「う、うむ……」
「やったぁ!だいすき、まおーさま!まおーさまのためにいままでずーっととっておいたから、存分に味わってねっ。あ、でもまおーさまは女の子の体に慣れてないんだよねー?……おんなのこのかいかん、おしえてあげるっ」
ピュライは妖艶に笑みながら、不穏なことを言っていた。
……久々に恐怖を感じながら自室へと移動した。
「おはよう、まおーさま。だいすき。ちゅっちゅ」
「やめろ、朝から纏わりつくな」
目を覚ますとピュライに乗っかられながらキスをされていた。
……昨日は不覚だった。
女の快楽とはああも恐ろしいものなのか。
今こうしてキをしているだけでなかなかの快感が襲ってくる。
女同士の経験というものは、私は元は男なのだから当然ないが、対女の経験はそれなりに豊富だ。
だからある程度は知識だけでリードできたのだが……慣れない強すぎる快感、そしてピュライにはスライムの血が混ざっているゆえ、な?
スライムは別にそういう種族ではないのだが、種族特性を活かしたそういう行為は凄まじいのだ。
ずいぶん鳴かされてしまった。
気に食わん。次こそは私が……慣れてしまえば負ける道理はないはずだ。
「それは私も同じだよー。私も慣れてなかったと言うか、初めてだったからつたなかったけど……つぎはどうかなー?」
……思考を読むな。
おそらく、これは完全に思考を予測しているな。
隷属の魔法によって思考を読むこともできるだろうが、これは違う。
経験則と人格を知ることによる予測である。
ずいぶん寂しい思いをさせてしまったようだからな。
ますます、負けられなくなった。いろんな意味で、な。
TS魔王ルドラちゃんの救世譚 小弓あずさ @redeiku
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