第5話
コンコンコンッ
ドアが叩かれる音がして部屋の入口に向かう。
「はーい!」
せかせかと足早に近づき、ドアを開く。
「こんにちは〜。」
ドアを開けると、そこにいたのは優しい笑みがよく似合うメイドさんだった。
「ごめんなさいね〜思ったより仕事長引いちゃって〜。私はカルミアよろしくねシオンちゃん。」
「…はいよろしくです!」
ウフフッと笑いかけてくるその姿はまるで聖女様のようだ。
「では、行きましょう?」
そう言ってカルミアさんは歩き出し、私はその後に続いた。
(ここのメイド、どの人も美人だなぁー)
なんて思っていたら、カルミアさんはマジマジと私の顔を見つめていた。
「…な、なんですか?ね」
「あっ!! ごめんなさい、キレイな顔だなと思っちゃってつい〜。」
「えっそんなことないですよ?!私なんて底辺もいいとこのクソ女ですし…」
「そんなこと言っちゃダメよ?誰だって嫌いな人や合わない人はいるだろうし、嫌われることだってある。だから自分だけは自分のこと好きでいないと。」
「……そう、ですよね!」
不思議と笑みがでてくる。私はこの人にドコか居心地の良さを感じていた。
そして気付いた頃には、ゆったりマイペースな彼女にこちらも乗せられていた。
私達は雑談をしながら、下の階に向かった。
「さぁ着いたわ。」
そう言ってカルミアさんはドアを開けた。
「な…なんじゃこりゃ〜〜!!」
辺りを見回す。
どこもかしこも
服、服、服!!
それも洋服、和服、メイド服何でもあり…。
私は中を探索し始める。そりゃ私もオシャレに興味が無いといえば嘘になるわけで、こんな豪華な服に囲まれたものなら多少はテンション上がってしまう。
「ちょっとびっくりさせちゃったみたいね。ここはサルビア邸のクローゼットよ貸し出し制になってて、誰でも好きなお洋服を着ることができるの。本当にカレンデュラ様は慈愛に満ち溢れた方よね〜!」
「…そっ、そうですね〜!」
「…いやいやいや、こんなコスプレみたいなの誰が着るんだよ?(小声)」
なんて俺様主義なやつだ。ここにいる美男美女にこうやって自分の趣味の姿に仕立て上げて…
「……何か、とても失礼な事を考えてないかしら?」
ビクッと体が反応する。
振り向くと、にっこりと笑いながらも圧倒的な圧を放つカルミアさんがいた。
(怖ぇー!)
「いえいえいえ!そんなことないですよ〜アハッアハハハ…。」
「そう?それなら良かったわ。」
あの人怒らせたら一番怖いタイプだ。
カルミアさんは怒らせてはならないって肝に銘じとこう。
「それより、あの子たち一体どこへ行ったのかしら…。」
カルミアさんはあたりをキョロキョロ見回し始めた。
「あの、あの子たちとは?」
「私達の直属の部下という位置なんだけれど、衣服専門のメイドたちよ。私はその責任者と言えば聞こえはいいかしらね。」
「そうだったんですか!じゃあなんでここに皆さん居られないんでしょうかね?洗濯とかですか?」
部屋の近くに人の気配は全くない。
つまり、ここの皆さまはこの部屋から離れたところにいるのだろう。
…なんで?
洗濯はもう終わっているっぽく、綺麗に干されてあった。
しかし、カルミアさんが伝えた【紫苑ちゃん《私》が来るから部屋で待っていて】という指示は通っていない。
いや、もしかしたら知った上で来ないのか、はたまた来れなくなったのか…
それでもこの部屋に一人もいないこと、カルミアさんに連絡が入っていない事に謎が残る。
わざわざ全員で動かないといけないこと?
(いやまだ全員と決まったわけじゃないけど…)
「何かあったのかしら…、一度探しに行ったほうがよさそうね。紫苑ちゃん悪いのだけれど、探すのを手伝ってくれないかしら?」
「もちろん手伝います!でも私ここの人の顔がわからんのですけど…」
「あっ、そうだったわね。じゃあこの写真を見て探して!」
そう言って、カルミアさんは私に一つの写真を渡した。
「じゃあ見つかり次第また合流しましょう。」
私達は部屋を出て各々探し始めた。
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