第4話「豪華なお風呂、高級エステ、高価なドレス」
私はエリオット君のお言葉に甘え、公爵家のお風呂を借りることになった。
公爵家の大理石のお風呂は広くて優雅で、薔薇の花まで浮かんでいた。
狭くて質素だった実家のお風呂とは大違い。
お風呂のあとは金箔を使った高級エステ。
エステが終わると、バスローブを着せられた。
シルクのバスローブなんて初めてで、お持ち帰りしたくなってしまった。
バスローブの肌触りに感動していた私は、ある部屋に案内された。
お店が公爵家に引っ越して来たのかと思うくらい、部屋の中はドレスで埋め尽くされていた。
よく見ると、帽子や靴やアクセサリーや日傘もあった。
マーメイドラインのドレスや、プリンセスラインのドレスなど、ドレスの型も沢山あった。
今ってこういうドレスのデザインが流行ってるんだ。
デザイナーを名乗る女性に、採寸された。
採寸した寸法を元にドレスを作ってくれるらしい。
ここにあるドレスを一着借りられるだけで、十分なんだけどな。
そのとき部屋にエリオット君がやってきた。
エリオット君は私のバスローブ姿を見て、顔をそむけた。
見るに耐えられない姿だったのかな?
ごめんよ、美少年の目を汚して。
エリオット君の指示でドレスに着替えることになった。
エリオット君の頬が赤く色づいて見えた気がするけど、おそらく気のせいだろう。
青、赤、紫、黄色、桃色など、色とりどりのドレスが運ばれて来た。
初めに着たのは桃色のプリンセスラインのドレスだ。
素材がいいから見た目ほど重くなかった。
ドレスに合わせて、帽子やアクセサリーも付けられた。
ピンクのドレスを着るなんて、小さい頃以来だなぁ。
可愛らしい服は「美人な私が着たほうが服も喜ぶわ!」となんとか言われて、全て妹達に奪われた。
服だけでなく、可愛らしいデザインのものは、アクセサリーや帽子も奪われた。
両親も可愛らしい物は美人の妹が持っていて、当然だと思っていた。
だから私の元にはお祖母様のお古の地味なドレスや帽子しか残らなかった。
「とても美しいです。鏡を見てください」
エリオット君に手を引かれ、全身を映す鏡の前まで移動すると、そこには栗色の髪の美人が映っていた。
「えっ? 誰これ?」
「誰って、あなたですよ。アメリー様」
荒れていた髪は先程受けたエステでサラサラになっていて、髪と同じように荒れていた肌も艶があり、白く輝いていた。
羽のついた縁付きの帽子、サテン生地で作られたヒールのある靴、花や草をモチーフにした真珠のブローチ、アメジストのイヤリング、リボンやフリルの沢山ついたシルクのドレス。
こんなの、私には似合わないと思っていたのに……鏡に映っている自分は、悪くない。
悪くないどころか似合ってる。
「よく、お似合いですよ。アメリー様」
「ありがとうエリオット君」
まさか、この年でこんな感動を味わうことになるとは思わなかった。
「今度は青とか緑などの寒色系の服を着てください。
きっと似合いますよ。
とはいえ、黄色や紫の服も捨てがたいな。
全部着てください」
「えっ?」
それからエリオット君に言われるままに、色んなドレスを着た。
着せ替え人形になった気分だった。でも、違うドレスを着て鏡の前に立つのは楽しかった。
十回ほど着替えて、流石の私も疲れてきた。
「疲れましたか?
そろそろ休憩にしましょう。
テラスにお茶とお菓子を用意させました。
俺は支払いを済ませますので先に行っていてください」
「ありがとう」
エリオット君は気遣いも出来る男へと成長していた。
色んなドレスを着れて楽しかったな。
でも高そうだったし、買ってもらうのは無理だよね。
メイド服を貸して貰うのが妥当かな。このお屋敷のメイド服は可愛かったし。
ちなみに今私は、紫のドレスを着ている。ドレスはエリオット君の瞳の色に似ていた。
エリオット君がこのドレスをとても気に入ったので、今日はこのドレスを着て過ごすことになった。
後で返すから汚さないようにしないと。
「アメリー様の着たドレスを全部ください。
ああでも他のドレスを着たアメリー様も見てみたいな。
ここにあるドレスもアクセサリーも靴も全部ください」
私がメイドさんに案内されて部屋から出るとき、後ろでエリオット君がそんな事を言っていた。
私はその話を聞いてコケそうになった。
こんなに沢山のドレスを一気に買うなんて、お金持ちの感覚はわからない。
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