第129話 姉須戸・トンプソン・伝奇とサラスティ


「次に解説するモンスターはこちらになります」


『コウモリ?』

『いや、人間の身体にコウモリの頭つけたやつか』

『B級モンスターパニックに出てきそう』

『それいったら、ダンジョンに出てくるモンスター大抵モンスターパニック物に該当するぞ』

『ダンジョンが生まれて廃れたジャンルの話はやめよう』


 姉須戸がリモコンを操作してモニター画面に表示したのはコウモリの頭、筋肉質な人間の身体をした怪人のようなモンスターだった。


 コウモリのような羽の代わりに腕と脇腹を繋ぐように被膜があり、より奇怪さが増している。


「サラスティと呼ばれる吸血モンスターです。主な出没場所は地下洞窟タイプのダンジョンなどです」


『外見に似合わない名前だな』

『地下洞窟などって、大半のダンジョンが該当するやん』


 姉須戸がモンスターの名前を視聴者に伝えると、ツッコミのようなコメントが書き込まれていく。


「主な攻撃方法は爪、またはその怪力を生かした組み付きから、口内にある注射器のような器官を使っての吸血行為、超音波を発生して相手の行動を阻害します」


 姉須戸はリモコンを操作して、サラスティが人形に組み付いて血を吸う行為や被膜を広げて体を震わせながら超音波を発生させてシーンを捉えた映像を流す。


「注意事項として、吸血行為を行っているサラスティから犠牲者を無理やり剥がそうとしないでください。蛭のように吸血器官には返しなどがあり、無理に引き抜こうとすると傷口や血管に致命的なダメージを与えます」


 姉須戸はリモコンを操作して、サラスティの吸血器官をズームアップした映像を流す。


『うっわ、吸われたくねえ』

『知ってても、つい引き剥がそうとしそう』

『蛭みたいにたばこでも押し当てたらいいのかな?』


「もし組みつかれた場合は、サラスティの顔に市販されてるライトなど強い光を当ててください。現状それが一番安全な方法です」


『さすがモンスター学の先生!』

『市販品でいいのか』

『それぐらいなら荷物にならないし、場合によってはヘッドライトなど装備してるから対応しやすいな』


 視聴者の一人が血を吸われた時の対処法を質問すると、姉須戸が対処法を伝える。


「弱点としては強い光を当てると一時的に行動不能になります。コウモリ対策でするような音をたてるのは逆に興奮させるので控えた方がよろしいかと」


『ほー』

『この動画見てなかったら、多分音たてしてたな』

『俺吸血されてたらパニックになって引き剥がそうとしたな』


 姉須戸がサラスティの弱点を伝えると、視聴者からコメントが幾つか書き込まれる。


「さてサラスティのドロップ品ですが、魔石のみです」


『悪くない買い取り価格だな』

『ソロで倒せたら大儲け』

『四人チームまでなら黒だけど、それ以上の人数だと赤字よりな値段か』

『ソロで倒せる人少ないぞ』


 姉須戸がサラスティのドロップ品について解説すると、視聴者の一人が魔石の買い取り相場サイトのURLをのせて意見を述べる。


「さて、次のモンスターの解説に移りたいと思います」


 姉須戸はそう言うと、次のモンスター解説の準備に入った。

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