第126話 姉須戸・トンプソン・伝奇とサモニングスライム


「次に解説するのはこちらのモンスターです」


『うわ、こいつか!』

『ころちゅ!』

『死ね!』

『ハイクヲヨメ!』

『なんだ? ただのスライムだろ?』


 姉須戸がリモコンを操作してモニター画面に表示させたのは、赤いゲル状のモンスター。

 体の所々にルーン文字に良く似た解読不可能な文字が浮かんでおり、青白く光っている。


 そんなモンスターの映像を見た探索者アカウントの視聴者達から殺意の籠ったコメントが次々と書き込まれ、モンスターの正体を知らないアカウントがコメントに戸惑っている。


「このモンスターの名前はサモニングスライムと言います。大抵のダンジョンに出没するモンスターで、名前の通り他のモンスターを呼び出します」


『この召喚能力が厄介すぎる』

『呼び出すモンスター自体はFランククラスの弱いモンスターなんだが………数がな』

『あー、数で攻めてくる系?』


 姉須戸がモンスターの名前と特殊能力を解説すると、交戦したことあるアカウントがコメントを書き込む。


「サモニングスライムの召喚能力は厄介で、約十秒に一体呼び出します。最大二十体まで呼び出し、数が減ると補充するように召喚してきます」


『うざっ!?』

『地味に嫌なやつ』

『本体狙えば良くね?』


 姉須戸がサモニングスライムの召喚能力について解説すると、視聴者の一人が本体を狙えとコメントする。


「サモニングスライムは意外と知恵と判断力があり、自分が狙われてると認識するとその粘体を駆使してダンジョンの壁の隙間やヒビに逃げ込み、延々と召喚モンスターを押し付けてきます」


『うわぁ………クソゲーじゃん』

『だからあまり遭遇したくない』

『マジうざい』


 姉須戸が本体を狙うことが困難であることを伝えると、愚痴やサモニングスライムへの罵倒コメントが書き込まれていく。


「さらに、仮に攻撃が届いたとしても、一撃で倒せないとスライムの特色である分裂で数か増え、分裂したサモニングスライムも召喚してきます」


『だれだよ、こんなモンスター考えたやつ!』

『分裂したやつが召喚したモンスターに対応しきれなくなって撤退とかよくある』

『幸いなのは、召喚したモンスターは一定時間経つと消える』

『問題は召喚モンスターは何も落とさないんだよな。まじでくたびれ儲け』

『逃げ撃ち、ひき撃ち感覚で逃げながらモンスター召喚して、下手にダメージ与えると分裂して召喚数が増える? クソゲーじゃん!!』


 姉須戸が本体を狙った場合のデメリットを解説すると、補足するように召喚されたモンスターについてのコメントが書き込まれる。


「サモニングスライム自体は攻撃能力はなく、延々と召喚するだけです。弱点は炎で焼くこと、もしくは乾燥剤を投げつける、あとは凍らせるなど。この三つの攻撃は分裂させずダメージを与えられます」


『姿を晒してたらそれでいけるけど、あいつら狡猾で、壁の隙間や汚泥に隠れてたりするんだよな』

『サモニングスライムが出没するダンジョンでは壁のヒビや水溜まり、天井と警戒する箇所が増えてスカウトの負担になってる』


 姉須戸がサモニングスライムの弱点を解説するが、その弱点をつくのが難しいと現場からのコメントが書き込まれる。


「サモニングスライムのドロップ品は魔石のみです。召喚させずに速攻で倒せたら黒字ですが、最大数まで召喚させてしまうと労力的に赤字………ですかねえ?」


『赤字』

『せめて召喚モンスターからも魔石落とせと言いたい』

『戦うぐらいなら避ける』


 姉須戸がサモニングスライムのドロップ品について苦笑しながら解説する。


「さて、今日のモンスター解説動画はここまでとします。お疲れさまでした」


『乙カレー』

『今日もためになったな』

『起立、きょうつけ、礼』


 姉須戸が配信終了の挨拶をすると、労いのコメントが流れていく。


「それではまた次回の解説動画お楽しみください」


 姉須戸はそういって配信を終了した。

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