第124話 姉須戸・トンプソン・伝奇とサウーローン


「次に解説するのは要注意モンスターです」


『キモッ!?』

『直立した人間サイズのミミズ?』

『見たことないな?』

『どんなモンスターですか?』


 姉須戸がリモコンを操作してモニター画面に表示させたのは人間サイズのミミズのようなモンスターだった。


 その姿は嫌悪感を刺激するような姿で、ミミズを直立させて、人間のような手足が生えている。


 頭と思われる先端は十字に割れて、内部には螺旋状に回転する歯が乱雑に並んでいた。


「このモンスターの名前はサウローンと言います。目撃、交戦数は少なく、レアモンスターの類いですが、自然洞窟タイプのダンジョンで目撃されています」


『姉須戸先生、このモンスターの何が要注意なんですか?』


 姉須戸がサウローンの解説をしていると、視聴者の一人がコメントを書き込む。


「これから解説させていただきます。サウローンは直接的な戦闘能力は低いですが、極めて強力な精神感応系の魔法を駆使してきます。ドミネイトと呼ばれる大抵の国にでは使用禁止扱いの精神支配魔法で探索者同士の同士討ちを狙ってきます」


『うわぁ………』

『一番厄介なやつやん!』

『やべえ………』

『精神支配系の厄介なとこって、解除しても仲間を攻撃した記憶が残るし、操られていたとわかっていてもわだかまりが残る』

『それが理由で解散したチームもいるし、解散しなくてもギスる』


 姉須戸がサウローンの魔法攻撃について伝えると、ドン引きしたような視聴者達のコメントが書き込まれていく。


「またサウローンは警戒心が高く、姿を見せず離れた場所から攻撃を仕掛けてきます。また探知系の魔法や機械を誤魔化す能力もあり、一旦隠れられると発見は困難です」


『下手に狂暴なモンスターとか、怪力のモンスターとかと戦うより厄介なんだよな、潜む系は』

『姿を隠して狙撃じゃなくて洗脳なのが厄介すぎる』

『そう言うモンスターがいると頭になかったら仲間が裏切ったか錯乱したと思いそう』

『姉須戸先生、防ぐ方法ないの?』


 姉須戸がサウローンの習性について解説していると、質問コメントが飛んでくる。


「一応あります。鉛で包んだ兜などで頭部を守ることです。完全にとは言いきれませんが、かなりの割合で洗脳系など精神感応魔法を防げます」


『それがあれば安全じゃね?』

『と思うだろ? フルフェイス並みに覆わないといけないからめちゃくちゃ重いし、内臓スピーカーとかいれないと周囲の音も聞こえにくいデメリットがある』

『あれ首や肩の負担きつい』

『鉛の兜装着してると音と視界が制限されてなぁ………スカウト担当からするとちょっと遠慮したい』


 姉須戸が精神感応魔法の対策を解説するが、探索者アカウントからの反応はいまいちだった。


「サウローンの弱点は肉弾戦など物理攻撃に弱いです。反面魔法に対しては抵抗力が強く効きにくいです」


『ふーん』

『近づければ勝てるけど、向こうもそれを理解してるっぽいなあ』


「さて、サウローンのドロップ品ですが、皮がドロップします。この皮は魔法抵抗力が高いですが、反面物理防御力はそこら辺の布服レベルです」


『下地かマントにするのがいい感じかな?』

『その皮使えば魔法に対抗できるのか』


 姉須戸がサウローンのドロップ品について解説すると、視聴者達が皮の用途をあれこれ考え始める。


「あ、注意事項として一つ言わせてください。味方のバフや回復魔法も阻害しますので、よく考えてくださいね」


『あー、ゲームみたいに敵だげ防御するわけないか』

『そんなうまい話はなかったか』

『味方の魔法通して、敵の魔法だけ阻害とかしてたら需要あるよな』

『それだったら危険飲み込んで挑むわ』


 姉須戸がサウローンの皮について注意事項を伝えると、がっかりしたようなコメントが書き込まれていく。


「さて、それでは次のモンスターの解説に移りたいと思います」


 姉須戸はそう言うと次のモンスター解説の準備に入った。

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