第123話 姉須戸・トンプソン・伝奇とサウィード
「皆さん、おはようございます。本日もモンスター解説動画を始めたいと思います」
『うぽつー』
『今日も良い声』
『イケオジキターっ!』
『出席』
『耳が癒されて、勉強になる動画』
いつものようにシャツ、ベスト、ジャケットのスリーピース姿で挨拶をする姉須戸。
徐々にチャンネル登録者数も増えて笑みをこぼす。
「本日最初に解説するのはこちらのモンスターになります」
『空飛ぶクラゲ?』
『こんなモンスターいたっけ?』
『記憶にないな』
『しかしでかいな』
姉須戸がリモコンを操作してモニター画面に表示させたのは巨大な空飛ぶクラゲ。
数メートルはある二本の長い触手の先端からはバチバチと放電スパークが起きていた。
「このモンスターはサウィードといい、主な出没場所は高山タイプなど山岳ダンジョンです」
『山岳ダンジョン事態レアだもんなあ』
『それに高山だと酸素薄かったりして、不人気』
『下手すると酸素ボンベとか担がないといけないし、普段の装備プラス高山装備で荷物きつい』
姉須戸がサウィードと言うモンスターの出没場所を解説すると、視聴者達から山岳系ダンジョンがなぜ嫌がられるかと言う内容のコメントが書き込まれていく。
「サウィードはノンアクティブと呼ばれるこちらから攻撃しない限り襲ってこないモンスターです」
『ノンアクティブか。戦闘回避できるなら助かるな』
『ドロップ品がしょっぱいならスルー確定』
「万が一攻撃した場合、速攻で倒してください。サウィードは攻撃を受けるなど生命が脅かされると、赤く光ります。これは仲間に救援を求めるもので、連鎖するように赤く光って大群が群がってきます」
『笑うしかないわ、こんな状況』
『絶対攻撃するなって仲間に釘さす』
『ホラー映画かな?』
姉須戸はそう言うとリモコンを操作する。
すると、モニター画面の映像では姉須戸がサウィードに攻撃してわざと放置する。
すると、警告通り次々とサウィードが集まってきて、モニター画面を埋め尽くすほどになった。
「サウィードの攻撃方法は帯電した触手を鞭のように攻撃してきます。かなりの電圧な上に金属鎧などきてると大変危険です」
映像の姉須戸は結界魔法でサウィードの電撃攻撃を防いでいるが、結界に触れた触手から目に見えるほどのスパークが発生しているのがわかる。
『俺らだったら黒こげになるな』
『山岳ダンジョンだと逃げ場も限られるからあの大群が空を飛んで囲んできたら無理ゲー』
『弱点はあるの?』
「弱点といいますか、サウィードは体が柔らかく皮膚も薄く斬撃に弱いです。体のどこかに傷をつけると、空気の抜けた風船のように萎んで動けなくなります」
姉須戸の解説を証明するように、映像の姉須戸が魔法を唱えてサウィードに攻撃すると、萎んで地面に落ちていく。
「サウィードのドロップ品は帯電した触手です。加工すると回数制限はありますが、電撃鞭として使えます」
『ロマンを感じるが、ちゃんと扱える腕がないと自滅や味方に当たるんだよな>鞭』
『鞭を使う探索者とかいたっけ?』
『訓練で使ってみたけど、鞭の長さにもよるけどあまりダンジョン向きじゃない』
姉須戸がサウィードのドロップ品を解説すると、ドロップ品についてあまり好意的とは言えないコメントが書き込まれる。
「まあ、戦闘回避できるなら回避した方が悪くないモンスターですね。さて、次のモンスターの解説に移りたいと思います」
姉須戸はそう言うとリモコンを操作した。
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