モンスター名「さ」行

第118話 姉須戸・トンプソン・伝奇とサテュロス


「次に解説するのはこのモンスターです」


『でた、セクハラ酔っ払い』

『こいつのドロップ品おいしい』

『女の敵!』


 姉須戸がリモコンを操作すると、モニター画面にはヤギの頭に人間の胴体、ヤギの下半身で二足歩行しているモンスターの姿が表示される。


「サテュロスと呼ばれるモンスターで、主な出没場所は草原や森タイプのダンジョンです。非常に好色で、種族問わず女性に発情します」


『チームに女性がいると、優先的に女性を狙ってくる』

『まじ生理的に無理』

『不意打ち食らって胸揉まれた』

『私は押し倒されそうになった』


 姉須戸がサテュロスの解説を始めると、女性の探索者と思われるアカウントから被害報告が書き込まれていく。


「弓の名手で、かなりの距離から当ててきます。また角による突進や蹴りも威力が高いです。女性がいると一目散に組みつこうとします」


『狙撃能力だけはガチでヤバイけど、女には見境節操ない』

『サテュロスが出没するダンジョンにあえて女性メンバー入れて狙撃封じしてるチームもいる』

『そのせいで自称女性の人権云々団体が煩いんだよなあ』


 姉須戸がサテュロスの攻撃方法を伝えると、過去にサテュロスと戦ったことがある探索者アカウントがコメントを書き込む。


「また幻惑魔法を得意としており、気配を隠したり、道に迷わせたりします。この魔法は眉に唾を塗ると解除できます」


『まさに眉唾!』

『誰がうまいこと言えと?』


「サテュロスの弱点は女性と酒です。この二つがあるとサテュロスは我を忘れて姿を現して、無我夢中で手に入れようとします。この時が一番無防備になるので攻撃のチャンスです」


『気を付けてほしいのは、酒や女はなんでも良いと言うわけではない。ある程度うまい酒と美人であること』

『過去にサテュロスに鼻で嗤われて、「これはないわー」的なリアクションされた女性探索者が怒りと憎しみからサテュロススレイヤーになってたなあ』

『酒も安いだけの焼酎とかだと砂をかけられる』


 姉須戸がサテュロスの弱点を伝えると、配信視聴者達から次々と捕捉コメントが書き込まれていく。


「サテュロスのドロップ品ですが、弓矢、皮、角、そしてお酒です。弓矢は品質がよくそのまま武器として使えます」


『俺使ってる。矢はなかなか手に入らなくて市販品だけど』

『角は角笛にするとそこそこいい値段で売れる』

『皮は一部が人間よりであまり人気ないんだよな』

『あんまり気持ち的にね>皮』


 姉須戸がサテュロスのドロップ品について解説する。


「一番価値があるのはお酒ですね、水袋でドロップし、葡萄酒、リンゴ酒、蜂蜜酒の何れかが入っています」


『どの酒が一番かはキノコタケノコ戦争が起こるからやめとけ』

『それで解散した探索者チームがいるから笑えない』

『お酒の買取価格もいいね』


 サテュロスのドロップ品である酒の中身を解説するとコメント欄では盛り上がり始める。


「サテュロスについてはこれぐらいで、次のモンスター解説に移りたいと思います」


 姉須戸はリモコンを操作してサテュロスの画像を消すと、次の準備にはいった。

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