第117話 姉須戸・トンプソン・伝奇とゴースト


「皆さん、おはようございます。本日もモンスター解説動画を始めたいと思います」


『うぽつー』

『今日も良い声』

『イケオジキターっ!』

『出席』


 いつものようにシャツ、ベスト、ジャケットのスリーピース姿で挨拶をする姉須戸。


 徐々にチャンネル登録者数も増えて笑みをこぼす。


「本日最初に解説するのはこちらのモンスターになります」


『こいつか』

『心霊映像?(初視聴)』

『あー、人によってはそう見えるか』

『ダンジョンが出来た当初はそんな反応も多かったとか』


 姉須戸がリモコンを操作してモニター画面にモンスター映像を映す。


 モニター画面に表示されるのは白いシーツを頭からかぶって目の部分に穴を開けた半透明のモンスターだった。


「ゴーストと呼ばれる非実体系モンスターです。広範囲に渡って出没しており、特に墓場などのダンジョンでの遭遇報告が多いです」


『残当>墓場で遭遇』

『だよなあ』

『でもたまにそんなところで?的な場所でも遭遇する』

『こいつ嫌い』

『地味に嫌なモンスターなんだよなぁ』


 姉須戸がゴーストと言うモンスターについて解説を始めると、配信視聴者達から次々とコメントが書き込まれていく。


「ゴーストは非実体系モンスターで、一般的な物理攻撃は効果がありません。魔法スキルか、対非実体用の武器や道具が必要です」


 姉須戸はリモコンを操作して、ゴーストと戦う映像を流す。


 映像では姉須戸が杖でゴーストと戦っているが、暖簾に腕押しと言った感じで杖がゴーストの体をすり抜けて、ダメージを与えられてない。


 画面のシーンが変わると、今度は姉須戸が魔法を唱えて、炎の矢を生成してゴーストにぶつけると、ゴーストは燃えて消えていく。


「ゴーストの攻撃方法ですが、ゴーストタッチと呼ばれる接触魔法を使ってきます。ゴーストの手が触れた場所から熱と生命エネルギーが吸われます」


『触られたくらいなら、氷押し当てられた程度の感覚で、生命エネルギーも最初は吸われた認識もない』


『そのせいで、たいしたことないと放置するとどんどん熱を奪われて低体温症になるわ、生命エネルギー吸われて過労状態の虚弱になるわ』


『奪われた熱は体を暖めたりすればいいけど、生命エネルギーが厄介。回復魔法は傷を治すけど、疲労や体力は回復できない』


『そっちは栄養ドリンクと睡眠しかないんだよな』


 姉須戸がゴーストの攻撃方法を伝えると、視聴者達が捕捉するように、ゴーストタッチを連続でくらうとどうなるか解説してくれる。


「視聴者の皆さんがおっしゃる通り、連続で攻撃をくらうとたいへん危険です。ゴーストタッチは金属鎧などでは防げず、結界など魔法防御のみとなります」


『魔法スキルが発達するまでは、ゴーストがいるダンジョンは死亡率高かった』

『対策が出来るようになったけど、魔法スキル持ちはまだまだ数が足りない』

『聖水や清めの塩とか効くぞ』


 姉須戸がゴーストタッチの防御方法を伝えると、視聴者の一人がゴーストにダメージを与える方法をコメント欄に書き込む。


「こちらのアカウントの方が言うように、昔から幽霊に効果があると言われているアイテムが幾つかあります。探索者組合でも販売されています」


 姉須戸はそう言うと、販売サイトのリンクを動画に表示させる。


「ゴーストのドロップ品ですが、魔石のみです。内臓されてるエネルギー量も多いので買取価格は悪くないです」


『対策とれるなら、コンスタンスに稼げるんだよな、ゴーストは』

『聖水や清めの塩も転売サイト以外ならそんなに高くないな』

『ゴーストは倒せるなら美味しいから、対ゴーストアイテムは品切入荷待ちが多いのが難点』


 姉須戸がゴーストのドロップ品を解説すると、コメント欄が盛り上がる。


「さて、次のモンスター解説に移りたいと思います」


 姉須戸はそう言うと、リモコンを手にした。

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