第116話 姉須戸・トンプソン・伝奇とゴリアン


「次に解説するモンスターは、もしダンジョンで見つけても、チームが万全な体勢でないならなるべく逃げてください」


 姉須戸はそう言うと、リモコンを操作する。

 モニター画面に表示されたのは人間とゴリラを混ぜたようなモンスターで、頭部にはコウモリの耳、背中にコウモリの羽が生えている。


『こいつか!』

『こいつは確かに逃げたほうがいいな』

『納得』

『そんな強いの?』

『地元では中ボスって言われてる』


 モンスターの映像を見た探索者と思われるアカウントの人達が、次々と納得したようにコメントを書き込んでいく。


「ゴリアンと呼ばれるモンスターで、Dランク以上のダンジョンならほとんどの場所にいます。単独で徘徊していますが、戦闘力に自信がないなら挑まないでください」


 姉須戸はゴリアンを解説し始めると、二言目には逃げるように伝えてくる。


「ゴリラのような俊敏さと怪力、一般的な成人男性レベルの知恵と器用さをもち、武器も使います。コウモリの特徴もあり、音波で対象を認識します。唯一の救いは探索者側から攻撃を仕掛けない限り、襲ってくることは希です」


『いわゆるノンアクティブ?』

『前提条件わからないが、一目散に襲いかかるときもある』

『こいつに挑んで、または襲われて死亡した探索者は多いし、大ケガを負って引退したやつも多い』

『大分昔だけど、こいつがいるダンジョンは未帰還者率が高かった』


 配信視聴者達がゴリアンに関する情報コメントを書き込んでいく。


「主な攻撃方法はその怪力を生かした物で、ゴリアンが投石した石で、ヘルメット装着した探索者の頭部をザクロに変えました。またドラミングすると超音波となって範囲攻撃してきますし、短時間なら飛行や天井に張り付きます」


『うわぁ………』

『フルプレート着たタンカーをジャイアントスイングして壁に投げつけたとか、棍棒でミンチより酷い肉塊にかえたとか噂だけはよく聞く』

『あまり嘘ではないのが、ゴリアンの脅威なんだよなあ』


 姉須戸がリモコンを操作してゴリアンが戦う映像を流す。


 どこで撮影したか不明だが、ゴリアンが軽自動車を素手でスクラップに変えていったり、ドラミングによる超音波攻撃で物が壊れていく様を流す。


「弱点らしい弱点はありませんし、皮膚も固く、かなりタフネスです。まだ魔法のほうがダメージが通りやすいかもしれません」


『強い、硬い、タフの三拍子で中ボスの異名がつけられた』

『倒せればCランク確定の実力があると証明できる』

『でも回避できるならなるべく回避したいモンスター』


 姉須戸がゴリアンの解説をすると、現役の探索者達の生の声と思われるコメントが書き込まれていく。


「ゴリアンのドロップ品ですが、これだけ強敵でありながら魔石しか落としません。買い取り価値は悪くありませんが、討伐労力に見合うかと言われると、私は素直に頷けません」


『そうなんだよな~、魔石のみだから率先して狩るかといわれると違うし』

『戦闘回避できなければ覚悟きめて戦うモンスター』


 姉須戸がゴリアンのドロップ品について解説すると、視聴者達から愚痴コメントが書き込まれていく。


「さて、今日のモンスター解説動画はここまでとします。お疲れさまでした」


『乙カレー』

『今日もためになったな』

『起立、きょうつけ、礼』


 姉須戸が配信終了を宣言するとねぎらいのコメントが流れていき、姉須戸は配信を終了した。




 

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