第58話 姉須戸・トンプソン・伝奇と大角カエルとオーバーイーターとオブシディアンウルフ
「おや、これはオブシディアンウルフですね」
Dランクダンジョンの第二階層を探索していると、草原のど真ん中に狼を模した石像が鎮座していた。
『草原のど真ん中にポツンと像とか怪しすぎて草』
『ダンジョンさーん! モンスター配置間違えてますよー!』
『これ、逆にひっかかるやついる?』
『ワロタ』
あからさまに怪しすぎる石像を見て、配信のコメント欄はツッコミやwwwなど笑いを表す文字で埋もれていく。
「石像に扮した魔法生物で、本来は遺跡タイプのダンジョンで石像の群れのなかに擬態していたりします」
姉須戸はオブシディアンウルフの像を杖でコンコンと叩きながら解説を始める。
「グルルル!」
『今さら威嚇してもなぁ………』
『本人は擬態してるつもりだったのか?』
『モンスターの知能もピンキリだな』
オブシディアンウルフは姉須戸の杖で叩かれて、正体がばれたと思ったのか動き出す。
「オブシディアンウルフの攻撃方法は爪や牙、突進です。元が石なので固く重たいので突進には注意を」
姉須戸が解説すると、オブシディアンウルフは見本を見せるように突進してくる。
「体が石でできてるので、鈍器以外の物理攻撃は余り効きません。刃物は逆に刃が欠ける可能性もあります」
姉須戸はインバネスコートを翻しながらオブシディアンウルフの攻撃を回避して、解説を続ける。
「弱点は鈍器などによる強い衝撃です。
姉須戸が魔法を唱えると、オブシディアンウルフを不可視の音の槍が貫き、砂になって崩れていく。
「さて、オブシディアンウルフのドロッ───」
姉須戸は霧散化したオブシディアンウルフのドロップ品を拾おうとすると、横から細長い舌が伸びてドロップ品を横取りする。
「あー………大角カエルとオーバーイーターですね」
姉須戸とドローンカメラが伸びてきた舌の主を確認すると、そこには牛サイズの角の生えた巨大なカエルがおり、ゴクリとドロップ品を飲み込む。
そのカエルの背中には花の部分が生き物の口のような植物型モンスターが共生していた。
「大角カエルの攻撃方法は角による突進と、舌を巻き付けて引き寄せて飲み込んできます。皮膚は油で濡れて滑りやすいので物理攻撃がずらされる場合があります」
姉須戸が解説するように、大角カエルの皮膚の表面には油の膜がはられており、光に照らされてテカテカしている。
「オーバーイーターは他のモンスターの体に根を張って共生するタイプの植物モンスターです。攻撃方法は口のような花による噛みつきと睡眠ガスを吐き出してきます。対処法として音に敏感で、四方八方から騒音をならすとパニックになって動けなくなります。
姉須戸は解説しながら魔法を唱える。
すると四方八方からさまざまな音が聞こえてきて、オーバーイーターは音に反応してゆらゆらと大きく揺れ始める。
『なんだろう、大昔にあんな感じのオモチャあったような?』
『なにそれ?』
『てか、それで睡眠ガス防げるんだ』
そんな風にコメント欄が盛り上がっていると、ゲコゲコと鳴いていた大角カエルが姉須戸に向かって突進してくるが、姉須戸は回避する。
『以外と早い!?』
『あとかなり脚力強いのか、結構な距離飛んだぞ!?』
「大角カエルの突進ですが、なるべく受け止めないでください。厚さ数ミリの鉄板貫けますし、突進力はワゴン車横転させれるほどです」
大角カエルは回避されてもしつこく何度も姉須戸を自分の角で貫こうと攻撃を繰り返す。
「弱点は火ですが、少し注意事項があります。表面の油、ガソリン並みに引火するので、油を浴びたら火には注意してください。
姉須戸は大角カエルの突進を回避しながら解説を続け、魔法を唱える。
生成された炎の矢が大角カエルの体に触れた瞬間、一気に全身に火が回るように引火し、火だるまになる。
大角カエルの背中に共生していたオーバーイーターも延焼に巻き込まれて焼かれていく。
「ドロップ品ですが、オブシディアンウルフからは希に宝石がドロップします。今回は魔石のみでしたが」
モンスター達が燃え尽きると、姉須戸は燃え尽きた灰の中からドロップ品を拾いあげる。
「大角カエルからは角と油がドロップします。角は武器になりますし、削って研磨剤の一種に。油はガマの油のような血止効果をもっており、医療関係に売れます」
姉須戸は大角カエルのドロップ品を解説していく。
「オーバーイーターですが、花びらがドロップします。これを煎じると睡眠導入剤になるので、医薬品扱いで強制買い取りになります」
『この薬、不眠症によく効く』
『効果薄めた奴が快眠薬で市販されてたな』
『こっそり持ち帰って悪いことに使おうとして逮捕された奴がいたな』
オーバーイーターのドロップ品を解説すると、配信視聴者達からコメントが書き込まれていく。
「さて、もう少し探索を続けましょうか」
コメント欄が落ち着いたのを確認して、姉須戸はダンジョン探索を再開した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます