第57話 姉須戸・トンプソン・伝奇と狼鷲と狼蜘蛛


「どうやら次の階層のようです」


 Dランクダンジョンを探索していた姉須戸は、次の階層につながる階段を見つける。


「早速降りてみましょう」


 姉須戸は階段を降りて、Dランクダンジョンの第二階層に向かう。


 第二階層は果てまで遮蔽物のない緑の絨毯のような草原が広がっていた。


「おや、あそこにモンスターがいますね………あれは狼鷲と狼蜘蛛ですね」


 姉須戸が杖で指差した方向には二体のモンスターがいた。


 片方は三対の鷲の翼を器用に駆使して空を飛ぶ狼。

 もう片方は頭の形が狼に似ている大型犬サイズの蜘蛛だった。


「狼鷲はモンスター学では以前紹介したアーコークと言うモンスターの上位種と言う認識です。ヘリのような機動力と旋回力が優秀で、討伐目的でないなら戦闘回避をおすすめします」


『空飛んでるし、まじで機動力えげつない』

『地上に降りてる時に狙うか、面攻撃で追い詰めるかぐらいしか策がない』

『あいつからドロップする翼や毛皮はいい値段なんだよな』


 姉須戸が解説するように、空を自由に飛び回る狼鷲は俊敏でカメラ映像越しでも射撃武器で仕留めるのが難しいとわかる。


「攻撃方法は爪と牙、そして三対の真ん中の翼は硬化することができ、刃物のようにして斬りつけてきます」


 姉須戸がモンスターの解説をしていると、モンスター側も姉須戸に気づいたのか、襲いかかってくる。


「もう一体の狼蜘蛛は巣を張って獲物を待ち構えるタイプではなく、自ら獲物を探して徘徊するタイプです。攻撃方法は爪と牙で、口から吐く蜘蛛の糸は獲物の拘束や、木々に吹き掛けて空中ブランコのような機動に使います」


 姉須戸が解説をしていると、狼蜘蛛と狼鷲が飛びかかってくる。


「双方共に弱点は特にありませんので普通に戦ってください」


 姉須戸は二体のモンスターの攻撃を回避しながら解説を続ける。


刃の嵐ブレードサイクロン!」


 姉須戸が魔法を唱えて杖をモンスターに向けると、杖の先端から竜巻が発生してモンスターを飲み込む。


 刃の嵐と言う言葉通り、竜巻にのまれた二体のモンスターは真空の刃にズタズタに切り裂かれていく。


 狼鷲は竜巻から逃げようと翼を広げるが、広げた翼が切り裂かれ、狼蜘蛛は糸を吐くが、糸が何かに付着する前に消え去り、最後は二体のモンスターも切り刻まれて霧散化していく。


「ドロップ品ですが、視聴者さんが言っていたように翼と毛皮ですね。どちらも装飾価値があります。またテイミング難易度は高いですが、テイムモンスターとして狼鷲は人気です」


『狼鷲テイムしようと思ったら最低Cランクはないとあいつらテイムされないんだよなあ』

『Cランクもまじで最低保証程度。確実性欲しいならランクAは欲しいけど、Aランクのテイマーって少ない』

『テイムされた狼鷲の販売価格は基本オークション。最低落札価格も八桁だもんな』


 姉須戸がドロップ品と一緒にテイムについて話すと、配信視聴者達があれこれとコメントを書き込んでいく。


「狼蜘蛛の方は複眼と牙、口内にある蜘蛛糸器官がドロップします。複眼と蜘蛛糸は錬金術材料、牙は武器になりますね」


『複眼は結構需要あるんだよな』

『やっぱ昆虫系なので嫌がる探索者多い』

『あと、狼蜘蛛は狩猟タイプだから、他の蜘蛛モンスターみたいに巣を見つけたらいるわけでもない』


 姉須戸が狼蜘蛛のドロップ品を解説すると、配信視聴者達が最近の相場や需要などをコメントして補足してくれる。


「さて、探索を続けましょうか」


 姉須戸はそう言うと探索を再開した。

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