第55話 姉須戸・トンプソン・伝奇と大トンボと大セミと大針蚯蚓
「ふむ………何処か近くて昆虫型モンスターが戦っているようですね?」
Dランクダンジョンを探索していた姉須戸は立ち止まると耳をすませてそんなことをいう。
『昆虫型はあまり見たくないなあ』
『見た目巨大化した虫のまんまだから、昆虫が苦手な人にはきつい』
『とはいえ、こちらの好き嫌いで昆虫モンスターが去ってくれるわけではない』
『空気読めよな、ほんと』
『いや、ダンジョンと言う空気を読んだから襲って来るのでは?』
姉須戸が昆虫型モンスターの存在を口にすると、配信コメント欄では昆虫型モンスターに対する否定的なコメントが書き込まれていく。
「取りあえず羽音がする方へ向かいますか」
姉須戸はそう言うと音がする方向へ歩いていく。
しばらく歩くと開けた場所に到達し、そこでは巨大なトンボとセミがお互いの体をぶつけて争っていた。
「あれは大トンボと大セミですね。縄張り争いですかね?」
『まんまの名前で草w』
『うへぇ、気持ち悪い』
『サイズ的に迫力はあるな』
姉須戸はモンスターの姿を見てモンスターの名称を紹介する。
「大トンボと大セミ双方の攻撃方法は噛みつきや石などを空から落としたり、獲物に組み付いて空を飛んで落として墜落させたりします。大セミは大音量で鳴いて相手の耳を壊そうとする場合があります」
『空飛んでるので近接攻撃しかないとちとしんどいんだよな』
『飛行系モンスター全般それな>近接のみだと』
『あれ殺虫剤で倒せないかな?』
『倒せても市販の殺虫剤一缶では無理かも?』
姉須戸が大トンボと大セミの攻撃方法を伝えると、配信視聴者達が意見をコメントしていく。
「むっ? 地揺れ?」
少し離れた場所で大トンボと大セミの争いを観察していた姉須戸は、地面が振動していることに気づく。
それと同時に少し離れた場所の土が盛り上がったかと思うと、何者かが土を掘って大トンボと大セミが争うエリアに向かって行く。
土の盛り上りが二匹のモンスターの真下まで到達すると、土塊を撒き散らしながら地面から巨大なドリルが突出し、大セミの胴体を貫く。
『なんだ!?』
『地面から巨大な針が出てきた!?』
配信視聴者達が驚いていると、今度は巨大なミミズが地面から飛び出し、大トンボに噛みついて地面に叩きつける。
「あれは大針蚯蚓ですね。家サイズの蚯蚓で尻尾に当たる部分がドリルのような針になっています。地中からあの針で獲物を串刺しにするのを得意としてます」
『でけえええええ!』
『あれで地中動けるのか』
『大セミと大トンボがやられて霧散化してしまってる』
配信視聴者が指摘するように、大針蚯蚓に噛みつかれたり、串刺しになった二匹の昆虫型モンスターは死亡したのか霧散化していく。
「大針蚯蚓は振動や周囲の温度で獲物を知覚します。どうやら私にも気づいていたようですね」
大針蚯蚓の頭の部分が姉須戸の方を向いたかと思うと地面に潜り、土を盛り上げながら姉須戸に近づいていく。
「地中に潜られた際の対処法は四方八方に振動を与えるか、高熱源を用意して目をそらすか、空を飛ぶか、もしくは
『最後は気合いなんだ』
『気合いて………』
『なんか魔法を使ったぞ』
姉須戸は魔法を唱えて杖で地面を叩くと、杖で叩いた部分から地面が鋼鉄の金属に変わっていく。
地中から姉須戸を襲おうとしていた大針蚯蚓は金属化した地層に激突して、たまらず地上に顔を出す。
「
姉須戸は素早く魔法を唱えると、姿を表した大針蚯蚓の体を半透明の断頭台が拘束し、刃が落ちる。
姉須戸の魔法の断頭台で胴体を真っ二つにされた大針蚯蚓はビチビチと陸に上がった魚のように暴れて体液を撒き散らしていたが、最後は絶命して霧散化していく。
「さてドロップ品ですが、大トンボからは翅と目玉が手に入ります。両方とも錬金術の素材ですね」
『目玉のサイズがグロい』
『翅より目玉が高いのか』
姉須戸は大針蚯蚓が倒して放置していた大トンボのドロップ品を拾って解説する。
「大セミからも翅が手に入ります。それ以外は魔石以外はないといわれています」
『大トンボよりショボいな』
『どちらかと言うと外れよりなんだよな、大セミは』
「最後に大針蚯蚓ですが、その名前通り大針がドロップします。意外とこれ採掘に適していて少し手を加えるだけで高品質な鑿岩機になります。さすがにこれはサイズ的に放置ですね」
『問題はサイズかなぁ?』
『大針もリフトとかないと持ち運べないサイズなのごなあ』
『たまに持って帰るのがしんどい、嫌がらせなドロップ品あるよね?』
配信視聴者達から指摘されるように、ドロップ品の大針は人一人で持ち運べるものではなかった。
「大針蚯蚓で一番価値があるのは糞です。農作物を育てる土として使えます」
『ふーん』
『審議拒否』
『華麗にスルー』
『今日の夕食は?』
『カレーにするー』
『誰がうまいこといえと?』
姉須戸が大針蚯蚓の糞について話していると、配信コメント欄ではオヤジギャグを書き込んだりして盛り上がっている。
「さて、探索を続けましょうか」
コメント欄が落ち着いたのを見計らって姉須戸は探索再開することを配信視聴者達に伝えた。
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