第53話 姉須戸・トンプソン・伝奇とオーク
「やってきたのはオークのようですね」
ドローンカメラが姉須戸の視線の先に向くと、灰色の肌の人間の体に猪の頭がついたモンスター達がやってくる。
『でた! 別名初心者殺し』
『こいつを倒せるかどうかで探索者の格が変わるんだよな』
『強い、タフ、群れるとめんどくさい』
オークの姿を見た配信視聴者達が次々とコメントを書き込んでいく。
「ふむ、刺青が単純なので斥候か下位の戦士階級ですね」
姉須戸はオークの体に彫られている刺青を見て階級を判断する。
『刺青でわかるの?』
「はい、オークは刺強さと階級や役職によって刺青の模様が違います。上位種であるジェネラルは首から下はほとんど刺青だらけ、逆に顔に複雑な刺青があればシャーマンなど魔法使い系です」
配信視聴者の一人が疑問を書き込むと、姉須戸は詳しく解説する。
『キングやロードと呼ばれるオークは?』
「そちらは刺青ではなく体格で判断できます。一般的なオークが大体ニメートルに対し、キングは四メートル前後になります」
そんな風に配信視聴者の質問に答える姉須戸だったが、オーク達は武器を構えて走ってくる。
「オークの攻撃方法は基本的に持っている武器によります。それ以上に気を付けてほしいのは、オークは力士体型で皮膚や皮下脂肪による防御力が強く、膂力が強いです」
姉須戸はオーク達の攻撃をひらりひらりと回避しながら解説を続ける。
「弱点として強い光に弱いので、光量の高いライトなどで一時的に目を潰せます。
姉須戸が魔法を唱えると、姉須戸の手が閃光を放ち、オーク達の網膜を焼く。
閃光が収まると、オーク達は全員目を抑えて苦しんでおり、無防備になっていた。
「こんな感じで目潰しして逃げるなり倒すなりしてください。
姉須戸が魔法を唱えると、オーク達を包み込むように火の渦が生まれて焼き尽くしていく。
「オークのドロップ品ですが、肉や脂肪、骨が手に入ります。肉は高級猪肉の味に近くて人気です。脂肪もラードとして重宝され、骨は出汁取りや骨粉にして錬金術の媒体にします」
姉須戸はオークのドロップ品を解説する。
「あ! オークに対して一つ注意事項がありました。生理中の女性はオークが出るダンジョンに入らないでください」
『え? 何で?』
『どゆこと?』
ドロップ品の解説を終えると、姉須戸は何か思い出したのか、手を叩いて注意事項を配信視聴者に伝える。
「昨今の研究で人間の女性から発生する生理中の血の匂いか体臭が、どうもオークのメスの発情期の匂いに類似しており、オスを興奮させてより好戦的にさせるとわかったのです」
『それであの時しつこかったのか』
『うわぁ、オークって変態だ』
『取りあえずその時はオークのいないダンジョンか、休みます』
『さすがモンスター学の先生』
姉須戸が理由を解説すると配信視聴者達が納得する。
「さて、今日の探索はこれくらいにしましょうか。宜しければチャンネル登録と高評価お願いします」
『おつー』
『乙カレー』
『お疲れ様です』
姉須戸はいつもの締めの言葉を伝えると配信を終えた。
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