第42話 姉須戸・トンプソン・伝奇とヴァルグとヴェジピグとウード


「先ほどは失礼しました。配信を再開したいと思います」


『おかえりー』

『おかー』

『探索頑張ってー』


 ウォーマシン達のドロップ品を売りに行くために一端配信を切った姉須戸は、諸々の手続きを終えて配信を再開する。


「さて、今度は何が出てきますかな?」

「キャアアアアアー!!」


『悲鳴!?』

『どこかでモンスターに襲われてる?』

『放送事故!?』


 探索を再開してすぐにダンジョン内に悲鳴が響き渡る。


「ふむ、あちらの方ですね」


 姉須戸は悲鳴が聞こえた方向へと足早に駆ける。

 すると、モンスターの集団に囲まれた探索者の集団を見つける。 


「むっ? あれはヴァルグ! 魔法の矢マジックミサイル!!」


 モンスターの集団の中にはバサバサと羽音を響かせる人間の頭に、髪の毛がミミズのようにうねり、耳の部分からコウモリの羽が生えたモンスターが飛び交い、その中の一匹がまるで口づけするように探索者の一人の顔に密着していた。


 それを見た姉須戸はモンスター名だけ叫ぶと魔法を唱え、魔法の矢を探索者の顔に密着してるヴァルグにむけて放つ。


 魔法の矢が命中すると、ヴァルグは絶命したのか霧散化し、解放された探索者がその場に倒れる。


「味方です! 加勢します!!」

「助かる!!」


 姉須戸が叫ぶと、探索者のリーダーと思われる人物が返事をする。


「空を飛んでいるのはヴァルグと言います! 麻痺の金切り声で動けなくなった相手に口づけで体内に卵を産み付けます!!」

「まじかよっ!」

「仲間が口づけ食らったぞ!」


 姉須戸がモンスターの特性を叫ぶと、探索者の集団はヴァルグの口づけを開けた仲間に視線を向ける。


「早めの治療を受ければ助かります! 早急に片付けますよ」

「おう!」


 姉須戸が叫ぶと探索者の集団は武器を構え直してヴァルグを迎撃するが、敵はヴァルグだけではない。他にもキノコを生やした動物や葉っぱが集まって人の形をしているモンスターもいた。


「キノコが生えてるのはヴェジピグ! キノコが寄生して死体を操ってるので、キノコを破壊しないと意味がありません。殺されると寄生されてゾンビにされますよ!」

「まじかっ! 道理で攻撃しても死なないとおもった!」


『初見でわからないギミックありモンスターとかやめろ』

『そうか、あの時は偶然キノコを破壊したから倒したのか』


 姉須戸はヴェジピグと戦っている探索者にアドバイスを叫ぶと、探索者はキノコを狙うように攻撃をかえる。


「こっちのモンスターは注意事項ないかっ!」

「それはウードという葉っぱの集合体で、核となる赤い葉っぱを破壊するか、燃やすのが有効です! 炎の矢ファイヤーアロー!」


 人の形をした葉っぱの集合体ことウードに向かって炎の矢を放つと、ウードの葉っぱは可燃性を含んでいたのか一気に燃え上がる。


「残りも駆逐しますよ! 石の礫ストーンバレッド!!」


 姉須戸は魔法を唱えると、地面から尖った石が浮かんで飛行するヴァルグ達に向かって飛んで撃墜していく。


 探索者の集団も姉須戸の加勢によって形勢を取り戻したのかモンスターを駆逐していく。


「助かった!」

「それよりもヴァルグの接吻を受けた人を救急搬送してください。卵の除去は時間との勝負です!」


 モンスター達を壊滅すると、探索者集団は姉須戸に礼をいって握手を求めてくる。

 姉須戸は握手に応じながらも、ヴァルグの接吻を受けた人を心配し、救急車を呼ぶように言う。


「ドロップ品は半分そっちが貰ってくれ。俺たちはこいつをつれて地上に戻る」


 探索者の集団は姉須戸を指示をきいて、未だに麻痺から回復しない探索者を俵担ぎして地上へ向かう。


「無事だといいですね。さて、モンスターのドロップ品てすが、ヴァルグは羽の被膜と頭髪のようなミミズです。乾燥させると漢方薬の一種になりますよ」


『元を知ってると服用しにくい』

『激しく同意>服用しにくい』

『知りとうなかった』


 姉須戸がヴァルグのドロップ品を解説すると、否定的なコメントが書き込まれていく。


「ヴェジピグのドロップ品はキノコです。乾燥させて粉末にするといいお出汁が出ますし、焼くと松茸のようないい香りと肉厚で酒のあてにお勧めです」


『でも死体に寄生してたんだろ?』

『俺は食べれる』

『姉須戸先生、ヴェジピグの攻撃方法は?』


「攻撃方法ですか? 寄生した生物によりますね。大抵は引っ掻きや噛みつきや体当たり。寄生元のモンスターが持ってた特殊能力とかは使えないので安心してください」


 姉須戸は配信視聴者からヴェジピグの攻撃方法を質問されて答える。


「最後にウードですが、葉っぱがドロップします。これも乾燥させて粉末にすると漢方薬になりますが、非常に火が付きやすい可燃物なので取り扱い注意です」


『過去にウードの葉っぱを着火材にしてバーベキューしたら大惨事起こした動画があったな』

『これ(URL)』

『ガチの事故やん!』


 姉須戸がウードのドロップ品を解説すると、別の配信者の事故動画のURLが貼り付けられる。


「ご紹介された動画のように燃えやすいので気をつけてください。そうそう、ウードの攻撃方法は葉っぱを手裏剣のように飛ばして斬ってきたり、相手の体に纏わりついて窒息を狙います」


 姉須戸は何か思い出したように手を叩くと、ウードの攻撃方法を解説する。


「さて、探索を続けましょうか」


 姉須戸はそう言うと、ダンジョン探索を再開する。

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