第38話 姉須戸・トンプソン・伝奇とイェーザーとイミテーター
「む? 向こうから何かやってきますね」
Eランクダンジョン第二階層の岩高原を探索する姉須戸は、進行方向から姉須戸に向かってくる砂ぼこりを見つける。
「あれはイェーザーですね」
徐々に近づいてくる影に姉須戸は目を凝らして見つめ、その正体を口にする。
砂ぼこりをあげてこちらにやってきたのはハ虫類のような鱗に覆われたダチョウだった。
「イェーザーの主な攻撃方法は突進や嘴てのつつき、あとジャンプしてドロップキックしてきます」
イェーザーはグエーと鳴き声をあげながら退化した羽をバタつかせて姉須戸に向かってドロップキックしてくる。
姉須戸はコートの裾を翻しながらイェーザーのドロップキックを回避する。
回避されたイェーザーのドロップキックは姉須戸の背後にあった岩に命中して、ガァンと衝突音と共に岩肌にヒビが入る。
『中々の威力だな』
『まだ攻撃が単調で読めるから避けやすい』
『あの質量が迫ってくると硬直しそう』
配信視聴者達はイェーザーの蹴りの威力に対してあれこれとコメントを書き込んでいく。
イェーザーは羽を広げて、嘴から蛇のような舌をチロチロ出しながら姉須戸を威嚇して追い詰めようと迫ったり、嘴で攻撃を繰り返す。
「イェーザーはあの見た目でハ虫類に該当するモンスターで寒さに弱いです。氷系魔法が使えるなら容易にたお───おっと!?」
姉須戸は杖でイェーザーの嘴攻撃をいなし、後退しながら解説をしていると、唐突に地面に擬態していた粘体に手足を拘束される。
『姉須戸先生っ!?』
『うおっ!? ウーズ系か?』
『放送事故?』
粘体の不意打ちを食らった姉須戸の姿を見て、配信視聴者達がざわつく。
イェーザーはその隙を絶好のチャンスと捉えたのか渾身の力を込めて嘴を振り下ろしてくる。
「
だが、イェーザーの嘴攻撃は姉須戸の脳天を穿つことはなく、逆に粘体に頭をつっこむ形になる。
「っと、あれはイミテーターと言うスライム系モンスターの一種ですね。周囲の風景などに擬態して獲物が踏み込むのを待ち、獲物が踏み込んでくると、糊のような粘着度の高い分泌液を身体から噴出して獲物を捉えます」
『イェーザーが必死に頭を抜こうとしてるのがシュール』
『カートゥーンアニメでよくみる光景』
『イミテーターだっけ? 餅みたいに粘るな』
イミテーターに頭から突っ込んだイェーザーは自分の頭を抜こうとするが、イミテーターは逃すまいとさらに身体で包み込もうとする。
「イミテーターの攻撃方法はあのように擬態した自分の身体にやってきた獲物を包み込んで窒息や、圧迫死を狙います。弱点は火で、捉えられたら火を押し付けてください。
姉須戸が魔法を唱えると、バスケットボールサイズの火の球が産み出され、それをイミテーターに向かって投げる。
火の球は着弾と共に爆発してバックドラフトを起こしたような大きな炎を巻き上げてイミテーターとイェーザーを焼き尽くす。
「さて、イェーザーのドロップ品ですが、鱗と肉がドロップします。鱗はスケイルアーマーの材料に、肉は淡白な鳥のむね肉みたいな味ですが、ボディビルダーには理想の肉らしいですよ」
『界隈では百グラム一万円で取引されてるとか>イェーザーの肉』
『草』
『イェーザーのスケイルアーマーはお手頃かだな』
姉須戸がイェーザーのドロップ品を解説するとそれを捕捉するようにコメントが書き込まれていく。
「イミテーターは粘度の高い粘液です。別のモンスターの素材を加えると鉄筋コンクリートよりも丈夫な資材として使われています」
『へー』
『ドロップ品が売れた後のこととか気にしたことないけど、色々なところに使われてるんだなあ』
「さて、ドロップ品の解説も終わりましたし、探索を再開しますね」
姉須戸はそう言うと、探索を再開した。
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