第37話 姉須戸・トンプソン・伝奇とイエティとイシトサルチスとイッペパラトス
「第二階層の岩高原に到着しましたね」
イセリアルマローダーを倒したあとは特にモンスターと遭遇せず、姉須戸は第二階層にたどり着く。
「おや、あそこにモンスターがいますね」
姉須戸が杖でモンスターがいる方向を指すと、そこには空を飛ぶエイと白い毛むくじゃらの巨人、そしてその巨人に踏まれて踠く鹿のようなモンスターがいた。
『鹿のモンスターを巨人とエイが取り合おうとしてるとこか?』
『サバンナのドキュメンタリーみたいにモンスター同士の食物連鎖とか勉強になるな』
『あのエイどうやって飛んでるんだ?』
モンスターの映像を見た配信視聴者達がコメントを書き込んでいく。
「エイのモンスターはイシトサルチスといい、風の魔法で浮遊しています。かなり好戦的で自分より大きなモンスターでも攻撃します」
姉須戸が解説するように、イシトサルチスと呼ばれた空飛ぶエイは白い毛むくじゃらの巨人の周囲を飛び回り、時折噛みつこうとする。
「主な攻撃方法は噛みつきと体当たりです。白い毛むくじゃらの巨人はイエティてすね。この階層では強いモンスターに該当しますし、イシトサルチスにも劣らない好戦的な気性です」
イエティと呼ばれる巨人はイシトサルチスの噛みつきすらものともせず、強引に引き剥がして投げ飛ばす。
「イエティの攻撃方法は多彩です。まずはその怪力による肉弾戦。そして口から氷の吐息を吐きます。決着がついたようですね」
姉須戸の解説に応えるようにイエティは口から吹雪みたいな吐息を吐き出し、イシトサルチスを氷付けにしてバリバリと食べ始める。
イエティに踏まれる鹿はピイピイと助けを求めるような鳴き声をあげて踠くが、イエティから逃れることができていない。
「あれはイッペパラトスですね。馬と鹿が合体したようなモンスターでヘラジカのような角と馬の鬣と尻尾をもちます」
『馬と鹿? つまり馬鹿?』
『絶対言うと思った』
『あれ? 俺書き込んだ記憶ないのに書き込みがあるぞ?』
配信視聴者のコメント欄ではイッペパラトスの外見をネタにしたコメントが書き込まれていく。
「イッペパラトスは臆病な性格で滅多に攻撃してきませんが、角や後ろ蹴りはかなり痛いですよ。外見の美しさからテイムするとよい値段で売れます」
そんな解説をしている間にイッペパラトスもイエティに食われて霧散化していく。
「ガオオオオオオォォンンッ!!」
そしてイエティは鼻をヒクヒクさせて周囲の匂いを嗅ぐと姉須戸の方を向いて咆哮をあげ、猿のように岩から岩へと次々と飛び移り、姉須戸に襲いかかる。
「イエティは俊敏で力強く、かなりタフです。戦闘に自信がないなら逃げるのも手です」
姉須戸はそういいながらもインバネスコートの裾を翻し、杖を構えてイエティを迎え撃つ。
「ガアオオンンッ!!」
イエティは握り拳を作った両手を振り上げると、姉須戸に向かって両手を振り下ろす。
姉須戸は後ろに跳躍して回避するが、イエティの拳が叩きつけられた場所は陥没してヒビが広がる。
『なんつう威力!?』
『Eランクダンジョンにいていいモンスターじゃねえだろっ!』
『動きも早いし!!』
イエティはそのままだだっ子パンチのように両手を回転させて姉須戸を叩き潰そうとする。
姉須戸は中年男性とは思えない俊敏な動きで右へ左へとイエティの攻撃を回避する。
「ガオオオッ!!」
「
イエティは口を大きく開けて氷の吐息を吐き出すが、姉須戸は魔法を唱えて炎の壁を作り出してイエティの攻撃を防ぐ。
「イエティですが、その外見と性能から予測できるように氷系の魔法にたいして完全耐性をもっていますが、逆に炎が弱点です。
「ギャアアアアアっ!?」
姉須戸はイエティの弱点を解説しながら魔法を唱える。
すると、イエティの足元から炎が渦巻き始め、イエティを包んで燃え上がり、悲鳴をあげる。
「イエティと戦う時は松明など火があると牽制にも使えますので、覚えていてくださいね」
『はい、姉須戸先生』
『テストで出そう』
『本当にこの人強いな』
姉須戸は配信視聴者にむけて語りかけると、ドロップ品を回収していく。
「ドロップ品ですが、イシトサルチスからは風袋と呼ばれる内蔵が価値があります。風を生み出す器官で、これを利用した扇風機などがありますね」
『モンスター素材の家電か』
『魔石があればかなり長時間使えてエコなんだよね>モンスター素材の家電』
姉須戸がイシトサルチスのドロップ品について解説すると、家電の話が出てくる。
「イッペパラトスですが、価値があるのは角と鬣。今回は手に入りませんでしたがコードパンと呼ばれる革があります」
『今調べたらコードパンの買取価格やべぇ!』
『サイズにもよるけど最低買取価格七桁!!』
『加工されたアイテムもいいお値段だわ』
続いてイッペパラトスのドロップ品を解説すると、レア素材であるコードパンの買取価格に配信視聴者達が目を白黒指せる。
「最後にイエティですが、毛皮と氷の吐息を吐き出す内臓器が価値があります。毛皮は冷気耐性が付与され、内臓はクーラーや加工して瞬間冷凍に使われます」
『イエティのマントもってます。氷魔法とかダメージほとんどないぞ』
『すげー』
『イエティのクーラーたっか!?』
『市販の一般的なクーラでよくね?』
最後に姉須戸はイエティのドロップ品を解説する。
「さて、少し休憩したら探索を続けたいと思います」
姉須戸はそう言ってその場に座ると、ポケットから飲み物と食べ物を取り出して一服始めた。
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