第34話 姉須戸・トンプソン・伝奇と岩蛆虫と岩鰻と一角ゴキブリ


「皆さんおはようございます。前回はご心配おかけして申し訳ありませんでした」


 姉須戸はダンジョン探索配信を開始すると、前回の探索で起きた出来事について謝罪する。


『ええんやで』

『本当に心配した』

『イエロームスクが最優先討伐モンスターだったのはわかるけど』


 配信視聴者達からは姉須戸を心配するコメントが次々と書き込まれていく。


「さて、今回はEランクダンジョンに来ています。今回はどんなモンスターに会えますかね?」


 姉須戸はどこのダンジョンにいるか紹介すると、早速ダンジョン探索を開始する。


「ふむ? 何か振動を感じますね? こっちに気づいたようです」


 しばらく探索を続けていると、姉須戸は足を止めて壁に手を当てて振動を確認している。

 その行為が悪かったのか、振動の発生源が姉須戸がいる場所へと向かってくる。


「あれは岩蛆虫ですね。おや、その岩蛆虫を追いかけるように岩鰻も来ましたか」


 壁から穴を開けて姿を表したのは人型サイズのカブトムシのような頭部と蚯蚓の胴体をもつ昆虫型モンスターの岩蛆虫。


 それを押し出してさらに奥から現れたのは同じく人型サイズの岩のような鱗に覆われた大ウナギ。


「む? あれは………一角ゴキブリ!!」


 岩蛆虫と岩鰻が現れたかと思うと、どこからともなくブーンと言う高速で羽を羽ばたかせる音が聴こえてくる。


 姉須戸が羽音がする方向を向くと、ドローンカメラも釣られるように同じ方向を向く。


 空からやってきたのは大型犬サイズの巨大なゴキブリ、頭部からは黒光りする角が生えていた。


『うぎゃあああああ!!』

『虫系モンスターは見た目がグロいな』

『あのサイズのゴキブリはいやああああ!!!』

『プラグラはやめろおおお!!』


 モンスター達の姿をみた配信視聴者達が悲鳴を上げる。


 岩蛆虫と岩鰻はお互いに絡み合い争い、一角ゴキブリは漁夫の利を狙おうと空を旋回する。


「一角ゴキブリの攻撃方法は、角を使った突き刺しです。上空から急降下して角を突き刺してきます」


 一角ゴキブリはヒット&アウェイを繰り返すように攻撃したり、岩鰻と岩蛆虫の回りを飛んだりする。


「岩鰻と岩蛆虫の攻撃方法は噛みつきと胴体を使った締め付けです。岩をも噛み砕く牙に噛まれたら簡単に手足とかちぎられます」


 岩鰻と岩蛆虫はお互いに噛みつこうとして相手に回避されて、地面や岩壁を噛み砕く。


「胴体の締め付けや鞭のようにしなる身体を使った叩きつけも危険です。締め付けられると、生き延びても分泌液や粘液でヌメヌメになります」


『嫌すぎる>粘液まみれ』

『エロゲならありだけど、リアルはノーセンキュー』

『しかも水でもなかなか洗い落ちない上に臭い』


 姉須戸が岩鰻と岩蛆虫の特性について語る。

 そうしていると、岩蛆虫が岩鰻の首部分を咬みちぎる。


「岩鰻や岩蛆虫は生命力が高く、首を落としても数分は生きてます。首を落として倒したと油断して大ケガを負った探索者の話とかよくありますからね」


 姉須戸が言うように、首を咬みちぎられた岩鰻は頭だけになってもまだ生きているのか、岩蛆虫に噛みついたままで、胴体もピチピチと跳ねて暴れる。


 一角ゴキブリは頭部がなくなった岩鰻の胴体を角で突き刺し、獲物を巣へ持って帰ろうとする。


「おっと、そうはさせません。岩の槍ロックランス!」


 姉須戸が魔法を唱えると、岩の槍を生成して一角ゴキブリに向けて飛ばす。


 一角ゴキブリは回避しようとするが、角に刺した岩鰻の胴体が重いのかバランスを崩した時に岩の槍が命中して落下していく。


「岩蛆虫や岩鰻は外皮が硬く、物理攻撃が効きにくいです。また粘液で身体を覆うことで火などにも耐性がありますが、酸には弱いです。酸の噴射アシッドスプレー!」


 姉須戸が魔法を唱えると、姉須戸の両手から酸の液体が噴射されて岩蛆虫を溶かしていく。


『酸に弱くてもなぁ………』

『魔法使いでもない限りは弱点つけない』


 配信視聴者からはそんなコメントが書き込まれていく中、姉須戸はドロップ品を拾っていく。


「岩鰻と岩蛆虫のドロップ品は共通していることがおおいです。特に価値があるのがこの鉱石。岩蛆虫や岩鰻が食べた土や岩の中にある鉱石からランダムでドロップします」


 姉須戸は解説しながらポケットからハンマーを取り出すと、鉱石を割る。


「お、宝石の原石っぽいですね。このようにランダムで価値のある鉱石が出たりするのでガチャなんていわれています」


『ガチャは悪い文化』

『ガチャ………ピックアップ………うっ、頭がっ!』

『無料予備チケットでピックアップレア当てました』

『テメーは俺を怒らせた!>無料予備チケット』


「岩鰻からは肉がドロップしますが、不味いです。鰻とつくから蒲焼きにして食べたら、あまりの不味さに吐きました」


『食ったんだ』

『食べてみようと思ったけどやめとくわ』

『モンスター肉は当たり外れが激しいからな』


 姉須戸が岩鰻の肉に関してのべると、同情的なコメントがちらほらともらえる。


「さて、一角ゴキブリですが………レアドロップ扱いで角が手に入ります。そしてこれユニコーンには下回りますが治癒能力があります」


『ファッ!?』

『ユニコーンの角のような効果!?』

『うそやろ』

『当方医療関係者、事実です』


 姉須戸が一角ゴキブリの角について効能を解説するとコメント欄がざわつく。


「といっても限度はありますし、使用回数も一回だけてす。保険として持ち歩くのもありかもそれません。さて、探索を続けましょうか」


 姉須戸は締め括るとダンジョン探索を再開する。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る