第29話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアーマータートルとアックスビークとアズミ


「皆さんおはようございます。前回はすみませんでした」


 Fランクの森ダンジョンにやってきた姉須戸は配信を開始すると、まずは前回の非礼を詫びる。


『しゃーない』

『アクロンと戦ったことあるけど、あの臭いは我慢できませんもんね』

『服は大丈夫でしたか?』


「ええ、何とか臭いは落とせました。ご心配おかけしてすいません。さて、今回はFランクの森ダンジョンにきています。早速探索してみましょうか」


 姉須戸はそう言うと、ダンジョン探索を開始しする。


「何処かで争う音が聞こえてきますね?」


 しばらく探索を続けていると、金属を打ち合うような音がどこからか聞こえてくる。


『前回みたいな探索者チームとモンスターが戦ってるのかな?』

『いや、その割には単調じゃね?』


 姉須戸は聞こえてくる金属音の辿るように進んでいくと、川を見つける。


 そこには嘴が斧のような形をしたペリカンが川の上空を飛び回り、川石に向かって急降下してはその嘴を打ち付ける。


「あれはアックスビークと呼ばれるペリカンのモンスターですね。名前の通り嘴が斧のような形しており、急降下してその嘴を獲物に叩きつけます。因みに鳥らしく光り物を好み、キラキラ光るものを身に付けてるとしつこく狙われますよ」


『ほー!』

『下手に急降下攻撃、盾とかで受けない方が良さそう』

『なんで岩を集中して攻撃しているんだ?』


 姉須戸はアックスビークと言うモンスターを解説する。

 すると、配信視聴者の一人がアックスビークの行動に疑問視するコメントを書き込む。


「あれはアーマータートルの擬態ですね。アックスビークはアーマータートルを餌にしており、ああやって何度も斧の嘴を叩きつけて岩鎧のような甲羅を割ろうとしているのです」


『ダンジョンやモンスターの種類によって共闘したり、弱肉強食の食物連鎖が生まれてたりするよな』

『そのせいでダンジョンが生まれた初期の頃、生物学の先生とか頭悩ませてた』

『Aのダンジョンでは食物連鎖の食う側と食われる側なのに、Bのダンジョンでは逆で、Cのダンジョンでは共闘したりな』


 そんな話で配信コメント欄が盛り上がってる中、アーマータートルと呼ばれた亀は、上空を旋回するアックスビークに言葉通り手も足も出せずに甲羅の中に引きこもって耐えている。


「アーマータートルは上空からの攻撃に弱いですが、名前通り防御力が高く、すっぽんのような鋭い噛みつきが得意で、腹部が柔らかく弱点です」


 姉須戸はアックスビークとアーマータートルの戦闘を遠くから見ながら解説をする。


 すると、アーマータートル近く水面に影が現れたかと思うと、急降下してくるアックスビークを迎撃するように、一匹の魚が鉄砲魚のように口から水を吹き出す。


 魚が吐き出した水鉄砲はかなり威力が高いのか、アックスビークを撃ち落とす。


 すると、ずっと甲羅に引きこもっていたアーマータートルがこれまでの恨みを返すように噛みつく。

 アーマータートルの噛みつきに助力するように魚も半人半魚と言うその姿を表して、墜落したアックスビークに襲いかかる。


「あれはアズミですね。淡水タイプの半魚人です。口に含んだ水鉄砲はみての通りのかなりの威力です」


『淡水タイプの半魚人って………』

『鮎の頭と鱗が生えた人間みたい……』

『ヌメっとして生理的に無理』


 姉須戸は鮎の半魚人を見てその正体を解説する。

 その間にアックスビークはアーマータートルとアズミに食われて霧散化して、ドロップ品に変わる。


「さて、折角のドロップ品まで食べられてはたまりませんので仕掛けます。連鎖する雷撃チェインライトニング!」


 姉須戸が杖を構えて魔法を唱えると、杖の切っ先から電撃がほとばしる。


 その雷撃はアーマータートルを貫通し、アズミに襲いかかり、またアーマータートルへと何往復もしてダメージを与えて黒こげになって崩れ落ちていく。


「アックスビークのドロップ品は斧のような嘴や羽、肉です。嘴は少し加工すれば武器になりますよ」


 姉須戸は両手でアックスビークの嘴を持ってドローンカメラに見せる。


『そういえばこないだ臨時で組んだチームのメンバーがそれ使ってたな』

『ほーん』

『材料持ち込みだと安く作れるな』


「アーマータートルはその名前の通り、甲羅が手に入ります。人間サイズの鎧を作るには数が要りますが、防御力は折り紙つきですよ!」


『なんか通販番組見てる気分』

『でも、お高いんでしょう?』


 姉須戸がアーマータートルのドロップ品について解説すると、配信視聴者の一人が通販番組だとコメントを書き込み、それに会わせるコメントが書き込まれていく。


「えー、盛り上がってるところすみませんが、アズミのドロップ品は鱗です。こちらも防具になります。今回はレアドロップがでましたね。こちらです」


 姉須戸はそう言うと、金色に輝く鱗を見せる。


「レアドロップ扱いの黄金の鱗です。といっても、金色に見えるだけで金ではありません。これを口に含むと水中で一定時間呼吸ができます」


『おー!』

『永続とかじゃないなら効果時間把握してないとヤバそう』

『水中呼吸かあ、役立つ場所あるかな?』


 姉須戸がアズミのレアドロップを解説すると配信コメント欄が盛り上がる。


「それでは探索を続けましょうか」


 姉須戸はモンスターのドロップ品解説を終えると探索を再開した。

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