第28話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアースデビルとアクロン


「嫌な組み合わせのモンスターがきましたね………」


 Eランクダンジョンを探索していた姉須戸は、探索先で遭遇した二体のモンスターを見て嫌な顔しながら呟く。


 姉須戸と対峙していたモンスターの一体は一見するとアースエレメンタルに似た外見だが、違うのは体から蛭のようなてかりのある管が地面に刺さっている。


 もう一体は人型の粘体。その粘体からは異臭を放ち、粘液の中には無機物有機物問わず大小さまざまな物が取り込まれて漂っている。


「アースエレメンタルに似たモンスターはアースデモンです。アースエレメンタルの亜種と言われており、あの管が地面に刺さっている限り傷を負っても回復していきます」


『地味に嫌なモンスター>自動回復』

『見た目からして固そう』


「あの管を破壊すれば回復能力を阻止できますが………固いですし、近づくと飲み込み攻撃を行ってきます」


 姉須戸はモンスターとの距離を取りながら解説を続ける。


「そしてあの人型の粘体はアクロンと呼ばれるスライム系で、かなり悪臭を放ちます。出きれば遭遇したくないモンスターです」


『見た目から粘液が濁ってるもんなあ』

『過去に遭遇したけど、まじで臭かった。仲間吐いてて撤退した』

『遭遇したくねえ』


「一番気を付けないといけないのが、粘着力の高い粘液です。武器で下手に攻撃するとくっついて取り込まれて剥がれなくなりますし、粘体の体を鞭のようにしならせて叩きつけてきます」


 姉須戸はハンカチで鼻を抑えながら、アクロンの解説を続ける。


「両方とも近接攻撃しかなく、足は遅いので、無理して戦う必要がないなら逃げるのも手です」


 姉須戸はそう言いながらも、逃げる素振りはなく戦うつもりなのか杖を構える。


「まず、アクロンと戦うなら可能な限り火は使わないでください。使うなら遠距離がいいです。なぜなら………炎の矢ファイヤーアロー!」


 姉須戸はアクロンから距離を取りながら魔法を唱え、炎の矢を生み出す。


 そして姉須戸が放った炎の矢がアクロンに命中した瞬間大爆発を起こす。


「アクロンの粘液や体内には可燃性の高いガスなどが蓄積されており、今のように引火して大爆発を起こす可能性があります。同じように体内に取り込んだ金属部分を攻撃して火花がとんで引火可能性もあります」


『近接攻撃は粘液に絡み取られるわ、火花起こしたら爆発するとか戦いにくいな』

『しかも悪臭を放つ粘液の残骸が四方八方に飛び散ってるし、下手に浴びたら………おえっ!』

『爆発の威力凄いな、近くにいたアースデモンがダメージ負ってるぞ』


 配信視聴者が指摘するように、アースデモンはアクロンの爆発に巻き込まれてダメージを負っていたが、特殊能力によって傷が回復していく。


「アースデモンの倒しかたですが、音波が弱点なので、魔法使い系なら音波系魔法を使うと楽に倒せます。音波の槍サウンドランス!!」


 姉須戸が魔法を唱えると、半透明の槍のようなエフェクトが発生し、音の槍がアースデモンを貫く。


 音の槍に貫かれたアースデモンは体が砂のように崩れて落ちていき、砂の山になったかと思うと煙のように消えていく。


「アクロンのドロップ品で価値が高いのは粘液です。このアクロンの粘液は薬物として重宝されているのですが………ドロップ品もかなり臭いので、持ち帰るなら臭い対策しないと色々弊害が起きます」


 姉須戸はアクロンのドロップ品に関する解説をすると、インバネスコートのポケットからゴム手袋と密封できる袋とタッパーを取り出すと、アクロンのドロップ品を密封して収納する。


「アースデモンのドロップ品ですが、管が価値があります。土もドロップしますが、こちらはアースエレメンタルと違って産廃にしかならないので持ち帰らないように」


『産廃になるドロップ品とか始めて聞いた』

『アクロンの粘液は前もって容器とか用意してないと持ち帰れないな』


 姉須戸がモンスター達のドロップ品について解説すると、配信視聴者達があれこれとコメントを書き込んでいく。


「さて、今回はかなり早いですがここで帰還します。アクロンのドロップ品は早く処理したいてすし、その服に臭いがついたのでクリーニングに出したいので」


『あー、わかる』

『そんなに臭いがきついんだ』

『それは仕方ないね』


 姉須戸は苦笑しながら早めの帰還を伝えると、配信視聴者達からは理解と同情のコメントが書き込まれていく。

 

「それではよろしければチャンネル登録高評価宜しくお願いします。お疲れさまでした」


『おつー』

『おつかれー』


 姉須戸は最後にいつもの挨拶をすると配信を終了した。

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