第27話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアプスとアピスとアンドロスコーピオン
「皆さんおはようございます。本日は以前探索したEランクダンジョンを再度探索したいと思います」
姉須戸は配信用のドローンカメラに向かって山高帽を脱いで礼儀正しくお辞儀をして配信開始の挨拶をする。
『出席!』
『授業始まった』
『よろしくお願いします』
『今日もモンスター解説をお願いします』
『姉須戸先生のモンスター講座始まるよー』
配信視聴者達はまるで学校授業のような感覚で出席など挨拶をかえしてくる。
『姉須戸先生、前回迷い家で見つけたポーションはなんだったんですか?』
「一般的な低級ライフポーションでしたね」
姉須戸は配信視聴者達と雑談しながらダンジョン探索を続けていく。
「む? 何処かで戦闘が行われているようですね」
『微かにだけど戦闘音聞こえるな』
『ヘッドフォンのボリューム最大にしてやっと気づけるレベルの音だ』
『モンスター同士か、探索者とモンスターの戦闘かで話が違ってくるな』
姉須戸は戦闘音が聞こえてくる方向に進んでいく。
「他の探索者グループとモンスターとの戦闘のようですね」
姉須戸が戦闘音の発生元に辿り着くと、四人の探索者グループとモンスターの群れが戦闘していた。
モンスター側は二匹のファイヤーパターンのような赤黒い紋様の入った二匹のコブラ、天使の羽をはやした猫が二匹、そして人間の男性の上半身、腕と下半身が蠍になってる一匹のモンスターだった。
「あれはアピス、アプスにアンドロスコーピオンですね。蛇がアプス、天使のような翼が生えた猫がアピス、そしてあの蠍人間がアンドロスコーピオンです。そこの探索者さん、加勢は要りますか!」
「助けてくれ!!」
姉須戸はモンスター名を解説すると、探索者達に加勢の声掛けをする。
探索者界隈のマナーとして加勢する時は声掛けして、相手から同意を得ないと獲物の横取り扱いとなり、トラブルのもとになる。
「防御魔法で援護します。
「魔法使い! 助かる!!」
姉須戸は声掛けして魔法を唱えて杖で地面を叩くと、探索者全員が半透明なリングに包まれる。
「先ずはアプスと言う蛇を優先してください! そいつらは毒の息を吐き出します! 喉が膨らんだら離れて!!」
「おうっ!!」
「うえっ! やっぱり毒持ちか!!」
姉須戸が杖でアプスを指すと、先に戦っていた探索者達が返事をしながら優先的に攻撃を仕掛ける。
すると天使の羽をはやした猫のアピスが妨害するように目を輝かせ始める。
「
「助かる!」
姉須戸が魔法解除を行うと、アピスの目の輝きが瞬く間に消え、戸惑う様子が伺える。
「アンドロスコーピオンは前屈みになると麻痺毒のある尻尾で攻撃してきます、頭上注意!」
タンク役の重鎧を着こんだ探索者が姉須戸のアドバイスに従って盾で頭を防御したと同時に前屈みになったアンドロスコーピオンの死角からの尻尾攻撃を防ぐ。
「うへっ、あっぶね!!」
アンドロスコーピオンの尻尾攻撃を防いだタンク役の探索者は腕に来る衝撃から焦った顔で声を漏らす。
「範囲爆発攻撃魔法を放ちます! 下がってください!
姉須戸が叫び、探索者達が慌てて離れたのを確認すると魔法を唱える。
するとモンスター達の中心部で火花が散ったかと思うと、大爆発が起きる。
『耳がーっ!!』
『目がーっ』
『おえっ! 爆発の振動でドローンカメラの画面揺れがひどい』
姉須戸は気づいていないが、爆発魔法による爆風と轟音で配信視聴者達が被害を受けている。
「………」
「うへぇ………モンスターが粉々だ………」
「すげえ魔法使いがいたもんだ………」
「あ、姉須戸先生だ」
片耳を抑えながら爆発があった場所を覗き込む探索者チーム。
その中の一人が姉須戸の配信視聴者だったのか、姉須戸を指差す。
「おや、私の配信視聴者さんですかな? 御視聴ありがとうございます」
姉須戸は杖を脇にかかえて、山高帽を脱いで挨拶する。
「助かった。ドロップ品についてだが………」
「全部そちらで構いませんよ、配信の関係でドロップ品の説明だけさせていただければ幸いです」
「あ、ああ………それでそっちがいいなら」
姉須戸は探索者チームとドロップ品についての分配の相談を終えると、ドローンカメラの方を向く。
「さて、ドロップ品ですがアプスは牙が価値があります。加工すると毒除け効果のあるアクセサリーなり、武器に毒属性を付与できます」
姉須戸はそういって蛇の牙を見せる。
その背後では探索者チームがなるほどと感心していた。
「アピスのドロップ品は羽ですね。これを集めて枕にすると安眠効果があって、睡眠薬に頼りたくない不眠症の人が重宝してます」
『ほうほう』
『まじであの枕モンスター素材使ってたんだ』
『うへ、今ネットで調べたら六桁もするじゃん』
続いてアプスの天使のような羽を拾い上げると解説を続ける。
今度は配信視聴者達が姉須戸の解説に反応してコメントを書き込んでいく。
「最後にアンドロスコーピオンですが、残念ながら魔石しかありません。Eランクダンジョンでは強いモンスターの部類ですが、ドロップは微妙なんですよね」
最後にアンドロスコーピオンのドロップ品の解説をすると、姉須戸は先に戦闘していた探索者チームに返す。
「さて、探索を続けましょうか。そちらもよい仕事を」
「お、おう………」
姉須戸はそういって探索者チームと別れるとダンジョンの探索を再開した。
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