第26話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアニメイデッドオブジェクトとアルベリッヒとアガシオン


「おや、珍しい。迷い家ですね」


 Fランクの森ダンジョンを探索していた姉須戸は、一軒のヴィクトリアンスタイルの洋館を見つける。


『うわっ! いいなっ!!』

『Fランクダンジョンの迷い家かぁ………当たりといえば当たりだけど、ちと微妙』

『なにそれ?』

『なんか探索者と思われる人は盛り上がってるな』

『姉須戸先生、迷い家ってなんですか?』


 配信視聴者達の殆どは姉須戸が迷い家を見つけたことに興奮しているが、探索者ではないアカウントの人達はなぜ盛り上がっているのか理解できず、戸惑っている。


「はい、迷い家とは日本独自の名称です。一言で言いますと、財宝が確定している当たり部屋みたいなものだと思ってください」


 姉須戸は配信視聴者の質問に答えながら、姉須戸は警戒した様子もなく洋館の中に入っていく。


『モンスターハウスならぬトレジャーハウス?』

『大体あってる>トレジャーハウス』

『これがCランク以上のダンジョンの迷い家だったら高額配当の海外宝くじ一等クラスの財宝が眠ってる』

『Fランクだと、どれくらい?』

『百万前後、五百万いったら大当たり』


 配信視聴者達のコメント欄では迷い家でどれだけ儲かるかと言う内容で盛り上がる。


「迷い家で一つ注意点があります。財宝を獲るには、番人を倒さないといけません。早速やってきたようですね」


 姉須戸が配信視聴者に一言注意していると、洋館にあった椅子や燭台などの調度品がポルターガイスト現象のように浮いて姉須戸に襲いかかる。


「これはアニメイデットオブジェクトと呼ばれる調度品に擬態したモンスターです。攻撃方法は体当たりのみですが、調度品の形によっては鋭利な刃物になってたりするので油断しないでください」


『モンスター知識なかったらポルターガイスト現象と勘違いしてびびりそう』

『意外とナイフやフォークのアニメイデットオブジェクトが地味に痛いんだよな』

『金ダライ型のアニメイデットオブジェクトに執拗に頭叩かれてガンガン音が鳴り響く度に仲間が笑いこらえてるのが辛かった』


 姉須戸は攻撃を回避しながら杖で、洋館の中を飛び交う調度品のアニメイデットオブジェクト達を叩き落として倒していく。


「弱点は特にありません。物理攻撃で倒せますし、耐久力も低いので当たれば一撃で倒せます。ただ、ドロップ品は魔石しかありません」



 姉須戸はアニメイデットオブジェクト達を倒して魔石を回収すると、先に進む。


「ここは………倉庫ですかね? あそこに宝箱がありますが………番人がいますね」


 姉須戸は迷い家内部を探索し、部屋にはいるとそこは倉庫みたいに使われてない掃除用具や家具などが置かれていた。


 部屋の中央には木製の宝箱があり、その前には蛇の体に老人の頭のモンスターが姉須戸を睨んでおり、その両脇には中東風のデザインをした香枦から人の形をした煙が現れる。


「人頭の蛇はアルベリッヒ、煙はアガシオンと言うモンスターです。両方共に魔法を使うモンスターなのでご注意を。 魔法の盾マジックシールド!」


 姉須戸がモンスター解説をしている最中に、計三体のモンスターは魔法で姉須戸を攻撃してくる。


 アルベリッヒは炎の矢ファイヤーアローを、二体のアガシオンは雷撃サンダーを放つが、姉須戸は魔法の盾で防ぐ。


「まずアガシオンですが、弱点は香枦です。あれを破壊されると姿形を維持できずに死にます。石の礫ストーンバレッド!」


 姉須戸が魔法を唱えると、無数の石の礫が雨霰のようにアガシオンの香枦に向けて飛び、香枦を破壊する。


 すると、人の形をしていたアガシオンの煙はもがき苦しむような仕草をした後霧散化してドロップ品に変わる。


 仲間を殺されたアルベリッヒは怯む様子もなく繰り返し炎の矢を放つが、姉須戸の方が実力は上なのか魔法の盾に阻まれてダメージを与えられない。


「アルベリッヒも特に弱点はないので、物理魔法どちらでも倒せます。 雷撃サンダー!」


 姉須戸が魔法を唱えると、アガシオンが放った雷撃とは比にならない落雷のような轟音と共にアルベリッヒに雷撃が襲いかかる。


 姉須戸の雷撃を受けたアルベリッヒは一瞬で黒焦げになり、ドロップ品に変わっていった。


「ドロップ品ですが、実はアガシオンは弱点である香枦を狙わない方が価値があります。弱点である香枦を破壊せずに倒すと、香枦その物がドロップ品になり、美術品として売れます」


『もったいない』

『弱点狙えば一撃だがドロップ品の価値は下がるか』


 アガシオンのドロップについて解説すると、配信視聴者達のコメント欄ではどちらを狙うか議論しあう。


「アルベリッヒは魔石しか出ませんが、一般的なFランクダンジョンモンスターの魔石よりは一回り価値が高いです」


 姉須戸はドロップ品を回収しながら宝箱をあける。


「中身はポーション一つのみでしたね。治療系のポーションなら最低でも十万なのでわるくはないでしょう。さて、今回の探索はここまでとします。よろしければチャンネル登録と高評価お願いします」

『おつー』

『お疲れさまでした』

『次も楽しみにしています』


 姉須戸は締めの挨拶をするとダンジョンから帰還した。

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