第25話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアンダラとアンシーリーコート
「うーむ………どうも同じ場所をグルグル回ってる気がしますね」
アルネウラとアラニスとの戦闘を終えた後、姉須戸は三十分近く視聴者と雑談しながらFランクの森ダンジョンを探索している。
『そうか?』
『こっちからは違和感はないなあ』
『ドローンの飛行ログみてみたら?』
「ああ、それがありましたね………やはり同じ場所を回っていますね」
配信視聴者の一人からの提案を受けて、姉須戸がドローンの飛行ログを確認すると、ログ上では円を描くように回っていたことが確認できた。
『ダンジョンのトラップ?』
『それとも方向音痴?』
『ドローンがあればログで移動経路確認できるの便利だな』
『姉須戸先生、今回みたいに道を惑わせるモンスターとかいる?』
「ええ、もちろん多数いますよ。今回は魔法的なものですかね?
姉須戸は視聴者の質問に答えながら魔法を唱えて、杖で地面を叩く。
すると、杖で叩かれた場所から魔方陣が広がっていき、木々の一部が溶けて消えて道が現れる。
「あのモンスターが幻で惑わせていたようですね」
木々が溶けて出来た道には一匹の金色の体毛に青白く発光する紋様をもつ猫と、数匹の影でてきた犬がいた。
「猫の方はアンダラと言うヒトを惑わす魔法を使うモンスターですね。影の犬はアンシーリーコートと言う邪悪な妖精モンスターです。道に惑わせて疲弊したところを襲うつもりだったかと」
『Fランクで道を惑わす系はきついな』
『ぬこー!ぬこー! おねこさまー!!』
『おちけつ!』
『猫だけどモンスターやぞ』
姉須戸がどんなモンスターか説明すると、一部の配信視聴者が騒ぐ。
「ニャアアアア!!」
「オオオーン!!」
アンダラと呼ばれたモンスターは鳴き声を上げると、金色の瞳と青白い紋様が怪しく輝く。
それに同調するようにアンシーリーコートも吠えると、アンシーリーコートの回りにポツポツとエネルギー状の矢が生成されていく。
「させませんよ。
「っ!?」
姉須戸が魔法を唱えて杖で地面を叩くと、アンシーリーコートやアンダラが行使しようとしていた魔法が強制的に無効化され、モンスター達が動揺する。
「アンダラやアンシーリーコートは魔法を使って来ます。アンダラはあの金色の目が輝くと魔法行使の予兆で、幻惑系の魔法を使います。アンシーリーコートは初歩的な攻撃魔法ですね」
『事前知識なかったらやばかったかも』
『幻惑系とか、下手に肉体ダメージないからたち悪いんだよな』
『あのすいません、まとめて強制解除とかどんだけ魔力持ってるんです?』
『どゆこと?』
『当方魔法系探索者。今みたいに相手の魔法を強制解除するのって、相手より魔力がかなり上じゃないと無理。一般的な魔法系はどれか一体だけ無効化するか、発動を遅らせるかが厳戒』
『つまり、モンスターの群れの合計魔力より姉須戸先生の魔力が上?』
『そうなります』
姉須戸がモンスター達の魔法を纏めて強制解除したのを目撃した探索者アカウントの一人がドン引きしたようにコメントする。
「いえいえ、たいしたことないですよ。さて、アンダラは魔法で惑わせて自滅や他のモンスターに襲わせたりするだけで、自身の攻撃力はほぼ皆無です」
姉須戸はドローンカメラに向かって謙遜しながら解説を続ける。
アンダラは姉須戸が解説したように攻撃方法を持たないのか、アンシーリーコートに鳴き声で攻撃を促すと、アンシーリーコート達が姉須戸に襲いかかる。
「アンシーリーコートは魔法攻撃意外にも、本物の犬のように噛みつきなどしてきますが、
「ギャンッ!?」
姉須戸が魔法を唱えると、姉須戸の手から強い光が発生してアンシーリーコート達を飲み込み、霧散化していく。
「このように光でダメージを与えることが出来ます。軍用のフラッシュライトでもアンシーリーコートにダメージを与えることが出来ますよ」
『へー、持ち歩いて損はないな』
『元々暗いダンジョン照らす時に使ったりするから荷物にはならないな』
『そういう倒しかた知らなかった』
配信視聴者達からはアンシーリーコートに光でダメージを与えられることを知らなかったのか、驚きのコメントが書き込まれていく。
「残りはアンダラだけですね」
アンダラはアンシーリーコートが倒されると文字通り尻尾を巻いて逃げ出す。
「逃がしませんよ。
姉須戸は杖をライフルに見立てるように構えて魔法を唱える。
杖の切っ先から炎の矢が生成されると、逃げるアンダラの背に刺さり、そこから全身に火が広がって火達磨になって霧散化していく。
「さて、ドロップ品ですがアンシーリーコートは残念ながら魔石のみです。アンダラは瞳がドロップすることありますが、それは強制買い取りになります」
『瞳はしゃーない』
『なんで?』
『すまんが言えない。ただ、隠してたらかなり重い罪になるからな』
『配信強制だから誤魔化しようがないんだよな』
配信視聴者の中にはアンダラの瞳がなぜ強制買い取りなのかわからない人もおり、姉須戸は苦笑する。
アンダラの瞳には強烈な幻覚作用があり、モンスター由来のドラッグの原材料になるので大半の国では強制買い取りか廃棄する決まりになっていたのだった。
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